東慶寺(鎌倉市) 2012年 6月
 東慶寺(とうけいじ)は、臨済宗円覚寺派のお寺で、円覚寺のすぐそばにある。 山号は松岡山(しょうこうざん)で、正式には東慶総持禅寺である。
 1285年、覚山尼(かくさんに)によって開創された歴史のあるお寺だが、規模はそう大きくない。
 でも鎌倉にある寺院の中でも、独特の歴史を持っている。 明治時代になるまで尼寺であり、縁切寺でもあったのだ。 歴代住持の中で、豊臣秀頼の娘であった天秀尼(てんしゅうに)の存在も見逃せない。
 そして、多くの著名文化人の墓があることで知られているし、禅文化を世界に広めた 鈴木大拙ゆかりの寺でもある。
 2010年に拝観したときは、晴れて天気がよかったので、初夏の日差しがあふれていたが、 2011年の6月のときは、小雨の降る典型的な梅雨時の天気だった。
 明治時代までは尼寺であったためか、境内もなんとなく女性的な柔らかな空気に 包まれている。
 6月はイワガラミが咲く季節で、本堂裏が特別公開になる。 この白い清楚な花は、東慶寺のイメージに合っている。
 もう一つ6月といえば、イワタバコの花がある。 境内奥の墓地に続く道に沿った崖が紫色の花で埋まる。 これだけの見事な群落はそう多くないだろう。
 東慶寺の仏像にも触れておこう。 本尊は釈迦如来像だが、ほかに土紋という珍しい技法が使われている聖観音菩薩立像がよく知られていて、 境内にある松ヶ岡宝蔵に置かれている。 もう一つ見落とせない像に、水月観音菩薩半跏像がある。 これは、ほかではあまり見かけない種類の観音像(三十三観音の一つで、体を傾けくつろいだ姿で水面に映った月を見ている)で、 水月堂に安置されている。 この水月観音のふだんの拝観は予約制なので、ふらりと鎌倉に出かける筆者にはなかなか拝観の機会がなかった。 やっと2012年になって、前日に予約を入れて拝観することができた。 当日指定された時間に行くと拝観者は筆者ひとりだけ。 水月観音は意外に小ぶりの像だった。 しかし世評に名高い像だけあって、予約してでも拝観する価値は十分ある。 案内の女性の説明を聞きながらお顔を拝していると、雑念が消えていくような気分になれる。
 このときは、松ヶ岡宝蔵で特別展「禅僧の描いた達磨展」が行われていて、これも興味深い ものだった。
 写真は、PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMおよびRICOH GX200で撮影。


 石段を上がると、こじんまりとした山門がある。
 東慶寺は、江戸時代には縁切寺(駆け込み寺)として知られていたので、 夫と縁を切りたい多くの女性がこの門をくぐったのだろう。
2010/6/4撮影

 6月の東慶寺といえば、イワタバコの花である。
2012/6/13撮影

 イワタバコの花
 群生するイワタバコが一斉に花をつけていた。
 イワタバコは鎌倉では珍しくないが、東慶寺のイワタバコの群落はその規模の点からも見応えがある。
2012/6/13撮影

 東慶寺で有名なもう一つの花はイワガラミ。
 本堂裏手の崖に咲くイワガラミは本堂正面からは見えない。 このため、この花の時期だけ本堂裏側が特別公開される。
 ここのイワカガミは1本の幹から崖一杯に広がっている。
 写真の上部に写っているのは本堂の軒裏。
2012/6/13撮影
 イワガラミ(左)
 白く花弁のように見えるのは実はがく片。
2012/6/13撮影
 本堂前では、イワガラミを見物する人が行列を作っている。(写真上)
 水月堂は本堂にむかって左手にある。
2011/6/13撮影

 2013年4月に、友人数人と水月観音を拝観に訪れた。
 この日はあいにく冬に逆戻りしたような寒さと雨で、境内に人気がなく、セッコクの花が 雨に濡れていた。
2013/4/21撮影

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