大山(神奈川県)


おおやま 標高1252m。

 丹沢東部にある。 同じ丹沢山系には蛭ヶ岳(ひるがたけ、1673m)などもっと高いピークがあるが、 平野部から見たときに大山の三角形の端正な姿がよく目立つ。 東海道新幹線の車窓からもはっきり見ることができる。
 阿夫利神社が置かれ、古くから信仰の対象となっていたのは、大山が遠くからでも良く目立つからだろう。
 登山の対象としてみると、首都圏から日帰りで気軽に登れる山の範疇に入る。 筆者の場合、日帰りで短時間に登れる山となると、どうしても中央線沿線の山から 選ぶ傾向があり、あまり丹沢に出かける機会がない。 大山の頂上を踏んだのは5回である。 最初は1998年の年末、2回目は2009年の11月、 3回目は2010年7月、 そして、2013年9月、2014年9月だ。 ここでは、2009年の山行を中心に紹介する。
 2009年11月下旬の3連休のうちの1日(11月21日)を利用して大山に登ることにした。 ヤビツ峠から頂上を経由して下山するという楽なルートだ。
 早朝の暗いうちに家を出て、新宿から小田急の急行で秦野まで乗る。 秦野駅前のヤビツ峠行きのバス乗り場はすでに長蛇の列でびっくり。 余裕をみて一本前の電車で着いたのにもかかわらずである。 最近は、登山者で公共の乗り物が満員になるような光景は、 あまり見た記憶がない。 登山も一時期の低迷期を脱しつつあるのかもしれないが、 混むのは特定の山だけの話がもしれない。 記録を調べてみたら、1998年の年末に同じバスに乗ったときも、やはり満員で驚いたからである。
 終点のヤビツ峠でバスを降りた登山者は、めいめい歩く準備をしたのち、 多くは塔ノ岳方面に向かったようだった。
 私は大山までの登りだから、ゆっくりと支度をしてから歩き始めた。 快晴なので、写真を撮るためカメラを肩にかけて、途中でシャッターを切りながら 高度を上げていく。 今回持ってきたカメラは、CANON 5D Mark2である。 このカメラを使い始めたころは、重たく、でかくて、かさばるという思いが強かったが、 数回の山行で持ち歩くうち、気にならなくなってしまった。 慣れとは恐ろしいものだ。
 樹林帯の中の尾根道を歩くこと約1時間で頂上だった。 まだ時間が早いせいか人の数は多くない。 風もなく穏やかな日で、休んでいても寒さは感じない。
 しばらく景色を見ながら休んだ後、 阿夫利神社下社を目指して表参道を下山することにした。 ヤビツ峠への道を右に分ける頃から、登ってくる登山者の数が多くなり、すれ違うのにしばし足を 止めなければならないはめになった。 阿夫利神社からのメインルート(表参道)だから、人が多いのも当然かもしれないが、 この調子では、昼ごろには頂上は人で埋まったことだろう。
 阿夫利神社下社付近まで下りると、紅葉が見ごろで、 ケーブルカーで登ってきた観光客で混雑していた。 しばし紅葉に見とれながら、男坂を下りてみることにする。 1998年のときは女坂を歩いたからだ。 男坂ルートは傾斜がけっこう急で、あまり歩きやすくない階段が多い。 特に見どころがあるわけでもないから、歩く人も少ない様子。 男坂は登り向きのコースと言えそうである。 追分からは道の両側に商店がならんでにぎやかだ。 店員さんからさかんに声がかかる。 誘惑に負けてなにか食べたくなってしまい、一軒のお店に入った。 大山といえば豆腐料理だが、それほどお腹もすいていないので、 生ビールと蕎麦を注文。 一息ついたのち、バスで伊勢原に出て小田急線で帰宅した。

