正法寺(しょうぼうじ、岩手県奥州市) 2010年 7月
 曹洞宗のお寺で、正式には大梅拈華山圓通正法寺(だいばいねんげざんえんづうしょうぼうじ) だが、「奥の正法寺」の名で親しまれているらしい。
 東北地方初の曹洞宗寺院として14世紀に開山され、 17世紀初めまで、曹洞宗第三の本寺として東北地方における曹洞宗布教の拠点であったという歴史を持つ。
 筆者が訪れたのは2010年7月の終わりの日で、近くにある黒石寺を訪問後、車で移動して正法寺を拝観した。 土曜日だったが、人気がなくあたりは静まり返っていた。
 お寺の前に立つと、惣門の向こうに見える大きな本堂の茅葺屋根に目が行く。 小さな橋を渡ると惣門が待っている。 この門の前後に、大ぶりの自然石の蛇紋岩を敷き詰めた石段があり、 段数は多くないが、一段一段がけっこう高い。 境内に入る前に姿勢を正す意味があるのかもしれない。
 門をくぐった先の石段を登ると、巨大な茅葺屋根を持つ本堂が眼前に広がる。 まるで山の急斜面が迫ってくるようだ。 この本堂は、火災の多かった正法寺にあって、1799年の最後の火災のあとに再建されたものという。 すでに200年以上の年月を刻んでいることになる。 堂々とした建物だが、破風の装飾を除けば飾り気がなく、一見民家を大きくしたようにも見える。
 しばし本堂や境内を眺めたあと、庫裡に入ってみる。 中では数人の人が補修作業だろうか働いていた。 庫裡から廊下を渡って本堂に入ると、畳敷きの広い部屋がいくつかあり、合わせて166畳もあるという。 相当に広いので、ゆったりとしている。
 本尊は如意輪観世音菩薩で秘仏となっているが、釈迦涅槃図は大きな色彩鮮やかな絵で 見応えがある。
 主な建物とは廊下でつながっているので、外にでなくてもまわることができる。 本堂、座禅堂、開山堂と一通り見終わって気になったのは、人気の少なさだ。 これだけ大きな伽藍を擁しながら、少人数で維持していくのは、さぞ大変なことだろうと想像される。

 今回(2010年7月)の拝観は、盛岡での用事の帰りに急に決めたことなので、 ほとんど予備知識なしであった。 カメラも持ち合わせていなかったので、盛岡駅で買った「写ルンです」で撮影した。
 お寺の石段は蛇紋岩で作られているが、蛇紋岩と言えば、早池峰山や至仏山のように、 特異な植物が分布することで知られている。 正法寺周辺の山の植生はとうなのだろうか。


 惣門
 1799年の火災でも焼け残り、正法寺の建物の中でも最古という。
 奥に大きな本堂の見ながら近付くと小さな橋を渡る。 その先では、蛇紋岩の石段の上に、とち葺き屋根の惣門が待ち構えている。 門をくぐるとさらに石段があり、これを登ると初めて巨大な本堂が目の前に迫ってくる。
2010/7/31撮影

 日本一と言われる茅葺屋根の本堂(法堂)。
 1799年の火災後、再建され、平成になって大改修が終わったばかりである。
 屋根の大きさもさることながら、勾配が49度もあるので、急峻な山の斜面のように見える。 ほとんど飾り気のない建物だ。
2010/7/31撮影

 正面から見える本堂は禅寺らしくすっきりとした簡素な構えだが、 破風には細かな装飾が施されている。
2010/7/31撮影

 本堂正面から見た庫裡。
 庫裡も茅葺屋根の大きな建物で、1799年の火災後、再建されたもの。 本堂とは廊下でつながっている。
2010/7/31撮影

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