関八州見晴台(埼玉県)

  かんはっしゅうみはらしだい 標高770m。

 関八州見晴台は、奥武蔵にあるハイカーに人気のある低山。 一番の魅力はその眺望にある。 関八州とは関東一円の八国、すなわち安房、上野、下野、相模、武蔵、上総、下総、常陸の諸国を意味し、それらを見渡せるとされるからだ。
 頂上直下まで自動車道路が延びているので、車で来る人も多い山である。
 以下に記す記録は、2018年の正月明けの4日に出かけたときのものである。
 この日を選んだのは、冬晴れで山頂からの展望を期待したからである。 見晴台という名前がついているのに、景色が見られなくては登る意味がないからだ。
 頂上へはいろんなコースが通じているが、今回は西武秩父線西吾野駅からのルートを登ることにした。
 西吾野駅で電車から下りたのは十数人で、ほとんどがハイキング客と思われる人たちだ。 駅舎は山の陰になっているので朝日が差さず、じっとしていると冷気が体にしみ込んでくる。
 9時過ぎに、簡単に歩く準備をしたのち、登山口の間野の集落を目指して出発。 道路を北上し、しばらく歩くと間野で、橋を渡って民家の軒をかすめるように登ると、植林地の中に通じる山道となる。 ヒノキなどの針葉樹林の中の道なので、面白味はない。 途中で萩ノ平茶屋跡を通過し、やがて石地蔵に着く。 ここで右手からパノラマコースを合わせる。 さらに歩き続けると、道が枝分かれするようになり、見晴台への道標も出てくるが、今回はまず高山不動に寄ってお参りしてから頂上を目指すことにする。
 高山不動の石段の下に着くと、ちょっとした広場になって居て、大イチョウが目に入る。 樹齢800年とかで、じつにどっしりとして存在感があるが、すっかり葉を落としていた。 新緑や黄葉のころであれば見応えがあるに違いない。
 広場から急な石段を登ると、不動堂が現れる。 江戸時代後期の再建というお堂は、長い年月にわたり風雨にさらされたためか華やかさはないが、重厚感のある建物だ。 自動車や舗装道路のなかった時代に、このような山奥に大規模なお堂を建てた昔の人の熱意と技術に感心してしまう。
 お堂を後にして、約30分ほど登ると、関八州見晴台の頂上だった。 なだらかで広々とした頂上には、小さなお堂(高山不動奥の院)と東屋、それにいくつかのベンチがある。 とにかく展望が素晴らしい。 快晴の日に登った甲斐があったというもの。 一部は木が邪魔しているが、関東平野が一望できる。 双眼鏡で見ると、相模湾には江の島らしき島影も見える。 島の中央部が凹んでいて、塔(キャンドル灯台)が確認できるので、間違いないだろう。 帰宅後に調べたら、直線距離にして76kmくらいある。 その右手には丹沢の山並みが横たわり、富士山が頭を出している。 そして武甲山などの秩父の山々が続く。 日光方面の山は雲がかかり見えないが、冬型の気圧配置では仕方ない。 30分ほど景色を眺めながら休憩したのち、頂上を後にした。
 下山ルートは虚空蔵山から南に延びる尾根につけられた道をたどることにした。 いったん不動堂に戻ってから車道に出て、志田・大窪方面の標識のあるところから山道に入る。 この入り口が簡単に見つかるのか心配だったが、車道を少し下ったらすぐに標識がみつかりほっとした。 少し歩くと分岐があり、志田と書かれた道をたどる。 さらに下ると近道の表示が出てきたので、その近道を下りることにする。 ところどころ落ち葉が道を覆い、わかりづらい個所があったが、危険な場所はなく、下り続けると人家が現れ道路に出た。 すぐにまた山道に入り、大久保の集落に出る。 ここにも車道が通じているが、今回はこの道路を歩かず、もう一つ山を越えて、直接「休暇村奥武蔵」付近に出るつもりなので、その山道を探す。 一応標識があるのだが、道の入り口がわかりにくい。 よく見まわしたら、民家の車庫の横に隠れるように道が通じていた。 この道をただって大久保峠を越えて下ると、やっと「休暇村奥武蔵」のりっぱな施設が眼下に見えてくる。 あとは国道299号を西吾野駅に向かって20分ほど歩いて、この日の山歩きを終えた。
 駅で一息ついてから電車に乗ろうと思っていたのに、ちょうど13:32発の上り電車がホームに入ってきたので、休む暇もなくあわただしく電車に乗りこんでしまった。
 今回歩いたルートは、半日ほどの歩行時間で特に危ない個所もない。 ただ下山に使用した道は、分岐でわかりにくい個所があり、注意が必要だ。 利用者も多くないようで、高山不動からの下山時に出会った登山者は単独行の男性一人だけだった。
 また、あじさい館という古い名称(2013年から休暇村奥武蔵)の標識が数か所残っているのが気になった。 施設名が変わってから5年近く経つのだから、早く改善してもらいたいものだ。

 登りに歩いたコースの途中にある石地蔵。 ここでパノラマコースと合流する。 周りはヒノキなどの針葉樹が主体の森林である。

 高山不動(常楽院)の不動堂(写真右)
 関東三大不動の一つとされる。(異説あり)
 山奥にこのように大規模なお堂があることに驚く。 写真の向かって右側がお堂の正面。 もっと正面近くからお堂全体が見えるように撮りたかったが、スペースがなく撮れなかった。

 頂上の様子(写真左)
 小さなお堂は、高山不動の奥の院

 頂上から眺めた秩父の山並み(写真左)
 中央に武甲山、右奥には両神山が見える。 武甲山は秩父の盟主と言われるだけあって立派な山容だ。

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