男鹿岳(福島県/栃木県)


おじかだけ 標高1777m。

 日本三百名山の中には、 登山道がないため、残雪期に登るのが一般的な山がいくつかある。 栃木県と福島県の境にある男鹿岳もその一つである。 塩那道路を利用して無雪期に登る人もいるようだが、 インターネットで見る限り、 福島県側の栗生沢から延びる大川林道を使って、 残雪期に登る人が多いようである。 筆者も2007年の春に、 大川峠を経由して頂上を往復した。
 2007年の春は、 冬に雪が少なかったので、 雪解けの早まるのではないかと心配だった。 5月連休まで待っていると尾根の上の雪がなくなるのではと思い、 4月中旬に登る計画が立てていながら実現できず、 結局5月の連休中に出かけることになった。
 前日の昼に車で家を出て、 東北自動車経由で大川林道のゲート(釜沢橋を渡った先))に着いたのが夕方。 ここで車中泊したのだが、夜中は寒さで何回か目を覚ました。 月齢12日くらいの月が夜通し煌々と輝き、 次の日の好天を約束していた。
 翌早朝起きて歩き始める前に、ゲートの中に車を入れるべきか迷った。 ゲートは閉じているのだが、 一部は開けようと思えば開く状態になっている。 しかし、大して奥まで車が走れるとも思わなかったので、 車はゲートの手前に置いて歩き始めた。 林道も途中までは雪がなく比較的状態がよかったので、 車で入ったほうが時間の節約になる。 延々と続く林道をひたすら歩く。 背中の荷物は日帰りの往復なので多くない。 ただ、肩からかけたカメラは、 前回の蓬莱山に引き続いてペンタックスK10D・DA12〜24mmF4である。 これが軽くはない。
 男鹿岳の姿が見える場所もあるが、概ね単調な林道である。 峠に近づくと林道を雪が被うようになるが、 大して歩きにくくはない。 林道は曲がりくねっているので、 朝日が当たる部分では強い日差しが照りつけるが、 山の陰に入るとひんやりする。 2時間5分で大川峠に着く。 ここでスパッツをつける。 尾根には踏み跡がついている。 最初は雪がなかったが、 すぐに雪が現れる。 雪がなくなってブッシュが出ていたら、 藪漕ぎをしなければならないところだったのでまずは一安心。 雪の上の歩行は快適である。 雪面は特に固くもないのでアイゼンはいらない。 潅木もうるさくない。 峠から1時間5分で1701mのピークに着く。 ここで先行していた中年男性3人組が休んでいた。 男鹿岳はもう目の前である。 西側には会津駒ガ岳が純白の雪をまとって大きな山体を横たえている。
 一休みした後、3人組の男性をあとに男鹿岳に向かう。 意外と頂上は近く、 1701mのピークから約20分で着いた。 針葉樹に囲まれた誰もいない静かな頂上。 東側が大きく開け、 那須岳が大きい。 もし視界がなければつまらない頂上だろう。 風もほとんどないので、 雪面に腰を下ろして一休みする。 30分ほど頂上にいた後、 下山することにした。 頂上直下で7,8人のパーティーとすれ違った。 この日会った登山者は、この団体を入れて2組だった。 雪面の下りは登りより快適である。 45分で大川峠に着いてしまった。 あとはまた長い林道歩きが待っていたが、 天気も穏やかであまり苦にならなかった。
 車を置いてきたゲートに戻ったのは、 お昼を少し回った頃である。 東京へ帰路は、往路と同じく会津田島経由で白川I.C.に出て、 東北自動車道を利用した。 会津鉄道の湯野上温泉駅あたりでは桜が満開だったので、 駅のそばに車を停めて休憩した。 ここの古風な駅舎と桜の組み合わせは、一見の価値がある。
 こうして満足すべき一日が終わった翌朝、腰痛が起きた。 東京の家で目を覚ますと腰の様子が変なのである。 起き上がると腰痛の症状が出て、午前中一杯は歩くのも一苦労だった。 実は男鹿岳を登ったときに前兆があったのである。 登山口で車内泊をしたときに、 体を十分に伸ばせず腰に無理な負担がかかっていたためか、 朝、林道を歩き始めた途端に腰に違和感を覚えたのである。 まあなんとかなるだろうとそのまま歩いているうちに違和感を感じなくなり、 いったんは腰のことを忘れていた。 ところが、登山中にも腰に疲労が溜まっていたようで、 長時間の林道歩きと雪上歩行を行ったことが、 翌日の腰痛につながったらしい。 これからは寝る姿勢も考えなければいけないようだ。

 歩行時間 2007/04/30 登り3h55m(ゲート−大川峠−頂上) 下り2h40m

 大川峠。 写真のこちら側が福島県で、正面が栃木県側である。 男鹿岳への登路は右側の尾根に付けられている。

 1701mのピークに立つと西側の展望が開け、 真っ白な雪をまとった会津駒ガ岳が視野に飛び込んでくる。(写真の右手) 写真中央には、遠く燧ガ岳が、左端には日光白根山が見えている。

 1701mのピークの正面からは、男鹿岳がすぐ目の前である。 その右側には、鹿又岳と日留賀岳が顔を出している。 中央の3人の男性は、先行して登っていた登山者。

 男鹿岳の頂上。 木の幹に山頂を示すプレートが付けられている。

 男鹿岳の頂上の標識のある場所からは、 東側に視界が開け、 那須岳が眼前に広がっている。

 帰路の林道歩きの途中で見えた男鹿岳。

 男鹿岳からの下山後、 東京に帰る途中に湯野上温泉駅に立ち寄ってみた。 ちょうど桜が満開で、かやぶき屋根の駅舎は観光客で賑わっていた。