円通三匝堂(さざえ堂)(福島県会津若松市) 2018年 11月
 通称の「さざえ堂」または「会津さざえ堂」で知られる会津若松市にある仏堂。 正式名称は、「円通三匝堂」(えんつうさんそうどう)である。
 内部に螺旋構造の回廊を持ち、さざえ堂と名のつく仏堂は、江戸時代後期に東日本でいくつか建てられた特異な構造の建物である。 そのうち、円通三匝堂の見学以前に私が実物を見たことがあるのは、弘前市の栄螺堂(さざえどう)と東京の總持寺(西新井大師)三匝堂で、外観の見学だけだった。 弘前市の栄螺堂は規模が小さく、總持寺の三匝堂は明治時代の再建であるから、江戸時代の1796年に創建され、現在も当時の姿を保っている円通三匝堂には前から興味を持っていた。 2018年の秋になって会津若松市を訪れる機会があり、やっと円通三匝堂の内部を見ることだできたので、ここで取り上げる。
 見学したのは平日だったので混雑はしていなかったが、紅葉シーズンに入っていたためか、三々五々見学者が訪れていた。 場所が白虎隊自刃の地として有名観光地となっている飯盛山の中腹にあるため、ついでに立ち寄るという人も多そうである。
 もともとこの地には正宗寺(しょうそうじ)という神仏習合の寺院があり、円通三匝堂はその境内に建てられていた仏堂なのである。 それが明治維新後の廃仏毀釈で正宗寺は廃寺となり、残された円通三匝堂は個人所有となって現在に至っている。
 入場料400円を納めて堂の内部に入ると、まず正面に会津さざえ堂の建立者で正宗寺の住職だった郁堂の像が出迎えてくれる。
 右回りの板張りのスロープを1周半登ると最上階に達し、そのまま進むと下り坂になり、今度は左回りに1周半してお堂の後ろ側に出る。 つまり合計3周回ったことになる。 三匝堂の名前はそこから付けられている。 江戸時代には、堂内に西国三十三観音像が安置されていて、堂内を巡ることで、西国三十三所の礼所巡りと同じご利益が得られるとして人気があったそうだ。 今は観音像が他所に移されて堂内になく、本来の意味での仏堂ではなくなっているのが惜しまれる。
 それにしても、二重螺旋構造という不思議な仏堂を立てた郁堂はどのようにしてこれを着想し、具体化したのか興味がわく。 レオナルド・ダ・ヴィンチのアイディアが日本にもたらされ、それが基になっているとの説もあるようだ。 なんらかの情報があったにしろ、実際に建てるときには木材の調達や大工さんに指示するための図面か縮小模型が必要と思われる。 単純な多層階建築ならともかく、複雑な二重螺旋構造をどのように設計して指示したのだろうか。
 とにかく不思議な構造の建築で、国の重要文化財に指定されているのもうなづけるし、古い寺院建築に興味のある人にとっては必見のものと言える。

 写真は、CANON G7XMk2で撮影。


 さざえ堂の全景
 六角形のお堂は、高さが16.5mもあるから、塔ともいえる。 高層建築といえば五重塔や三重塔くらいしかなかった時代に、このさざえ堂の外観を仰ぎ見た人は畏敬の念を抱いたのではないだろうか。 そして、内部に入ってその構造に感心したと思われる。
 左手に見える向拝が出入り口。
 お堂本体にはここから中に進み、右回りの螺旋状スロープに導かれ最上部に達する。 最上部からはそのまま下りになり、今度は左回りにらせん状スロープを下ると入口の後ろ側に出るという構造である。 つまり、一方通行のため。反対方向に歩く人とすれ違うことがないという仕掛けなのだ。
 外見からも内部が螺旋構造になっていることがわかる。 さざえ堂の名は、その構造と外観がサザエを連想させつことからつけられたもの。
2018/11/2撮影

 内部の通路は階段ではなく、螺旋状のスロープになっていて、滑り止めに桟が固定されている。
 さざえ堂がかっての正宗寺としての仏堂であった江戸時代までは、内部に西国三十三観音像が配置されていたそうだ。 お堂を登って下りることで三十三観音巡りができるというわけである
2018/11/2撮影

 螺旋状のスロープを登り切って見上げた天井。 そのまま進むと下りのスロープに導かれる仕組み。
 一面に張られた千社札は美的とは言い難い。
2018/11/2撮影

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