長谷寺(奈良県桜井市) 2010年 12月
 真言宗豊山派(ぶざんは)の総本山。
 山号は豊山神楽院である。
 もとは東大寺の末寺で、真言宗に変わったのは16世紀末である。 源氏物語にも登場するほど古くから信仰の対象になり、花の寺も呼ばれている。 ただし現在の本堂は江戸時代の建てられたもので、本尊も16世紀に作られたものだ。
 訪れたのが12月も末の、時折雪がちらつく寒い日だったので、 近鉄の長谷寺駅に降り立った参拝客は筆者のほかにはいない様子だった。 駅から坂を下って参道を長谷寺に向かう。 両側にはいろんなお店が並んでいて、季節がよいときには大勢の人で賑わうのだろうが、 このときは閑散としていた。 駅から15分くらい歩くと、通りの正面に長谷寺の五重塔が顔を出す。
 門前町を抜けて少し上がると仁王門である。 ここを通ると、屋根付きの登廊の中の長い階段が待っている。 登りきってやっと本堂横の鐘楼の下に達する。 本堂の中に入ると通路状の間があり、奥の正堂に安置されている本尊の十一面観世音菩薩立像 を拝観することになる。 室町時代の作で、金色に輝いている。 高さが10m以上もある大きな像のため、見上げる格好になる。 ふくよかで、穏やかな表情である。 表に出て本堂正面に回ると、懸造になっているため視界がよく、仁王門や参道が見下ろせる。 ゆるやかに波打つ山並みと長谷寺と門前町の家並みだけが視界に入る。 俗界から離れた環境で、だれでも心穏やかになれそうだ。 花で華やぐ季節にもう一度訪れたくなった。
 お寺を後にして長谷寺駅に向かって門前町を歩いていると、草餅を売っている店が目立つ。 ここの名物のようなので、老夫婦が切り盛りしていると思われる古い構えのお店で草餅を お土産に買った。 おまけにサービスしてくれた1個をほおばってみると、暖かい餡と草の香りが 口中に広がって多少体が温まった。
 写真は、CANON 5D Mark U・EF-24-105mm F4L IS USMで撮影。

 その後、2019年の5月に再訪する機会があったが、境内に入る時間がなかった。
 というのも、水彩画教室の仲間とスケッチをするためだったからで、駅から山門までの参道で絵筆を取った。 暖かい季節だったので、駅から歩く人や観光バスで来る人などで賑わっていた。 冬の閑散として寒々とした光景とは大違いだった。


 近鉄長谷寺駅を下りて、古い街並みが続く門前町を歩いて長谷寺へと近づく。
 この日は雪がちらつく寒い日で、マフラーを首に巻き、手をポケットに入れて歩いた。 お寺の手前まで来て、やっと正面の初瀬山の中腹に五重塔が目に入る。 この写真の中央少し上に五重塔の屋根が見えている。
2010/12/25撮影

 仁王門
2010/12/25撮影

 仁王門から本堂へは、登廊という屋根付きのゆるい傾斜の階段が続いている。
2010/12/25撮影
 本堂
 登廊を登りきると、鐘楼(上の写真の左の建物)の下に出る。 鐘楼は、本堂とつながっている。 本堂は複雑な構造をしていて、屋根も変わっている。 正面(右の写真)からでは分かりにくいが、こうして横から見ると巨大な建物であることがわかる。
2010/12/25撮影


 本堂から見た五重塔。
 この五重塔は戦後に建てられたもので、規模は大きくないが、 周囲の緑の中に溶け込んで調和している。 屋根にうっすらと雪が積もっている。
2010/12/25撮影

 本長谷寺
 説明板には、「天武天皇御悩平癒のため朱鳥元年(六八六)道明上人ここに 精舎を建立し千佛多宝塔銅盤(国宝)を鋳造して祀る これ長谷寺の草創なるを以て本長谷寺と称す」 とある。
2010/12/25撮影

 屋根に雪をかぶった本堂と、本堂に続く登廊(右下)。
 広い斜面に伽藍が点在している。
2010/12/25撮影

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