刀田山鶴林寺(加古川市) 2010年 7月

 鶴林寺(かくりんじ)は加古川市にある天台宗のお寺である。 山号は刀田山(とたさん)である。
 6世紀に、聖徳太子が、高句麗の僧・恵便のために建立したのが始まりと言われる。 その後、12世紀に鳥羽天皇によって勅願所に定められ、鶴林寺と名付けられた古い歴史を持つ。
 筆者が訪れたのは7月の日差しの強い日で、参詣者はほとんどなく、ひっそりとしていた。 仁王門への道は、なぜだか少し斜めにつけられている。 仁王門には、だいぶ古びた仁王像がある。 門から中に入ると、正面に本堂、左手に三重塔がまず目に入る。 右手には、鐘楼、太子堂などがあり、境内には古い建物がたくさんある。 これだけの古い建物が残っているのは、火災が少なかったということでもあろう。 それぞれの建物を見るだけでも見応えがある。
 ただ、この日は夏の太陽が照りつけ、日影が欲しいほどの陽気だったので、 外をゆっくり歩くのには適していなかった。
 奥に進むと宝物殿があり、有名な銅造聖観音立像が置かれている。 別名「あいたた観音」とも呼ばれている。 この聖観音像は、世評にたがわず見応えがある。 大して大きくはない(像高83cm)が、顔の表情も穏やかで安らぎが与えてくれる。 首から下の流れるような絶妙な曲線が柔らかい。 少し腰をひねっており、後にそり気味に見える。
 海外での評価も高く、欧米の展示会にも何回か出されているという。
 しばし、聖観音像を眺めて宝物殿を出て、この建物を見ると、 コンクリート作りで境内の他の木造の建物とは違和感を感じる。 大事な宝物を守るためには、堅牢な入れ物が必要なことはわかるが、 もう少し他の建物と調和の取れたデザインにできなかったものだろうか。
 境内から出て、加古川駅行きのバスを待っている間に周囲を見回すと、 あたりはどこでも見かける住宅街である。 鶴林寺境内の時間が止まったような世界との違いが大きい。 聖徳太子が来られた当時はどのような風景が広がっていたのだろうか。
 写真は、RICOH GX200で撮影。


 国宝に指定されている本堂。 14世紀末に建てられた均整のとれた美しい建物だ。
2010/7/08撮影

 本堂から外を見たところ。 紋のデザインは、JALのマークを連想させる。
2010/7/08撮影

 太子堂
 平安時代の1112年に建立された兵庫県でもっとも古い建物という。 檜皮葺の屋根が特徴。
2010/7/08撮影

 観音堂から見た鐘楼
 室町時代の1407年に建立された。 奥は本堂で、左に少し見えているは太子堂。
2010/7/08撮影

 三重塔
 室町時代に建てられ、江戸時代に大修理され、1980年に 解体復元修理されたという。
2010/7/08撮影

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