宝珠山立石寺(山形県山形市) 2011年 7月
 山形市にある天台宗の寺で、山号は宝珠山。 通称は山寺である。
 芭蕉の俳句「閑さや 岩にしみ入 蝉の声」でも知られている。
 一度は拝観したいと思っていながら、なかなか腰を上げられなかった。
 そんな折の2011年の6月と7月に、JR東日本から1日1万円で乗り放題の「JR東日本パス」が発売された。 東日本大震災復興支援の一環である。 これを利用しない手はないので、7月に日帰りで山形の立石寺と慈恩寺を回ることにした。
 東京駅から早朝の山形新幹線つばさに乗りこみ、山形で仙石線に乗り換えて、 立石寺の最寄り駅である山寺駅に降り立った。
 ここは、山形盆地から奥羽山地にさしかかるあたりになる。 駅のプラットホームから、立石寺のある宝珠山が正面に見えている。 山全体は緑に覆われているのだが、所々に凝灰岩の奇岩が露出していて、いくつかの堂宇が確認できる。 なるほど、慈覚大師円仁(あるいは、彼の弟子であったとしても)が、 寺を作るのにふさわしいと考えたわけがなんとなく理解できる地形である。
 ホームから駅舎に向かう通路では、福餅「円仁さん」の宣伝の看板がいきなり目についた。 円仁は第3代天台座主であり、立石寺や瑞巌寺を開山したと伝えられている。 地元では、菓子の名前に使われるほど親しまれているということがわかる。
 和風の風情のある駅舎を出て、立谷川にかかる宝珠橋を渡ると、 土産物屋などの商店が軒を並べている。 さすがに有名な観光地だけのことはある。
 道路から階段を登って、まず根本中堂を拝観する。 近くには、芭蕉の句碑や像などがある。 続いて、山門で拝観料を払って、いよいよ本格的な石段の登りが始まる。 周りは鬱蒼とした森である。 途中に、姥堂、せみ塚、弥陀洞などの見どころが点在している。
 ところで、夏なのに蝉の声が聞こえてこない。 芭蕉が立石寺を訪れたのは何日だったのか気になり、あとで調べたら、新暦の7月13日だと いうことがわかった。 ということは、筆者とは1日違いだから、セミが鳴いていてもよいはずだ。 2011年は全国的にセミの発生時期が遅れていて、東京でセミが鳴き出したのは、7月下旬になってからだったから、 山形でもセミの発生が遅かったのかもしれない。
 仁王門まで登ると、視界が開けてきて、周りの景色も見えてくる。 さらに続く石段を登りきると一番上に奥之院がある。
 奥之院からは下りながら、三重小塔や五大堂を見学する。 やはり、圧巻は五大堂からの眺めだ。 幾重にも重なる山々と谷沿いに広がる集落の織りなす眺めは絶景である。 しばし、景色に見とれたあと、下山して駅に戻った。
 この日は参拝客も少なく、大勢の団体客と鉢合わせしなかったので、落ち着いて歩くことができ 幸運だった。
 立石寺はお寺ではあるけれど、芭蕉の俳句、広い山の中に点在する伽藍、五大堂からの眺めなど 観光的な要素にも事欠かないので、大勢の観光客を引きつけるわけである。
 写真は、CANON 5D Mark U・EF-24-105mm F4L IS USMで撮影。


 山寺駅から立石寺に向かって歩くと、立谷川にかかる宝珠橋を渡る。 正面に、宝珠山が迫っていて、山を覆う深い緑の中に奇岩が所々露出している。 この山内に立石寺の堂宇が散在している。
 ふもとの道路に沿って、参拝客目当ての土産物屋、蕎麦屋などの建物が 並んでいる。
 橋の左手に見えているのが対面石で、ここで慈覚大師円仁と地元の支配者の磐司磐三郎が対面したと 言われている。
2011/7/14撮影

 根本中堂
 建築物にブナ材が使用されている珍しい例として知られる。 もともとブナ材は、その特性から建築構造材としてはほとんど利用されてこなかった。 にもかかわらず、どうしてここで使われることになったのか興味のあるところだ。
 もっとも、創建から600年以上が経ち、残っているブナ材は全体の6割程度らしい。
 このあたりは、まだ山のふもとである。
 近くには、松尾芭蕉の句碑や像がある。
2011/7/14撮影

 山門をくぐると、深い緑の中につけられた石段を登って、 斜面に点在する伽藍を巡ることになる。
 耳を澄ませてみたが、この日、セミの声は聞こえなかった。
 2011年は全国的にセミの発生が遅れ、大震災の影響かと話題になった。 実際には、春先の低温が影響したらしい。
2011/7/14撮影

 仁王門を見上げる。
 ここまででもかなりの高度を稼いだはずだが、奥の院まではまだ先がある。 ただ、仁王門から上は、視界が開けて明るい空間が広がるので、受ける印象がずいぶんと異なる。
2011/7/14撮影

 三重小塔
 1519年に建立された高さ2.4mほどの小さな三重塔が、 不思議な形をした岩の内部に安置されている。
2011/7/14撮影

 納経堂(中央の小さな堂)と開山堂(右)
 開山堂には、立石寺を開いたと言われる慈覚大師の木造の像が安置されており、 納経堂の下には、その慈覚大師が眠る入定窟がある。
 開山堂の横手から階段を登ると、五大堂に出る。
2011/7/14撮影

 五大堂からの眺め。
 芭蕉もここから同じ景色を見たのだろうか。
 五大堂とは、五大明王を祀って天下泰平を祈る道場とのこと。 崖にせり出すように作られている。
2011/7/14撮影

 木の切り口に置かれた小さな仏像。
 大きな木には霊が宿るという自然観とかかわっているのだろう。
2011/7/14撮影

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