武甲山(埼玉県)

ぶこうさん 標高1304m。

 武甲山には、1993年と2009年の二度登っている。 ここで、紹介するのは、2009年3月のときの記録である。
 週末を利用して、登山などの遊びに出かけるときは、 土曜日を選ぶことが多い。 予期せぬことが起きても、翌日が休みであれば気分的に余裕があるからである。
 武甲山に登った日は3月の日曜だったが、 終日晴れという天気予報に後押しされて出かけた。 池袋6時50分発の特急「ちちぶ65号」に乗る。 横瀬駅の手前、トンネルを抜けたとたん、突然左手に車窓からはみ出さんばかりに 武甲山が現れる。 劇的な登場である。 やはり武甲山は、秩父のシンボルである。
 西武秩父駅に8時13分着。 生川から登るので、登山口までタクシーを利用する。 もし、横瀬の駅から徒歩だと2時間以上かかるらしいので、 とても歩く気にはなれない。 車中で、年配の運転手さんがいろいろ解説してくれる。 たとえば、現在の一の鳥居にある2対の狛犬のうち1対は、 今よりもっと下流の、現在は工場になっている場所にあったことなどだ。 地方のタクシーの運転手さんは、 地元出身者が多いので、その土地のいろんな話が聞けて参考になることが多い。

 一の鳥居で車を降りる。 さっそく鳥居の前の狛犬を見てみたら、 確かに4体あり、形や大きさから2対であることがわかる。
 駐車場にはすでに10数台の車がある。 さっそく準備をして、歩き始めたのが8時45分。 川沿いの道をしばらく登ると、登山届を入れる箱が置かれている場所に出る。 あとは、おおむね杉林の中の単調な道をたどることになる。 雪が残っていることも想定して、 軽アイゼンも持ってきたが、雪のかけらも見られない。 ただ朝の気温が低かったので、日の当たらない地面は凍っているところが多かった。 頂上近くまで来ると、階段コースと一般コースに分かれる。 左側の階段コースのほうが、変化に富んでいそうなので、 そちらに進む。 名前のとおり急な階段が続いていて、息が切れるが、 その分一気に高度も稼げる。 階段が終わって傾斜が緩くなると、 長者屋敷の頭に通じる道に出会う。 ここまで来れば、頂上の神社まであと一息だ。 見覚えのある御嶽神社の裏手に回り込むと展望所がある。 遠くの浅間山が真っ白でよく目立つ。
 武甲山の現在の最高点は1304mとなっているが、 かってはもう40mほど高かったという。 その当時は今とはずいぶんと眺めが違っていたのだろう。

 頂上で30分弱休んだのち、 下山にかかる。 先ほどの分岐まで戻り、 長者屋敷ノ頭への道に入る。 こちらのコースは、カラマツ林の中を通るので明るい。 生川からのルートの薄暗い陰気な雰囲気とはずいぶん違う。 途中、展望が開けている場所では、 八ヶ岳や雲取山などが見える。 長者屋敷からジグザグの道を下り切ると、 橋立川沿いの長者屋敷登山口に出る。 ここからは平坦な道になり、浦山口駅目指して歩く。 ほとんど車が通らないので、 のんびり歩ける。 橋立堂にお参りして、13時前には駅に着いた。 西武秩父駅で乗り換え、池袋経由で家に着いたのが16時半だった。

 武甲山は石灰岩の山で、 盛んに採掘が行われていることは誰でも知っている。 全山が石灰岩でできているかというと、 そうではなく、山の北側にのみ石灰岩が分布しているらしい。 だから、将来、山自体がまったくなくなるという心配はないようだ。 調べた限りでは、武甲山の石灰の埋蔵量は可採量で約4億トン。 採掘は大正時代から本格的になり、 すでに2億トン以上が採掘されたというから、 可採量の半分以上は掘り出されたことになる。
 武甲山の姿を北側から眺めるとき、 痛々しく感じてしまう。 だが、身を削って日本の経済成長を支えてきたと言えるのだろう。

 歩行記録: 2009/03/15 登り1h33m 下り2h15m

 西武秩父駅からタクシーで生川の登山口に向かう途中、 運転手さんに車を止めてもらって写した1枚。
 ここに載せた写真は、すべてPENTAX K10D・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。

 登山口の生川にある一の鳥居。 4体つまり2対の狛犬が出迎えてくれる。 西武秩父駅から利用した年配のタクシーの運転手さんの話では、 このうち2体は、かってはもっと下の、 今は石灰石関係の工場となっている場所にあったものを移転したそうである。 たしかに手前の2体は表情・格好が似ていて、 奥の1対とは明らかに違っている。

 頂上の御嶽神社。 16年前の写真と比べると、鳥居や建物の形は同じだが、 狛犬の位置が少し違うようだ。
 鳥居の右側に置かれた石には、五十二丁目と刻まれている。

 頂上の御嶽神社裏の展望所。 あたりの様子は、1993年に撮った写真と比べてもほとんど様子は変わらない。 しかし、直下の石灰岩の採掘はさらに進んだため、 遮るものが少なくなり、秩父の市街地の眺めはさらによくなったようだ。
 中央の真っ白な山は浅間山、 左の木立に隠れているのが両神山。 この写真には写っていないが、さらに右手には、 筑波山が霞んで見えていた。

 長者屋敷に向かってカラマツ林を下ると、 ところどころで展望が得られる。 中央の真っ白な山並みは八ヶ岳である。

 左に大きく両神山が、右奥には真っ白な浅間山が見える。

 長者屋敷近くまで来ると、雲取山方面の景色が見える。

 橋立堂。秩父34箇所札所の28番。 浦山口駅に向かう途中にあるので、 立ち寄ってみた。 切り立った岸壁を背にしている。 ここには鍾乳洞もある。

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