天念寺(川中不動)(大分県豊後高田市) 2014年 3月
 天念寺(てんねんじ)は、大分県豊後高田市にある天台宗の寺院で、山号は長岩屋山。
 富貴寺など他の多くの国東半島の寺院と同様に、仁聞によって8世紀に開創されたと伝えられている。
 寺の前を流れる長岩屋川には、巨岩に彫られた不動三尊像があり、川中不動の名で知られる。 国東半島を代表する磨崖仏の一つである。
 筆者の目当てもこの磨崖仏であった。 訪れたのが3月下旬で、桜の花が見ごろを迎えていたが、天気があまり芳しくなかった。 そのため、日曜日にも関わらず、観光客は時折やってくるだけで、あたりは閑散としていた。
 とにかく、川の中に突き出た岩に磨崖仏が彫られているというのが大変珍しい。 実物を目にすると、けっこう大きい。 高さは3m以上あるらしい。 不動明王像は、当然怖い顔なのだが、どこかユーモラスでおおらかな印象を受けるのは、 国東半島のほかの石仏や磨崖仏に共通している。
 磨崖仏が彫られたきっかけは、たびたび起きた川の氾濫のため、水害除けだったという。 それにしても、どうやって何人がかりで何日かかって彫ったのだろう。
 そんなことを考えながら、近くにある「鬼会の里(おにえのさと)」という歴史資料館に移動。 ここには、阿弥陀如来立像(重文)が安置されている。 かって天念寺から売却されて、不在だったことのある像である。 像高198cmで量感があるが、各地を移動してきた歴史を物語るように、彩色は落ち、いたるところに傷がある。 目を閉じているように見え、気品のある穏やかな表情である。
 ビデオ室では、国の重要文化財に指定されている修正鬼会(しゅじょうおにえ)の様子を見ることができる。 ビデオでありながら迫力満点だ。 これだけの行事を、人口が多いとは思えない地域集落で維持していくのは大変だろう、と心配してしまう。
 一通り館内の見学を終えたら、ちょうどお昼時だったので、館内の食堂で手打ち蕎麦を食べた。 従業員も、客がほとんど来ないので、手持無沙汰の様子で、しばし世間話の相手をしてくれた。
 写真は、CANON 5D Mark U・EF-24-105mm F4L IS USMで撮影。


 長岩屋川に面した天念寺
 左手にお寺のお堂があり、右手の鳥居の奥にある身濯(みすすぎ)神社の建物とつながっている。 国東半島では、今でも神と仏は近い間柄のようだ。
 近くには、「鬼会の里(おにえのさと)」という歴史資料館があり、 そこに天念寺から売却されたのち、戻ってきた阿弥陀如来立像(重文)が収蔵されている。

2014/3/30撮影

 川中不動尊
 天念寺の前を流れる長岩屋川に大きな岩があり、そこに3mを超す不動明王像と二童子像が彫られている。 室町時代に、川の水害除けとして作られたそうだ。
 水面を挟んで、像の正面に礼拝場所が用意されている。
2014/3/30撮影

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