高川山(山梨県)

たかがわやま 標高976m。

 中央線の初狩駅の南東2kmにある高川山は、 標高のわりに展望のよい山として人気があるらしい。
 どうせなら評判の展望が得られる日に登りたいので、 晴れの天気予報の出ている2006年1月8日に出かけた。
 なぜこの時期に高川山に登ろうという気になったのか? それは、正月休みに運動らしいことやらなかったので、 少しは体を動かしたいという気持ちがあり、 比較的近くにあってまだ登ったことのない山の中で、 前から気になっていたのが高川山だったからである。
 早朝まだ真っ暗なうちに家を出て、 地下鉄、JR中央線と乗り継いで、初狩の駅に降り立ったのが7時半。 電車から出ると気温が都内と比べて一段と低く、 空気が張り詰めているのがわかる。 ホームから駅舎まで少し距離があり、 線路を横切らなければならない。 歩きながら甲府方面を見ると、 スイッチバックの面影が残っている。 私が初めて中央本線に乗って旅をしたのは、 1950年代末に、蓼科で行われた小学校の夏期林間学校に参加した時である。 当時は茅野までに何回かのスイッチバックがあり、 列車が行きつ戻りつしながら斜面を上り下りしていたものである。
 人気のない駅舎を出て、 標識に従って高川山を目指す。 中央本線の線路の下をくぐって少しずつ高度を上げると、 背後から朝日を浴びた滝子山が大きく迫ってくる。 やがて登山道に入り、傾斜が増すとやっと体が温まってくる。 雪に備えて軽アイゼンもザックに入れてきたのだが、 まったく雪がなく地面は乾燥しきっているのが意外だった。 男坂と女坂の分岐では女坂を選んだ。 女坂のほうが日陰の部分が多いだろうから、 適当な広葉樹があれば、 ゼフィルスの卵があるかもしれないと思ったからだ。 だがそんなうまい話はなく、 よさそうな木が見つからないまま、 再びルートは男坂と合流した。 頂上が近づいてくると、梢越しに富士山が顔を見せてくる。 こうなると一刻も早く頂上に着いて景色を見たくなり、 気が急いて歩く速度も上がる。 息を切らして大きな岩の点在する頂上に飛び出すと、 評判どおり富士山が南西方向にすっきりとした姿を見せていた。 北側には滝子山を初めとする山並みもくっきり青空に浮かび上がっている。 予想以上に素晴らしい展望である。 ほとんど雲がないので、東京の都心部まで見通せるのだが、 やはりここの主役は富士山に違いない。
 富士山が簡単に見られるというのは、 関西と比べたときの東日本に住む人間の特権だろう。
 結局一時間以上も頂上でうろうろして、景色を見ながら過ごした。 頂上に着いたときには、 先客が二人いただけだったのに、 いつの間にか十数人に増えていた。 この調子では、もう少しすれば頂上も人であふれそうな勢いである。 下りは田野倉駅へのルートを取った。 時間がたっぷりあるので、 途中寄り道して広葉樹の枝をチェックしながらのんびりと歩いた。 ゼフィルスの卵は見つからなかったが、 冬晴れの景色を十分に楽しめたので、 満足のいく一日だった。

 2006年に登ったあと、しばらくは高川山に登る機会がなく、二度目の登山は2018年11月となった。
 2018年11月下旬の3連休は前もって予定を立てないまま連休に入ってしまった。 家にいるだけはもったいないので、急きょ連休の最終日に富士山の見える山の中から高川山を選んで登ることにした。
 早朝7時半ごろの初狩の駅で下りた登山者は数名で、全員が高川山を目指している様子だった。 駅に着くなり、すぐに歩き始めた数組の登山者をしり目に、駅舎でサンドイッチを頬張ったあとゆっくり歩き始めた。 霜の降りた道路を登山口目指して徐々に高度を上げていくと、背後には朝日を浴びた滝子山が大きく見えている。 12年前と同じ景色だ。 登山道に入ってから、男坂と女坂の分岐が出てくる。 前回は女坂を歩いたので、今回は男坂を登ることにする。 こちらは木の根がむき出しになった急坂。 次第に体が温まってきて、ダウンのジャケットを脱いでしまった。 やがて女坂を合わせると樹間から富士山が顔を出し、頂上も近くなる。
 岩が積み重なった頂上は、2006年のときとほとんど変わっていないようだ。 真っ先に見るのはもちろん富士山。 ここから眺める富士山は、手前の左右に鹿留山と三ツ峠山を配しているので構図がいい。
 一通り周囲の写真を撮ったあと、岩場に腰を下ろして休憩。 風がないので、じっとしていても寒くない。
 ときどき登山者がやってくるが、頂上が混雑するほどではなかった。
 30分ほどしてから、戸野倉駅を目指して山頂を後にした。
 高川山は手軽に登れる山だが、やはり富士山の見える日に登りたいものだ。
 (この項、2018/12/6追記)

 歩行記録: 2006/1/8 登り1h10m(初狩駅−頂上) 下り1h55m(頂上−田野倉駅)
 写真は、KONICA MIOLTA DiMAGE A2およびPENTAX KP・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。

 人の気配のない早朝(7時半ごろ)の初狩駅。 冬の太陽は山の陰で、まだ日が射していない。
 同じ構図で2006年に撮影した写真と比べてみたが、ほとんど変わっていなかった。
 2018/11/25撮影

 高川山山頂からの眺め
 真ん中に雪をかぶった富士山、左端に鹿留山、右端に三ツ峠山。
 絵になる景色だ。
 2018/11/25撮影



 山頂から北西方向、中央本線の北側に連なる山並み。
左からお坊山、滝子山、雁ガ腹摺山。
 2006/1/8撮影

 田野倉駅に通じる登山道の傍らで、馬頭観音が登山者を見守っている。
 2006/1/8撮影

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