醫王山一畑寺(島根県出雲市) 2010年 6月

 一畑薬師(いちばたやくし)の名前で知られているが、正式には、醫王山一畑寺といい、 臨済宗妙心寺派、および一畑薬師教団の総本山である。
 お寺の縁起によれば、創建は1300年前に遡り、当初は天台宗であったが、 1325年に臨済宗になり現在に至っている。

 2010年6月、島根県に用事があって旅行した際、足を延ばして一畑薬師を訪れた。
 宿をとった米子からまず松江に出て、松江しんじ湖温泉駅から一畑電車に乗った。 もともとこの一畑電車は、大正時代に一畑薬師への参詣客を運ぶために作られた歴史を持っているので、 一畑薬師とは密接な関係があるわけだ。 今では、山陰地方ただ一つの私鉄でもある。
 線路は宍道湖の北岸を走るので、湖の眺めを期待していたのだが、あいにくの雨で視界が悪く、 なにも見えない。 30分弱で一畑口駅に到着。 ここから一畑薬師までは、小型バスを利用する。 帰りも同じバスを利用して一畑口も戻ってきたが、乗客は私だけだった。 年配の運転手がいろいろ説明してくれたので、 今の一畑口駅よりさらに3kmほど奥にあった一畑駅の様子など興味深い話を聞くことができた。
 昔はその一畑駅から石段を登って一畑薬師にお参りしたというが、今は道路が山上まで 通じていて、広い駐車場が用意されている。 駐車場から続く参道にはお店が並んでいるので、参詣客の数も多いのだろうが、 この日は雨でほとんど人通りがなかった。
 静かな境内の中で、まず法堂を拝観し、次に石段を登って仁王門をくぐり、 薬師本堂へ進む。 広場に面して薬師本堂、観音堂、鐘楼が配置されている。 眼病平癒祈願の丸い絵馬がたくさん掛けられているのが目につく。 ここは、「目のお薬師様」として知られているのだ。 今も昔も、眼病を患っている人が世の中にたくさんいることがわかる。
 また、下生閣(あさんかく)と呼ばれる建物の中には、 休憩所があり、眼病に効くと言われるお茶湯(おちゃとう)が用意されている。 持って帰ることができるように、容器も置いてある。
 一畑薬師は、ご利益を期待する庶民に昔から人気のあるお寺らしく、 親しみやすい雰囲気に包まれているのが印象的である。
 帰りも一畑口から一畑電車を使って松江に戻った。 映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」は、 この一畑電車を舞台に撮影されたそうで、 電車の中や駅には、映画の公開(2010年5月)に合わせて、関連のちらしやポスターなどが目についた。 一畑口まで乗ったかぎりでは、地方の私鉄の例にもれず、乗客は多いとは言えない様子だったが、 歴史のある鉄道だけにこれからも頑張ってもらいたいものである。
 写真は、RICOH GX200で撮影。


 法堂(坐禅堂)の正面。 湖北禅窟と書かれた扁額が掲げられている。 この法堂周辺は、厳粛な空気が支配していて、薬師堂とは雰囲気が異なる。
2010/6/18撮影

 薬師本堂正面の眺め。 右側に観音堂がある。 境内は8万坪という広大さだ。
2010/6/18撮影

 薬師本堂に向かって左手には、十六羅漢像が並び、 眼病平癒祈願の絵馬がたくさん掛けられていた。
2010/6/18撮影

 一畑口駅。 ここで電車は進行方向を変える。 かってはもう3kmほど奥の一畑薬師のふもとまで線路があったが、 戦争中に鉄材を供出したため、短くなったという歴史を持つ。 バスの運転手さんの話では、昔の一畑駅付近には、参拝客のための旅館などがあったというが、 今は当時の面影がうかがえるようなものはない様子だった。
 電車につけられたヘッドマークは、古代出雲歴史博物館で開催されていた特別展 「BATADEN-一畑電車百年ものがたり」にちなんで作られたもの。
2010/6/18撮影

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