杉本寺(すぎもとでら)は、天台宗の寺院で、山号は大蔵山。
鎌倉最古の寺と言われる。
鎌倉幕府の開かれるはるか以前、平安時代の8世紀に、行基によって創建されたと言い伝えられている。
本尊は、三体の十一面観音像である。
鎌倉時代におきた火災の際、これら本尊三体自ら大杉の下に避難したと吾妻鏡にあり、
杉本観音の名前の由来になっているそうである。
寺の名前は音読みが普通で、訓読みの例は少ない。
もちろん、清水寺や石山寺のような例はあるが圧倒的に少数派である。
最初に杉本寺のことを知った時、本当に読みが「すぎもとでら」でよいのか、確認したほどである。
それに鎌倉で天台宗の寺院というと、ほかに宝戒寺が知られているくらいなので、
どんな寺なのか興味を持って杉本寺に向かった。
拝観したのは、10月の末の秋晴れの日。
金沢街道から始まる石段を登って茅葺屋根の山門(仁王門)をくぐる。
この上の本堂正面に続く石段はすり減っていて通行禁止になっているため、迂回路が設けられている。
現在の本堂は、17世紀の建立になる茅葺屋根の建物である。
鎌倉でも茅葺屋根の堂宇は珍しいし、本堂を囲む草木、むき出しで少々荒れた地面などと相まって、
鎌倉最古の寺と言われるに相応しい雰囲気が境内に漂っている。
「十一面杉本観音」と書かれたたくさんの幟が本堂を取り囲んでいるという光景も、他の鎌倉の寺ではあまり見かけない。
本堂に入って靴を脱ぎ、あたりを見回すと、すすけて黒ずんだ柱や梁が目に入る。
本尊は秘仏だが、お前立ちの新十一面観音像などの諸仏やいろいろな物が所せましと並んで、長い歴史を肌で感じられる空間だ。
堂内から晴天の屋外に出ると、日差しがまぶしかった。
杉本寺は鎌倉最古の寺と言われるが、本堂内も含めて境内の様子からは、親しみやすく庶民的という印象を受けた。
禅宗ではないせいかもしれない。
写真は、PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMおよびRICOH GX200で撮影。