三頭山(東京都)

みとうさん 標高1531m。

 奥多摩湖の南に位置する。 山全体として見ると東京都と山梨県の境にあるが、 最高地点は東京都側にあるようだ。
 私が最初にこの山を登ったのは1998年の10月下旬の秋晴れの日だった。 仲ノ平バス停から西原峠(さいばらとうげ)に上がり、槙寄山(まきよせやま)、三頭山を通って 奥多摩湖に下った。 槙寄山からは雪を頂いた富士山がよく見えた。 三頭山の頂上ではすでに多くの人がベンチなどに座って休んでいたが、 大半の人は都民の森から往復するようであった。
 頂上から北に向かって、長い尾根道(ヌカザス尾根)を下ると奥多摩湖に出、 ドラム缶橋を渡ってバス停に出た。

 2回目に登ったのが2005年5月5日で、この時は都民の森バス停から登り、 西原峠経由で数馬に下った。

 3回目は2010年4月24日で、 都民の森バス停から鞘口(さいぐち)峠に上がり、尾根伝いに頂上に達した後、 槇寄山、西原峠経由で数馬に下った。
 この日は、晴れの予報だったのだが、登り始めるに従い雲が多くなった。
 3つあるピークのうち、最初の東峰に着くと、 ここにはなぜか木でできた展望台がある。 このころになると、空のほとんどが雲に覆われてしまったが、 形に特徴のある大岳山と御前山方面の山は見えていた。
 次の中央峰は最も高いのだが、標識があるだけなのでそのまま通過し、 西峰に達すると数人の登山者が休んでいた。 雲取山、大岳山など北側の山々は見えていたが、 期待していた富士山は見えなかったのは残念。 木のベンチに腰かけて休んでいるうちに、雪まで舞いだした。 まさか4月下旬に雪に会うとは思っていなかったのでびっくり。 その後、槇寄山に着くころには雪も止んだが、すっきりとは晴れなかった。 西原峠からの下りは土の斜面の道が深く掘れているため、 ひどくぬかるんでいて、靴がどろんこになってしまった。
 数馬の集落では、色とりどりの花が咲いていた。 東京の市街地ではとっくに終わった桜の花もまだ見られたのが印象に残っている。
 都民の森バス停からのコースは、登りが短時間で済む半面、 登山としてはちょっと物足りなく感じる。 武蔵五日市駅からバスに揺られる時間が長い(約1時間かかる)だけに、 そう感じるのかもしれない。

 2016年5月、6年ぶりに4回目となる登山の機会があった。 当日は天気に恵まれ、ウォーキング仲間二人と一緒に新緑の中の山歩きを楽しむことができた。 仲間と一緒に歩くのは、単独行とは違った楽しみがあっていいものだ。
 武蔵五日市駅8時10分発の都民の森行きバスは、増発の2台を加えて3台で出発。 三頭山の人気ぶりがうかがえる。
 約1時間バスに揺られて都民の森に到着。 ここは、もう標高が約1000mだから、かなりの高さだ。 気のせいか空気も清々しい感じ。 しかも湿度が低いので快適だ。
 この日のコースは、ブナの路を歩いてムシカリ峠経由で三頭山頂上に向かい、下りはヌカザス尾根をたどるというもの。
 鮮やかな新緑に包まれた沢沿いの道をたどり、途中で滝を見たりしてムシカリ峠で尾根に出る。 ここで一息入れたら三頭山の頂上は近い。 登山口から1時間半ほどの登りで着いた三頭山西峰は、すでにかなりの数の登山者が、思い思いの場所に陣取って休んでいた。 西峰とはいっても、ここが最も頂上らしいピークだから、休憩する人も多い。
 富士山を探すが見えない。 すでに初夏の陽気のせいで空気が若干霞んでいるためのようだ。
 記念写真を撮ったのち、中央峰と東峰に向かう。 いったん少し下って御堂峠から登り返すと中央峰。 ここが一番高いようで、1531mの表示がある。 その少し先に東峰があり、展望台がある。 大岳山方面の景色が得られる。
 中央峰と東峰はほとんどくっついていて、明確な鞍部がないので、それぞれが独立したピークと言うにはかなり苦しい。 三頭山は3つの峰からなるので、その名が付いたとされるが、果たして現在名前がついている東峰、中央峰、西峰がそれにあたるのか疑問だ。 これは、以前に歩いたときにも感じたことで、今回改めて気になった点だ。
 それはともかく、視界が木々の若葉の色に占領されている中で、ミツバツツジの鮮やかな紫色の花がアクセントになっている。 黄緑と紫は反対色の関係にあるので、より目立つのかもしれない。 また見る楽しみだけでなく、セミの声も賑やかだ。 他のセミに先駆けて成虫になるエゾハルゼミだ。あらゆる方角から聞こえてくるが姿は見えなかった。
 あとは、奥多摩湖に通じるヌカザス尾根の長い下り坂が待っていた。 足元が滑りやすい個所もあるのだが、問題なく通過することができた。 もし雨上がりだったら、少々やっかいだったかもしれない。 ただ、尾根道にもかかわらず、展望はないので、少し退屈な道ではある。
 尾根を下りきると、奥多摩周遊道路に出る。 しばらく道路を歩いてから、麦山浮橋(通称、ドラム缶橋)を渡れば、峰谷橋バス停までは遠くない。 頂上から3時間半ほどの行程だった。

歩行記録 1998/10/25 登り2h25m(仲ノ平−西原峠−三頭山) 下り2h10m(三頭山−小河内神社前)

 槙寄山からの富士山。 右奥に三ツ峠が見える。(1998/10/25)

 槙寄山頂上の木々の間から見える三頭山。(1998/10/25)

 2010年4月24日のときは、富士山は見えなかったが、頂上(西峰)から北側の山並みは見えていた。 雲取山も顔を出していた。
 休憩後、奥多摩湖側に少し下った北斜面のブナ林でフジミドリシジミの卵を探したが、 雪が降り出したので短時間で切り上げた。 そんなに簡単に卵が見つかるはずもないけれど。

 右の写真は2016年5月21日に、頂上から下山中にヌカザス尾根で撮影。 鮮やかな新緑の中を、奥多摩湖に向かって長い下りが続く。 場所によっては、けっこう急な斜面もあり、気が抜けない。

 ヌカザス尾根を下りきると、奥多摩湖に出会う。 湖に架かる麦山の浮橋(通称ドラム缶橋)を渡ると、対岸に小河内神社バス停があるが、 この日は、隣の峰谷橋バス停まで歩いて、奥多摩駅行のバスに乗った。
 湖に架かる浮橋の存在自体が珍しいから、ヌカザス尾根コースの見どころの一つだ。 (2016/5/21撮影)

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