 2013年9月には、ウォーキング仲間3人と表参道女坂を登り、雷の峰尾根、見晴台経由で下山した。 猛暑の夏が過ぎ、山頂では冷たい風が吹きつけ、じっとしていると寒いくらいだった。 しかも山頂付近にはガスがかかって展望が得られない上、紅葉にはまだ早く、登山としての面白味はあまりなかった。
 でも、大山全体が信仰の山であることを改めて認識した山行だった。
 ただ、神社仏閣の様相が、大山詣でが盛んに行われた江戸時代とは変わってしまっているらしいのは残念である。 明治時代の神仏分離令によってであるが、それでも山岳信仰にかかわるいろんなものが残されている。
 例えば、大山ケーブルバス停から下には今も宿坊が並んでいるし、こま参道には参詣客相手のお土産物屋、 食堂が軒を連ねている。
 そして、男坂にしろ、女坂にしろ、登山道は石積みで階段状になっている。 これがなかなかに味わい深いのだ。 ある部分は人々の草鞋や靴ですり減り、ある部分は長年の風雨で苔が生え、自然の中にとけ込んでいる。 参詣人への配慮から整備された石段なのだろうが、これだけ大規模に作るには、大変な労力を要したに違いない。 そんなことを思いながら歩いた一日だった。
(この項、2013/9/26追記)

 2014年9月には、再度ウォーキング仲間と登る機会があった。 2013年とまったく同じ日(9月23日)だったが、今度は天気がよく、秋晴れのもと、展望を楽しみながら歩くことができた。 ルートは、毎回同じというのもつまらないので、表参道から登って下山路は日向薬師への道を選んだ。 ヒガンバナの花を期待してだ。
 祝日で穏やかな天気とあって、表参道や頂上は相変わらずの大勢の人で賑わい、 家族連れの姿も多い。
 頂上から見晴台まで下って、日向薬師への道に入ると、登山者の数はぐっと減る。 傾斜は比較的緩やかで歩きやすい登山道なのだが、けっこう長く、針葉樹林の中の単調な景色が敬遠されるのかもしれない。 日向薬師近くまで下りると、田の畔などあちこちにヒガンバナの朱色の花が咲いていて、 この景色を目当ての観光客の姿も多かった。
(この項、2014/10/1追記)

 東海道新幹線の車窓から見える大山
 相模平野を前にして、三角形のピークは大変目立つ。 昔から山岳信仰の対象になっていたのもうなづける。 (2007/4/15)

 伊勢原駅前北口にある阿夫利神社の鳥居
 鳥居の横には、10月初めに開催される「道灌まつり」の看板がある。 江戸城を築城した太田道灌は、1486年に伊勢原市で暗殺されたことを後で知った。
 表参道を利用する場合、ここから発着するバスを使う。 PENTAX K10D・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。(2013/9/23)

 ヤビツ峠から登ると、途中で西側が開けた場所がある。 富士山、三ノ塔(富士山の右手前)、塔ノ岳(中央右寄り)、丹沢山が見渡せる。 (2009/11/21)
 この日の撮影には、すべてCANON 5D Mark2・EF-24-105mm F4L IS USMを使用。

 頂上から南の眺め。中央に箱根山(駒ガ岳と神山)、右には金時山、 そして下には市街地が見えている。(2009/11/21)

 1998年の阿夫利神社下社。このときは年末で、茅の輪も用意されていた。 この写真だけ1998年12月30日にContax TVSで撮影。
 

 11月下旬の阿夫利神社下社付近は紅葉の盛りで、たくさんの人で賑わっていた。 周囲のお店も呼び込みに力が入る。(2009/11/21)
 

 蕎麦畑を背景に咲くヒガンバナ
 2014年9月のときは、日向薬師に下山した。 ヒガンバナの花の季節で大勢の観光客が散策していた。
 ここのヒガンバナは大規模に群生しているというより、 畑や田の畔などあちこちに散らばっているという感じで、田園風景の中のアクセントになっている。 (2014/9/23)

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