阿弥陀寺(山口県防府市) 2010年 9月

 華厳宗のお寺で、山号は華宮山。
 1187年に重源によって建立されたと伝えられる。
 重源は東大寺復興の大勧進職をつとめ、大仏殿に使う木材の調達先を周防国に求めていた。 その縁で、周防国に重源ゆかりのお寺が残されている。
 筆者が訪れたのは2010年9月。 防府駅からのバスを下りると、緑の木立の中に参道が続き、仁王門が見えている。 この仁王門は、江戸時代の17世紀に再建されたものだが、 茅葺屋根といい、金剛力士像といい、なかなかに趣きがある。 この総門をくぐってさらに続く参道が、歴史のあるお寺らしくていい。 深い木立に囲まれたゆるやかな坂道なのだ。 登りきると山門があり、 本堂、経堂、開山堂、念仏堂などが点在している。
 このお寺で特徴的なのは、湯屋や石風呂の存在だろう。 一見お寺とは関係ないと思われるこれらの施設は、 重源によって、働く人たちのために、 疲労回復目的に作られたと言われている。 この付近では、大勢の肉体労働者が、東大寺復興に使う木材伐り出しに従事していたのだろう。
 重源が大勧進職となって、東大寺の復興に取り組み出したのは、 60歳を過ぎてからで、東大寺総供養が行われた時は、83歳になっていたという。 当時の60歳台は大変な高齢だろうから、並はずれて意思が強く、実行力と統率力のある人だったに違いない。
 それでもなお疑問に思うのは、東大寺に用いる木材をなぜ周防で伐り出したのかである。 重源の生まれは京都だが、周防と特別の関係があったのか、 本当に当時の周防に大木が多かったのか、ほかに理由はなかったのか?
 広い境内の中は公園としても整備されている。 アジサイがたくさん植えられていて、アジサイのお寺としても有名である。 もっともアジサイは1970年代から植えられたというからそう古いものではない。
 公園の木立の間からは、防府の市街地越しに瀬戸内海が見渡せる、 なかなかによい立地である。
 写真は、CANON 5D Mark U・EF-24-105mm F4L IS USMで撮影。


 仁王門
 13世紀に建立され、その後損壊し、江戸時代の17世紀になって再建されたのが 現在の仁王門。 阿弥陀寺で最も古い建物。 茅葺屋根と天然石の石段が落ち着いた風情を感じさせる。
2010/9/24撮影

 どういうわけか仁王門の中にある湯釜。
 湯屋で使われていた釜で、これは鎌倉時代のものとの説明があった。
2010/9/24撮影

 黒い瓦屋根が印象的な本堂。 現本堂は18世紀に再建されたもの。
2010/9/24撮影

 本堂の前の老木を見ると、くぼみにかわいらしい石仏が置かれていた。
2010/9/24撮影

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