新井薬師(梅照院)(東京都中野区) 2012年 02月
 新井薬師(あらいやくし)は、東京都中野区にある真言宗豊山派の寺院で、正式名称は新井山梅照院薬王寺。
 筆者の家からはそう遠くない。 といっても歩けば30分くらいかかるし、バスや電車(最寄り駅は西武新宿線・新井薬師前)を使っても乗り継ぎなしには行けないので、 わざわざ行こうという気になかなかなれなかった。 ところが、2012年になってたびたび中野駅近くまで行く用事ができ、ついでに足を延ばして参詣する機会が増えた。 以来、適度な運動になることもあり、散歩がてらにたびたび訪れるようになった。
 中野駅からだと、サンモール、ブロードウェイ、そして「薬師あいロード」商店街を通って行くのがいい。 各種の商店が切れ目なく続き、買い物をしなくても眺めて歩くだけで退屈しない。 なお、「薬師あいロード」の「あい」は眼病にご利益があるとされる新井薬師にちなんでEyeにひっかけたものらしい。
 新井薬師境内に入ると、知名度の割には意外とこじんまりとしていてあまり広くはない。 戦災で焼失し戦後に再建された本堂も、有名寺院の建物としては大きくはない。 しかし、もともとの境内はかなり広大だったようで、北側に隣接する新井薬師公園は新井薬師が大正時代にその境内の一部を開放したものという。
 本尊は、薬師如来と如意輪観音像で秘仏となっている。 子育てや目の病気平癒にご利益があるとされている。
 2013年には、火災で焼失した十二神将像が145年ぶりに復活し、今は本堂内に安置されている。
 梅照院(ばいしょういん)の名前の由来は、かって戦乱で姿を消した本尊があるとき梅の木の穴から光を放って現れたと いう故事に基づくという。 では、その故事の梅の木自体でなくても梅が多いのかと思ったら、そうでもない。 後日、梅の花の時期に確認したら、鐘楼の近くにある枝垂れ梅が、ピンクのあでやかな花をつけて、ひときわ目立っていた。
 新井薬師の縁日は8のつく日で、境内には露店が出て賑わう。
 それに加えて、毎月第一日曜に開かれる骨董市も、骨董ファンにはよく知られているようだ。 2012年2月5日に行われた骨董市に、朝8時ころに行ってみたら、すでに地面に所狭しと商品が広げられていて、 お客も三々五々訪れていた。
 ほかには、境内にある井戸水が名水として知られていて、見ていると容器を持った人たちが次々に水を汲みに来る。 水は重たいので、自転車に容器を積んでくる人が多いようだ。
 桜の花の時期もいい。 境内は桜の花で埋まり、境内全体がまるで花で荘厳されているかのようだ。 近くを通る中野通りが桜の名所として知られているので、合わせて見物することができる。
 新井薬師は、お参りを目的に来る人ももちろん多いが、買い物や散歩の途中に立ち寄るような人も多く見受けられ、 地域の人の生活の一部に融け込んでいる庶民のお寺といった雰囲気が色濃い。
 写真は、RICOH GX200、PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMほかで撮影。


新井薬師境内正面。奥に山門が見えている。 最近、塀を修復した際、正面にあった石積みの塀を撤去したので、前より景観がよくなった。 まだ電線が目障りだけれども。
2015/04/02撮影
中野駅北口からブロードウェイを通って早稲田通りに出て、少し東に歩くと、 「薬師あいロード」商店街を示すアーチがある。(写真上)
2012/02/05撮影

 山門を通して正面に本堂が見える。
 戦災で焼失したため、建物類はすべて戦後に再建されたもののようだ。
 提灯の文字は、正式名の梅照院でなく、新井薬師になっている。
2012/04/08撮影
 本堂正面
 境内には桜の古木が多い。
 境内裏手にある新井薬師公園にも桜の木がたくさんあり、花見客で賑わう。
2016/04/2撮影

 井戸と鐘楼
 新井の名の由来は新しい井戸から来ていて、現在の新井薬師境内にも白龍権現水と名付けられた無料で利用できる井戸がある。
 見ていると、この水を汲みに容器を持った人が次々にやってくる。 自転車の買い物かごいっぱいにポリ容器を積んで来る人もいる。
 写真の青い手押しポンプは、普段は使われていないようで、利用者はポンプの下にある蛇口をひねって順番に水を汲んでいた。
2012/04/10撮影

 2020年になって、井戸水を汲むことができなくなった。 理由は取水装置の故障とのことだが、そのうちに井戸の周りには囲いが作られ、近寄ることもできなくなった。
 秋になって訪れたら、「新型コロナの影響で閉鎖中だが、いずれは再開予定」との貼紙があるのに気が付いた。
 (2020/11/06追記)

 聖観世音菩薩像
 後の建物は、薬師霊堂の扁額がある二重塔。 2012/04/10撮影
治してもらいたい部分を洗うと願いがかなうという「ねがい地蔵尊」。
2012/02/28撮影

 枝垂れ梅。
 境内に梅の木は多くないが、この枝垂れ梅は毎年、見事な花を咲かせる。
 後ろに見えるのは鐘楼。
 同じ時期、近くにある早咲きの桜も満開になり、それぞれの花にカメラを向ける人が絶えない。
2019/03/10撮影

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