高山寺(京都市) 2013年 6月
 高山寺(こうざんじ、こうさんじ)は、京都市右京区にある真言宗系の単立寺院、山号を 栂尾山(とがのをさん)と称する。
 高山寺の前身は8世紀の創建と伝えられるが、鎌倉時代の明恵上人により中興開山し、 高山寺の名前になっている。 当時は、多くの諸堂が建ちならんでいたようだが、戦乱や火災で焼失し、鎌倉時代の建物で現在まで 残っているのは、石水院だけだ。 また、国宝の「鳥獣人物戯画」を所有していることで知られる。
 筆者が訪れたのは6月中旬。
 表参道は、国道162号(周山街道)から斜めに上がる石段で始まる。 石段の横に「高山寺表参道」の表示板があるだけで、山門などの建造物は見当たらない。 午前中の早い時間だったからか、観光客の姿もない。 もっとも、ほとんどの来訪者は、少し先にある駐車場そばからの裏参道を利用するようだが。
 鬱蒼と生い茂る木立の中に吸い込まれるように付けられた表参道をたどると、道が分かれる。 一方は金堂へ、もう一方は石水院へと続く。 まずは国宝の石水院に向かう。
 石水院は、石垣と築地塀に囲まれているので、独立した屋敷のようだ。 もともと。明恵上人が後鳥羽院より学問所として下賜され、金堂の近くにあったものが、 明治時代に現在地に移築されている。 中に入ると、戸が開けはなたれているため、外の緑濃い自然と一体となった涼やかな雰囲気が味わえる。 少し興ざめなのは、下の方にある国道162号を走る車のエンジン音が、わりと大きく聞こえてくることだ。 せっかくの深山の趣きに雑音が入ってしまう。
 石水院の次は、金堂に向かう。 高山寺の境内は、傾斜地の杉林の中に広がっている。 仏足石などを見ながら金堂への道をたどると、深い森の中の登山道を歩いているような感覚を覚える。
 金堂を立ち去ろうとしたとき、修学旅行生の一団が石段をにぎやかに登ってきた。 紅葉の時期ならともかく、6月の高山寺で修学旅行生に会うとは少々驚いた。
 境内を一通り回って気がついたのは、山門がないことだ。 ある程度の規模の寺院であれば、門があるのが普通だと思うが、この高山寺にはない。 あとで調べたら、往時には門があり、再建されなかったようだ。

 筆者が高山寺を拝観した2年後の2015年に、東京国立博物館で、 「鳥獣戯画 京都高山寺の至宝」と題して特別展が開かれ、筆者も見に行った。
 この特別展では、鳥獣戯画のみならず、明恵上人や高山寺に伝わる宝物を総合的に取り上げていたので、 鳥獣戯画に関するいろいろなことを知ることができた。 といっても、甲乙丙丁巻のうち、甲巻は長蛇の行列で見るのをあきらめたので、中途半端な鑑賞なのだが。
 特別展に出かけたのは5月末の平日。 会場に入るまでに屋外で約70分並ばなければならなかった。 インターネットで混雑状況を承知していたので、1時間程度の行列は覚悟の上だったし、 曇り空で厳しい暑さではなかったのは幸いだった。 それでも、やっと館内に入って、甲巻を除く各巻と高山寺の宝物を見終わったころには、 さらに150分(つまり2時間半!)並んで甲巻をみる気力というか忍耐力が残っていなかった。
 もともと、この鳥獣戯画展を見に行くべきかどうか迷っていた時に、NHKテレビの「日曜美術館」を見たことで、 行くことに決め、チケットを事前購入したという経緯がある。 それは、1982年に手塚治虫が鳥獣戯画の魅力を解説した番組の再放送だったが、 手塚治虫が鳥獣戯画をよく研究していることがわかるし、解説も興味深いものだった。 この番組を見て、実物を見たくなったのは筆者だけではないだろう。
 筆者の事前の予想を超える混雑で、甲巻の鑑賞を逃したのは残念だったが、全体としてはいい展示だったと思う。
 (2015/06 追記)
 写真は、PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。

 緑濃い表参道
 この石燈籠があるあたりに、かっては大門があったとされる。
2013/6/15撮影 国道162号に面した表参道の入口。

 石水院の門
 この石水院の建物の中に、国宝「鳥獣人物戯画」の複製が展示されている。
2013/6/15撮影

 金堂
 江戸時代の建物で、17世紀に仁和寺から移築された。
2013/6/15撮影

 茶園
 境内の中心部にあり、傍らに「日本最古之茶園」の石柱が建っている。
 栄西が宋から持ち帰った茶種を明恵に贈り、 これを明恵が栂尾に植えて、宇治その他に広まったという。
2013/6/15撮影

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