伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)は、京都市伏見区にある神社で、全国に約3万社あるという稲荷神社の総本社である。
その歴史は大変古く、8世紀初頭つまり平安京遷都以前に遡るとされる。
京都には、全国に名を知られた神社がいくつかあるが、それぞれに神社の性格が違うから、境内の雰囲気も異なる。
この伏見稲荷大社は、元来稲作の神様であったが、商売繁盛の守護神ともされる。
そのため、とりわけ多くの庶民が集まるようだ。
境内、とくに稲荷山山中を歩くと、茶店がところどころにあったりして、厳かというより雑多な親しみやすい空気が漂っている。
筆者が訪れたのは、11月末の日曜日。
朝8時過ぎにJRで稲荷駅に下りたら、かなりの数の乗客も一緒に下りた。
こんな早い時間に参詣客が集まりだすのだから、お正月や祭礼の日の混雑ぶりは大変なものらしい。
駅の目の前はもう伏見稲荷大社境内なのだが、境内に進む前に駅舎を観察しておく。
こじんまりとした和風駅舎で、神社との調和を考慮したものらしいことに気が付く。
道路を渡って境内に入ると、朱色の大鳥居越しに同じく朱色の楼門(重文)が見える。
16世紀末、豊臣秀吉の造営といわれる。
その背後に15世紀末建立の本殿があり、こちらも重文に指定されている。
そして、伏見稲荷大社を特徴づける千本鳥居が、本殿裏手から始まる。
なるほど、千本鳥居の光景はテレビなどで紹介されている通りなのだが、やはり実物は一見の価値がある。
私も写真を撮りながら、次々にやってくる参詣者の波と一緒に歩いていると、いつしか山上を目指していた。
この稲荷山の山中を歩くことを「お山めぐり」と言うそうだ。
もともと伏見稲荷大社の社殿は稲荷山の上のほうにあり、応仁の乱のあとに山の麓の現在地に移されたのだ。
そういう歴史を知れば、お山めぐりをしないわけにいかない。
周りを見渡すと、ハイキング姿に身を固め準備怠りない人たち(稲荷山からさらに足を延ばすのかもしれない)もいれば、
街中を歩く格好のまま歩いている人などまちまちで面白い。
外国人、それも欧米系と思われる人たちも目につく。
千本鳥居は海外でも有名な様子だ。
奥社奉拝所、熊鷹社などを経て、四ツ辻に着く。
名前のついている主な場所には茶店があったりして、休みながらゆっくり登ることができるようになっている。
四ツ辻は京都市街地を見渡せる展望のよい場所であり、山上を一周する環状の道の分岐でもある。左右どちらの道をとってもいい。
私は、右手の道を選び、三ノ峰、二ノ峰を通って頂上の一ノ峰(233m)に達した。
頂上といっても、普通の山のそれとは異なり、一帯が小祠や塚などで隙間なく埋め尽くされている。
中には、小祠に向かってお経をあげている人も見かけた。
神仏習合時代の名残なのだろう。
約2時間のお山めぐりを終えて本殿に戻ってきたときには、日も高くなり、一段と参詣者の数が増して賑やかになっていた。
写真は、PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。