蓮華寺(京都市) 2016年 12月
 蓮華寺(れんげじ)は、天台宗の寺院で、山号は帰名山(きみょうざん)である。
 もともとは、七条塩小路(現在の京都駅付近)にあった時宗の寺院が応仁の乱を経て荒廃していたのを、 江戸時代初期に加賀藩家老の今枝近義が、祖父の菩提を弔うため現在地に再建し、天台宗の寺院へと変わった。
 場所は左京区で、最寄り駅の叡山電鉄三宅八幡駅から八瀬比叡山口駅に向かって高野川沿いに約500mほどのところにある。 つまり京都盆地の北東の端にあたる。
 私が訪れたのは12月初めの日で、午前中に延暦寺を拝観した後のこと。 昼過ぎにケーブルカーで八瀬に下りてきて、天気がいいので歩いて蓮華寺に向かった。
 このあたりは住宅地のすぐ裏手まで山が迫ってきていて、商店などもほとんどない。 車と時折電車の音が聞こえるだけの静かな環境だが、目立つものがないともいえる。
 国道に面して蓮華寺の駐車場があり、そこを北側に少し入った先に、蓮華寺の小さな山門がある。 山門脇には、「小学生、中学生の修学旅行 お断り致します」の貼紙がある。
 山門から中に入ると、左手に石仏群が集められた一画がある。 帰宅後に調べてみたら、京都市電河原町線の工事の際に掘り出された石仏らしい。
 趣のある石畳の道に導かれてさらに進むと、書院の建物へと行きつく。
 拝観者は書院の中に通され、東向きの部屋から蓮華寺で一番の見どころである池泉鑑賞式庭園を眺めることになる。 池の周りの斜面を大小の木が覆っている庭は、池のそばに建つ本堂も含めて規模は大きくない。 池の中や周りには、舟石や鶴石などいろいろな形の石が配され、作庭者はそれぞれに意味を持たせているようだ。 その意図を知っていてもいなくても人々を引きつけるのは、日本人にとって親しみやすい眺望だからなのだろう。
 このときも、蓮華寺を訪れた観光客は、部屋の中の思い思いの場所に腰を下ろして庭に見入っていた。 わざわざ蓮華寺という小さなお寺に足を延ばす観光客に、時間に追われてせわしく歩きまわるような人はいないようで、ゆったりとした時間が流れていた。
 紅葉のピークは過ぎていて庭に華やかさはなかったけれども、心が落ち着くひとときであった。
 庭を眺めていて頭をよぎったのは、自然な佇まいで不自然さを感じさせないように庭園を維持管理するのは、けっこう大変なのだろうなということ。

 写真は、PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。


 書院から眺めた池泉鑑賞式庭園と本堂。
 観光客のお目当てはこの景色だが、すでに紅葉は終盤で、彩度が失われていた。 それでも入れ代わり立ち代わり人々が入ってきて、書院に座り込んで庭園を眺めていた。
 右手に見える本堂はこじんまりとした建物で、正面(この写真の右手裏側)には、笠のとんがった蓮華寺型灯篭が置かれている。
2016/12/3撮影

 一つ屋根の下に集められている石仏群。
 1920年代に開業した京都市電河原町線の工事の際に掘り出されたものという。
2016/12/3撮影

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