CANON F-1


 CANON F-1(後期型)を使い始めたのは、1979年末か1980年始めのことだ。 それまでの10年間使っていた、NIKOMAT FTnの後釜としてである。 写真でわかるように、オリーブ・ドラブ(Olive Drab)という変わった色をしている。 そのころの高級カメラの塗装は黒になっていたが、 みんなと同じ色では面白くないと思って、 この色を選んだのだ。 私自身は気に入っていた色だが、一般にはあまり人気がなかったらしく、 F-1を持っている人はけっこう見かけたのに、 この色のF-1を持っている人に出会った記憶がない。
 レンズは、50mm F1.4の単焦点標準レンズをボディと一緒に買い、 その後、広角や望遠レンズ、それにズームレンズも何本か揃えた。 1980年代になると、ズームレンズの性能も上がって、 市販される本数も多くなっていたのである。
 カメラとしての出来も良かったが、デザインもすぐれている。 重量感のあるカメラなのに、決して鈍重な印象は受けない。 ペンタプリズムカバーのCANONのロゴも旧字体で、 角ばったボディと調和していて好ましい。
 ボディの塗装は厚手で、こってりとして高級感がある。 さすがに登山用として10年間も使えば塗装がはげて、地の真鍮の色が出ている箇所もあるが、 決して安っぽくならないのは金属製だからか。 今回この写真を撮るにあたっても、 塗装がピカピカのため周囲のものが鏡のように反射してしまい、 写りこみの少ない角度を探すのに手間取っている。
 NIKON FTnからこのカメラに替えて、 すぐに気がついたのはシャッター音の違いである。 メーカーも違えば機構も違うので、音が違ってもあたりまえなのだが、 ずいぶんと違うのだ。
 カメラ本体に付属して、同色の布のストラップと革ケースがついてきた。 しかし、この2つは結局使わずじまいだった。 布製のストラップは幅広で厚手の布製で重厚だ。 なかなかに存在感があり、 ボディとのバランスも悪くない。 今売られているデジタル一眼レフの付属ストラップのように、 メーカー名のロゴがこれ見よがしに入っているわけではないので品がある。 このストラップでF-1を持ち歩けば、スタイル的にも決まること請け合いだ。 でも登山用としてはかさばるので、 市販の薄くて軽量の布ストラップに代えて使っていた。 登山のときはカメラを肩からななめにしてかけて歩くのを習慣にしていたので、 夏などにはすぐに汗でストラップが濡れてしまう。 なので、革製は論外で、布製のものでしかも汗に濡れても、 あとの乾きの速いものを好んでいた。
 付属のケース(写真の右手に写っている)はというと、 マジックテープのついた袋状の大変シンプルなものである。 普通の使い方では問題ないのだろうが、 これだと、カメラをケースから出したあと、 ケースをどこかに置かなければならない。 登山中にこの動作を行うのがいや(特に冬山では)で、 CANON製の黒のソフトケースを使っていた。 ストラップに留められるタイプなので、 カメラをケースから出してもケースの置場を考える必要がない。 しかし、これはもう処分して手元にない。 十数年使用したら、人工皮革が劣化しべとべとしてきたからである。
 このカメラも、NIKOMAT FTnに続いて約10年間、あらゆる山行に持って歩いたが、 故障したことがない。 あらためて細部を見回すと、やはり長い年月の経過でくたびれてきている部分がある。 そろそろオーバーホールに出そうかと思い始めているところだ。 (2008/12記)

 上の文章で、「故障したことがない」と書いたが、 その後に記録を調べたら、 購入直後の1980年初めに、 セルフタイマーの動作不良に気が付き、 無償修理していたことがわかった。 いつもながら、記憶とはかなりいい加減なものであることを実感した次第。(2008/12/30記)

 ミラーの汚れがひどくなり、露出計の針が正常に動かなくなったので、 2009年2月、都内の某修理専門会社にカメラを持ち込み、 モルトプレーンの張り替えを含むオーバーホールを依頼した。 約1ヶ月後に修理が完了し、露出計は正常になった。 ついでに、50mmF1.4レンズの曇りも取ってもらい、 合計の修理代は3万円近くになった。 これで、またいつでもF-1を持ち出せる状態になったわけで、 めでたしと言いたいところだが、 いささかの不満が残った。 というのは、取り換える約束の部品が取り換えられていなかったのだ。 通常の撮影に影響のない部品とはいえ、 約束が守られないのはいただけない。 修理に持ち込んだときに応対してくれた人から、実際の修理をする人に 正しく情報が伝わっていなかったらしい。 (2009/03/07)

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