鞍馬寺(京都市) 2014年 12月
 鞍馬寺(くらまでら)は、京都市左京区にある鞍馬弘教の総本山であるが、1949年までは天台宗の寺院であった。
 寺のはじまりは、8世紀に鑑真の高弟鑑禎(がんてい)によるとされている。
 筆者も含めて一般には、鞍馬と聞けば天狗や義経を思い浮かべるのではないだろうか。 そして仏像ファンであれば、左手を額の上にかざした姿の毘沙門天立像(国宝)を連想するかもしれない。
 筆者が訪れたのは12月の初めで、鞍馬駅前広場はうっすらと雪化粧していた。 冬はすぐそこまで来ている気配だった。 今回は、鞍馬寺の奥の院を通って、貴船神社に抜けるつもりだったので、 山道に雪が積もっていたら厄介だなと思ったが、雪があったのは、駅前広場の周辺だけだった。
 その駅前広場には、巨大な天狗面が置かれていて目を引く。 東京のJR高尾駅のホームにも大きな天狗面があることを思い出してしまった。 高尾山も鞍馬寺と同じく天狗伝説で知られ、地元が天狗の威光にあやかろうとすると、自然に同じような発想になるようだ。
 駅前の土産物屋が軒を連ねる道路を少し歩けば、仁王門が現れる。 周りは、鬱蒼とした森に覆われた山である。
 拝観料を支払って中に進むともう深山の趣き。 足の弱い人向けにケーブルカーもあるが、私は山の空気を吸いながら歩いた。 参道を登り始めていくらも行かないうちに、由岐(ゆき)神社が現れる。 由岐神社は鞍馬寺の鎮守社であり、もとは宮中にあったが、10世紀に鞍馬に遷宮してきたのである。 拝殿の中に作られた通路を通り抜けるという、変わった構造になっている。 こういう形式を割拝殿というとのこと。 そして、拝殿を出ると目の前にまっすぐ天を指して立つ杉がある。 願掛け杉と呼ばれる大杉である。 ちょうど注連縄の付け替え作業を行っている最中だった。 しばらくその作業の様子を見学したのち、参道に戻って本堂を目指した。
 仁王門から約30分で、本殿金堂(本堂)に到着。 ここは南向きの開けた場所で、重畳たる山並みが見渡せる。
 本堂から少し離れて、霊宝殿がある。 ここの3階に、国宝の毘沙門天立像(平安時代作)が安置されていて、間近に拝観できる。 左手を額にかざして遠くを見ているような姿勢は、京の北方の守護神としての毘沙門天を表しているとされる。 ずんぐりとした体躯で、威厳というより親しみのある表情をしている。
 なお、1階は自然科学展示室になっていて、ギフチョウなどの蝶の標本もあって興味深かった。
 霊宝殿を出たら、いよいよ奥の院に通じる山道となる。 季節が12月ということもあるのかもしれないが、奥の院への道を歩く人は少ないようで、時折出会う程度だった。 森閑とした山中の木の根の露出した道は、義経の時代を彷彿とさせるに十分だ。 牛若丸が鞍馬天狗と出会ったとされる僧正ガ谷不動堂や義経堂、奥の院魔王殿などが山中に点在している。 霊宝殿から小一時間歩いて西門に下り着いたころには、すっかり山の霊気に心身が浸されているような気分になっていた。
 西門を出れば、貴船神社はすぐ近くだった。
 写真は、CANON 5D Mark U・EF-24-105mm F4L IS USMで撮影。


 仁王門
 現在の門は1911年に再建されたもの。
 周りには木々が生い茂り、いかにも山寺の玄関口らしい。
2014/12/07撮影

 仁王門をくぐり、山中の参道を本殿金堂(本堂)目指して登ると、途中に由岐神社(ゆきじんじゃ)がある。 由岐神社は、鞍馬寺の鎮守社である。
 写真は、手前に神社の鳥居の額と拝殿越しに見た願掛け杉。
 ちょうど願掛け杉の注連縄の付け替え作業が行われていた。
 拝殿は、参道が中を通っている割拝殿と呼ばれる形式で、豊臣秀頼によって再建されている。
2014/12/07撮影

 1971年に再建された本殿金堂(本堂)
 コンクリート造りで、趣きに欠ける。
 本殿金堂前の広場には展望台があり、重畳たる山並みを見渡せる。
 参拝客の多くはここまでで、少し先の霊宝殿まで足を延ばす人は少ない様子だった。 その先にある大杉権現や不動堂まで歩く人はさらに少ない。
 でも、鞍馬寺の全体の姿を知ろうと思ったら、ぜひとも歩くべきだ。
2014/12/07撮影
 木の根道
 本殿金堂をあとにして、鬱蒼とした山の中の道をたどると、このような木の根がむき出しの場所がある。(写真左)
 大杉権現社の手水舎にはつららが下がっていた。 気温は低そうだったが、歩いているときは、それほど寒さを感じなかった。
2014/12/07撮影

 僧正ガ谷不動堂
 牛若丸が天狗と会ったといわれる伝説の場所。 森閑として昼でも薄暗い環境は、当時とあまり変わっていないのかもしれない。
 不動堂の前には、義経堂がある。
2014/12/07撮影

 貴船神社奥宮
 鞍馬寺の山中から下り、西門を出れば、そこは貴船神社である。
 今の貴船神社本殿がある場所からさらに700mほど奥に向かって歩くと奥宮がある。 かっては、ここに本宮があった。
 本宮から少し離れているため、多くの観光客はここまで来ないようだ。
2014/12/07撮影

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