ぺてがりだけ 標高1736m。
ペテガリ岳は日高山脈中部に位置する奥深い山である。
はるかなる山とも言われているようだが、筆者にとってもその頂を踏むまでけっこうな時間を要した。
最初に計画したのは93年で、サッシビチャリ川を遡行して尾根に上がりペテガリ岳に至るという案であった。
会社の山仲間二人と一緒だった。
この時は静内からの道路が通行できず、神威岳に目標を変えなければならなかった。
その後も北海道の山を目指すたびにペテガリ岳を候補にしていたのだが、
いつもふもとへの道路が通行できず、やっと頂上を踏むことが出来たのは2001年の夏だった。
静内からの道路の復旧が遅れているため、神威山荘から山越えでペテガリ山荘に入り、
ここに二泊して西尾根から頂上を往復した。
同行者は古くからの山仲間のE君である。
これはそのときの記録である。
神威山荘に一泊した翌朝、新千歳空港で借りたレンタカーを山荘前に置き、
沢登りのスタイルで出発。
いったん道路を下流方向に戻り、シュオマナイ川の支流を遡る。
初めのうちは廃道状態になった林道がしばらく使える。
林道が途切れると沢も小さくなり沢登りが始まるが、難しい所はなく沢歩きと言ったほうが適切かもしれない。
迷いやすい分岐には赤テープが残っている。
尾根への最後の詰めは笹の急斜面で滑りやすく、笹をつかんで登る。
尾根に出たら笹薮を少し東に歩くとベッピリガイ沢への下降点である。
ここからの下りも最初だけ笹の急斜面でいやらしいが、
すぐに沢筋に降りられ、あとは平坦な沢を下る。
沢の水量が多くなるころ林道に出会う。
この日は天気が良く途中で写真を撮ったりしながらゆっくり歩いたので時間がかかったが、
普通に歩けば4時間程度の行程だろう。
ペテガリ山荘は想像以上にりっぱでしゃれた建物であった。
他に宿泊者はいないので、ぜいたくに荷物を広げてくつろぐことが出来た。
翌朝、目を覚ますと意外にも雨音がする。
天気予報で天気を確認すると全道的に雨とのこと。
ペテガリ岳西尾根はほとんどが樹林帯の中の尾根道なので、
雨でも行こうということでE君と意見が一致し、5:25出発。
最初は雨も止んでいてこのまま降られなければよいが思っていたら、
1時間ほどでとうとう雨粒が落ちだし、終日降り止むことがなかった。
1050mのピークを超えると上り下りの繰り返しとなる。
心配した笹も1293mのピークあたりまできれいに刈られていて歩きやすかった。
1301mのピークからいったん下って最後の登りにかかる所は笹が刈られてなく、
道に覆い被さった笹が少々うるさかった。
11時過ぎ、傘をさしたまま頂上着。
雨の中を途中休みながらゆっくり歩いたのでかなり時間がかかった。
頂上では当然景色はなく、記念写真を撮っただけで早々に引き上げた。
下りはうんざりするほど登り降りが多く感じられる。
特に1293mピークへの登りが長かった。
16時半ころ小屋に戻ったときはやれやれという気持ちだった。
さっそく濡れた衣類を広げて乾かす。
こういうときには広々した小屋のありがたみを感じる。
ほかに誰もいないので気がねする必要がないのがうれしい。
二泊目の朝、二人二泊分の合計2000円の協力金を小屋に置いてから、
曇り空の中を二日前と同じルートを神威山荘に向けて出発。
心配した沢の増水もほとんどなく、昼前にはレンタカーを置いていた神威山荘に戻った。
この日は浦河に宿を取り、三日分の汗を流してペテガリ岳登山を終えた。
山行記録: 2001/07/30 登り6h(ペテガリ山荘−頂上) 下り4h50m(頂上−ペテガリ山荘)
写真左は神威山荘に通じるシュオマナイ川沿いの道路で出会った鹿。(2001/7/28)
熊には出会わなかったが、鹿には神威山荘からペテガリ山荘に向かう途中や、
ペテガリ山荘前の広場でも出会った。
写真はいずれもOLYMPUS OM-4Ti BLACK・ZUIKO ZOOM 35-80mm F2.8で撮影。
神威山荘。(2001/2/28)
8年前、93年の神威岳登山の際に利用したときと同じ姿で建っていた。
この日はほかに2組が宿泊したが、いずれも神威岳を目指す本州からの登山者だった。
シュオマナイ川支流を遡り、ペテガリ山荘に向かう。(2001/7/29)
このあたりはまだ車道の面影が残っている。
さらに沢をつめ水流が細くなったころで、ウラキンシジミが2頭、葉の上に休んでいるのを見かけた。
写真も撮ったのだが、暗すぎてぶれてしまった。
ベッピリガイ沢川源流域で休んでいたとき、
オオチャバネセセリがやってきた。
筆者の手の汗が気に入ったのか、長い間左手に止まっていたので、
右手だけでカメラを取り出して撮影した。
ベッピリガイ沢川上流部をペテガリ山荘に向かって下る。
このルートは静内からの道路が通れないときだけに使われるので、
いずれ利用する人はなくなるのだろう。
ペテガリ山荘近くの川で釣りをした。(2001/7/29)
左の大きいほうが30cmちょうどのイワナ。右は20数cmのニジマス。
二人で数匹ずつ釣れたので、夕飯のおかずに加えた。
このときの釣りは、同行のE君にとって仕掛けの作り方を忘れるほど久しぶりだったようだ。
彼の仕掛け作りを手伝ってあげた後、自分の仕掛けを準備している最中だった。
「釣れた!」という声に顔を上げると、彼の竿に25cmもあるイワナがぶらさがっていた。
無心のときほどよく釣れるといわれるが、まさにそれを実感した瞬間だった。
雨の中のペテガリ岳頂上。(2001/7/30)
景色は見えず、写真を撮っただけで下山にとりかかった。
頂上の少し下で雨が小止みになったとき、ケイタイを取り出すと通話可能であることがわかったので、
東京にいる岳友Tさんに電話した。
けっこう山が深いと思っていたペテガリ岳でも電話が通じるとは便利になったものである。
ペテガリ岳からの長い下りの途中で、ダケカンバの美しい林があったので、雨の中カメラを取り出して撮った一枚。