男体山(栃木県)

  なんたいさん 標高2484m。

 2008年6月、梅雨の晴れ間の晴天を利用して日帰りで登れる山の中から、 男体山を選んで出かけた。 最初に男体山に登ったのは1981年10月だったので、 27年ぶりの再訪である。 今回は新緑の6月なので、前回の10月とは季節が異なり、 山の雰囲気もだいぶ違うはずという期待感を持っていた。
 始発の地下鉄に乗って浅草駅へ向う。 浅草駅から6:20発の快速電車に乗り込む。 この電車の乗客を見まわすと、 日光周辺の山やハイキングに行く人たちの専用電車のような雰囲気である。 天気は予報どおり晴れで、 電車の進行方向右側からは朝日が差し込んでくる。
 東武日光駅では接続する湯元温泉行きのバスに満員で乗れず、 続いてきた臨時バスに乗る。 バスの車窓から「いろは坂」を眺めると、 道路は案外すいている。 最近はガソリン価格がレギュラーで170円台にもなる高騰で、 車での外出を控える人が多くなっているのかもしれない。 東武日光までの電車のボックス席で一緒になったゴルフ場に向かう若い男性たちの会話を聞いても、 自家用車では相乗りしても割に合わないという話をしていた。 交通手段をめぐる環境は大きく変わろうとしているのかもしれない。
 登山口の二荒山神社に到着してバスを降りたのは意外にも私一人。 山の方を見ると、うっそうと茂った森の背後に、 薄雲をまとった男体山が頭を出している。 登拝料500円を二荒山神社の受付所で支払って登山開始。 登拝門の鳥居をくぐり、 奥の赤い門の中へ進むと大木で薄暗くなった森に吸い込まれる。 森の中といえば静寂な雰囲気を思い浮かべるが、 この日は頭上から降り注ぐセミの声でたいそうにぎやかだった。 階段を登ると一合目である。 27年前の登山の詳細はほとんど憶えていないのだが、 小屋掛けの遥拝所のある一合目の様子を見て 当時の記憶がよみがえってきた。
 ブナなどの大木に囲まれたゆるい傾斜地を登る。 鹿から保護するためか木の幹にはネットがかぶせられている。 登るにつれ傾斜が増し、 やがて三合目で道路に飛び出す。 背後には空より青い中禅寺湖の湖面が垣間見える。 ここから20分ほどの車道歩きで四合目。 セミの声もやっと小さくなる。 ここの鳥居をくぐって、また登山道になる。 このころになると薄雲も取れ、 真っ青な空が広がっている。 樹林帯の中を進み、五合目あたりから岩や石の斜面になる。 もう頂上から降りてくる人たちも多くなってくる。 初夏の梅雨時の登山では、 汗が噴き出てくるのが普通だが、 湿度が低く風が強いせいかあまり暑さを感じない。
 樹林帯の中の九合目を過ぎ、 傾斜もゆるくなると、一気に視界が開け、 火山性の赤茶けた砂礫地となる。 眼下に中禅寺湖と戦場ガ原が横たわり、 日光白根山が周りの山から頭一つ抜きんでている。 歩きにくい砂礫斜面をひと踏ん張り登ると頂上。 冷たい風が吹きすさんでいる。 あたりの景色の写真を一通り取り終えたのち、 風当たりの弱い斜面に腰をおろして小休止する。 1981年のときは頂上から三本松へと下ったのだが、 今はこのルートは歩行禁止になっているようだ。 今回は予定通り往路を戻ることにし、 二荒山神社に向けて景色を見ながらゆっくりと下った。
 神社からはバスで東武日光駅に出た。 17時前に出発する区間快速電車に腰を下ろし山の方を見やると、 雲が広がり頂上を隠していた。 今日は山に登っている間は雲が取れていたわけで、 幸運な一日だった。
 この日「岩手・宮城内陸地震」が起き、 大きな被害が出たことを知ったのは帰りの電車の中のことだった。 地震が起きた時間は、東武日光駅でバスを待っているときだったようだが、 揺れにはまったく気がつかなかった。

 歩行記録  2008/06/14 登り 2h45m  下り 2h10m

 登拝門をくぐると、 登山開始である。
 2008年の写真7枚は、 すべてPENTAX K10D・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。

 八合目付近から背後を振り返ると、 真っ青な湖面が広がっていた。 中央右寄り奥には皇海山が顔を出している。

 頂上に近づくと、 視界は一気に広がる。 登山道は赤茶けた火山性の砂礫の上に付けられている。

 頂上の二荒山大神と日光白根山。

 頂上からの日光白根山とはるか下方に戦場ガ原。

 北側には太郎山、大真名子山、女蜂山(左から)が見える。

 四合目と五合目の間ではシロヤシオの花が目につき、 初夏の風情だ。

 写真は、1981年10月11日に男体山から撮影した日光白根山と戦場ガ原。
 このときは、探検部の後輩S君と一緒に登り、 頂上はかなり寒かったことを憶えている。
 下りは、写真下方に見える三本松目指して歩いたが、このルートはその後、廃道になったようだ。

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