道明寺(大阪府藤井寺市) 2015年 4月
 道明寺(どうみょうじ)は、藤井寺市にある真言宗御室派の尼寺で、山号を蓮土山と称する。
 7世紀に、このあたりを根拠地としていた土師(はじ)氏の氏寺として創建されたといわれる。 当初は土師寺と呼ばれていたが、土師氏の後裔にあたる菅原道真の死後、道明寺と改められたそうだ。 場所も、明治時代はじめの神仏分離令以前は、今の道明寺天満宮境内にあった。
 筆者が訪れたのは2015年4月18日で、近くにある葛井寺と野中寺を巡ったあとのことである。 道明寺の本尊で国宝の十一面観音菩薩立像は秘仏で、公開は毎月18日と25日。 葛井寺の十一面千手観音菩薩坐像と野中寺の銅造弥勒菩薩半跏思惟像の公開日も毎月18日なので、 これらをいっぺんに拝観するには、18日は都合がいいのである。
 道明寺は、道明寺駅から近い。 駅に降り立って、西に向かって歩けば、まず右手に道明寺天満宮が現れ、道路(東高野街道)を挟んで西隣に道明寺がある。
 りっぱな山門をくぐり境内に入ると、ちょうど観光バスでやってきた団体客と重なったようで人が多い。 あまり大きくない本堂の建物に次々と拝観者が吸い込まれていく。 私も本堂前で拝観料を納め、本堂内に上がった。 お目当ては、もちろん十一面観音菩薩立像である。
 仏像を紹介した本などで取り上げられる十一面観音像といえば、聖林寺とここ道明寺の像が代表格だろう。 菅原道真によって刻まれたと伝えられる十一面観音菩薩立像が薄暗い堂内に安置されていた。 像高約1mの像だから、そう大きくはない。 カヤの一木造りで彩色されていないので、黒光りしている。 ふくよかではちきれんばかりの体躯に、胴のくびれが強調されて見える。 複雑な衣文の彫りと穏やかな表情の顔。 全体に柔らかい印象で、尼寺の本尊にふさわしく見え、素敵な観音菩薩像である。
 混雑する堂内から外に出ると、太子堂の前で道明寺粉を使った和菓子の販売をしていたので、お土産に購入。 道明寺のお土産といえば、道明寺粉が有名だが、旅行途中であまり荷物を増やしたくなかったので、 かさばらない4個入りの菓子で我慢だ。
 あらためて境内を見渡すと、なんとなく女性的な雰囲気を感じる。 尼寺ということを知っていて見るためかもしれないし、ぼってりとしたピンクの花の八重桜が、満開だったからかもしれない。

 2018年の冬、東京国立博物館で開かれた「仁和寺と御室派のみほとけ」展に、道明寺の十一面観音菩薩立像が出陳されていた。 3年ぶりに拝観した印象は、道明寺での最初のときと基本的には同じである。
 穏やかでふくよかな顔立ち、精緻に彫られた衣文や瓔珞、それに全身を包む優美な曲線。 けっして大きくない像だが、会場に並ぶ他の仏像に負けない存在感を示していた。
(この項、2018/2追記)

 写真は、PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。


 山門(楼門)
 門の正面奥に見えているのは太子堂
 屋根を含む上部が大きくて、少々バランスが悪いように見えるのは、 もともと鐘楼だった建物を移築して山門としたためらしい。
2015/04/18撮影

 本堂
 この本堂内に国宝の十一面観音立像が安置されている。
2015/04/18撮影

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