正福寺(東京都東村山市) 2022年 11月
 正福寺(しょうふくじ)は東村山市にある臨済宗建長寺派の寺院で、山号は金剛山。
 正福寺は、禅宗様建築の代表例とされる地蔵堂の存在で知られている。 都内にある唯一の国宝指定の木造建造物なのである。
 寺伝によれば、鎌倉時代に北条時宗が鷹狩の時に病に臥せた際、夢枕に立った地蔵菩薩のお告げに従って飲んだ丸薬で病から回復したことから、地蔵堂を建立したのが正福寺の始まりとされているそうだ。 ただし、昭和8〜9年の改修時に発見された墨書銘によって、現在の地蔵堂は室町時代の1407年に建立されたことが判明している。
 筆者が訪れたのは、2022年の11月3日。 この日は「地蔵まつり」で、年に3回ある地蔵堂内部公開日にあたっていたからである。 毎年の行事なのだが、2022年はコロナ禍のあおりで3年ぶりの開催とのことだった。 お寺は東村山駅から歩いて10分ほどの距離である。 天気がよく、久しぶりの地蔵まつり開催とあって、周辺には屋台が数多く出ていて、大勢の人でにぎわっていた。 さっそく人の流れに従って山門から境内に入る。 山門はかっては茅葺、現在は銅板葺の四脚門で、それほど大きくはないけれど、江戸時代中期の1701年に建立された風格のある門だ。 門からは正面にお目当ての小ぶりな地蔵堂が目に入る。 建物に比してこけら葺きの大きな上層屋根が大変目立つ。 しかも反りが大きいからなおさらだ。 その下には、裳階の屋根があり、こちらは銅板葺だ。 佇まいは、よく言われるように鎌倉の円覚寺舎利殿と瓜二つと言っていい。
 近づいて見上げると、屋根裏の構造物がよく見える。 上層屋根は扇垂木が、裳階は並行垂木が採用されているのがわかる。 床が土間になっている内部に入ると、正面に金色に輝く地蔵菩薩立像がまず目に入り、両側には奉納されたおびただしい数の小地蔵像が並べられているのが見える。 別名が千体地蔵堂と呼ばれる由縁である。 上を見ると、ご本尊の上は鏡天井になっていて、屋根の内部構造が見渡せる。
 正福寺地蔵堂は、寺院建築に興味のある人にとっては見逃せない禅宗様の貴重な遺構例なのだ。 類似の円覚寺舎利殿が通常は非公開で、限られた公開日でも外観だけが公開されていることを考えれば、正福寺地蔵堂はその公開日に訪れて内部も見学したいものである。


 木造建造物として都内で唯一国宝に指定されている地蔵堂
 屋根の強い反りや花頭窓などを持つ禅宗様建築の代表例として貴重な存在とされている。 同じく国宝指定の鎌倉の円覚寺舎利殿とそっくり。
 堂内には奉納されたたくさんの小地蔵菩薩像があることから、千体地蔵堂とも呼ばれているそうだ。
2022/11/3撮影

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