飛鳥寺(奈良県高市郡明日香村) 2011年 11月
 飛鳥寺(あすかでら)の公称は安居院(あんごいん)で、現在の宗派は真言宗豊山派である。
 なにより、ここは日本で最古の本格的寺院である法興寺の後身として知られていて、 本尊の釈迦如来坐像は飛鳥大仏として有名だ。
 日本の仏教はここを原点として広まっていったわけで、仏教に興味を持つ者にとって、一度は拝観したい場所である。
 筆者が拝観したのは、2011年の11月。 バス停のすぐ前、駐車場の向こうに飛鳥寺はあった。 有名な割にはこじんまりとした寺である。 というのも、飛鳥時代の壮麗だったと想像される伽藍(一塔三金堂式)は残っておらず、目立った建物といえば、江戸時代に再建された今の本堂くらいだからだ。 平日の朝だったのでほかに参拝者がおらず、本堂の中に入ってゆっくりと本尊の釈迦如来像を拝観することができた。 薄暗い本堂の中で照明に浮かび上がる釈迦如来像のお顔は面長で、法隆寺の釈迦三尊像のそれと似ている という印象を受ける。 両方とも作者が鞍作鳥(または止利)とされるから当然かもしれない。 面長なのは大陸系の顔立ちなのだろうか。 それに顔の傷跡が痛々しい。 何度も火災で損傷を受け、補修された跡がわかる。 当初の部分はわずかしか残っていないとされている。
 今でこそほかにも巨大な仏像がいくらでもあるので、これくらいの大きさで驚く人はいないだろうが、、 仏教が我が国に伝来して間もなくのころに、これだけ大きな銅造の仏像を目の当たりにした人たちは さぞ驚いたことだろうと想像される。

 その後の2018年に、水彩画教室の仲間と奈良スケッチ旅行をした際、飛鳥寺周辺でもスケッチをした。 このときは時間がなかったので、飛鳥寺の拝観はしなかったが、周囲の風景に特に変わった様子はなかった。 スケッチ後、天気がよかったので飛鳥寺の西にある甘樫丘(あまかしのおか)展望台に登り、飛鳥寺方面を遠望することができた。 下に載せた最後の写真はそのときのものである。
 写真は、PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMおよびCANON G7X MkUで撮影。


 創建当初は一塔三金堂型式の大きな寺だったことが分かっているが、 現在の飛鳥寺は案外に小さな寺である。 何度も火災に会って昔の面影はないようだ。
2011/11/18撮影

 本尊の釈迦如来坐像。
 江戸時代に再建された現在の本堂に安置されている。
 筆者が拝観していると、係りの人から「写真を撮ってもよいですよ」と言われて撮った一枚。
 鞍作鳥(くらつくりのとり、鞍作止利とも記される)作と言われる銅造の釈迦如来像。 お顔には修復の跡が痛々しい。
 しかし、1400年もの間、人々を見守り続けたきたことは驚くべきことだ。
2011/11/18撮影

 蘇我入鹿の首塚とされる場所に建つ五輪塔が、飛鳥寺の西門の先の畑の中にある。
 石の塔の先に見える建物が飛鳥寺。
2011/11/18撮影

 甘樫丘展望台から眺めた飛鳥寺とその周辺。
 現在の飛鳥寺の周りは、田畑の中に家が点在するのどかな環境である。
 写真の真ん中にひと際大きな屋根が見えるが、これが飛鳥寺の本堂。
 この展望台の反対側からは、大和三山などが一望できる。
 この狭い地域が、かっての日本の政治・文化の中心地だったのだ。
2018/5/27撮影

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