2014年に出会った蝶
 2014年は、蝶の撮影のために遠出することもなく、いつの間にか秋も終わりになってしまった。
 前年(2013年)までであれば、筆者がよく行く高尾山の頂上で待っていれば、 オオムラサキやスミナガシ、アカボシゴマダラ、ルリタテハといったタテハチョウ類のどれかを観察、撮影できた。 ところが、今年(2014年)は、7月と8月に数回登ったけれど、タテハチョウの類にほとんど出会えず、 寂しい夏となってしまった。
 ここで紹介するのは、自宅近くの「蚕糸の森公園」での、主にアカボシゴマダラの観察結果である。 夏にアカボシゴマダラを目にして以来、この公園を通るたびに、成虫や幼虫がいないか注意して見回すのが、 習慣になってしまった。
1) アカボシゴマダラ、蚕糸の森公園(東京都杉並区) 2014年8月〜11月

アカボシゴマダラ
 1990年代に人為的に関東地方に持ち込まれたとされるこの蝶も、生息域を広げて、 今や都内で普通に見られるようになった。 蚕糸の森公園を歩いていても、よく見かける。 本ホームページでもすでにこの蝶の写真を数枚載せているが、赤い斑紋がおしゃれで写真写りがいいので、 ついカメラを向けてしまう。 でも、関東地方に持ち込まれた経緯を考えると、いささか複雑な気持ちでシャッターを切ることになる。
 この写真の個体は、そのしぐさから産卵場所を探しているように見えた。 筆者の記憶では撮影場所付近に食樹のエノキはないはず。 そこであたりを見回したら、高さが1mに満たないエノキの幼木は、 灌木の茂みの陰などにけっこう多いことがわかり、認識を新たにした。
2014/8/17 PENTAX K-5・DFAマクロ50mmF2.8で撮影
 アカボシゴマダラ幼虫
 上の写真を撮ったのち、10日ほどして、蚕糸の森公園を歩いたときのことである。 アカボシゴマダラ成虫の姿はなかったが、あるエノキの幼木を見ると、葉がひどく食い荒らされている。 もしやと思い、葉をよく見ると、アカボシゴマダラの幼虫が葉の上で静止していた。
 幼虫の姿は、同じエノキを植樹にするゴマダラチョウと似ている。 相違点は、アカボシゴマダラの場合は背中の突起が4対で尾端が閉じているのに対し、 ゴマダラチョウ幼虫の突起は3対で尾端が開いている。

2014/8/28 PENTAX K-5・DFAマクロ50mmF2.8で撮影
 アカボシゴマダラの蛹
 蚕糸の森公園で、エノキの幼木に注意して歩くと、 いたるところにと言っていいほどたくさん見つかる。 今までエノキの幼木の存在に気が付かなかったのは、そういう意識を持って見ていなかったということなのだ。 人の目には、興味のないものは見えていないことがわかる。
 たくさんあるエノキの幼木を覗き込みながら公園を一巡すると、 ほぼ毎回のようにどこかでアカボシゴマダラの幼虫が見つかる。 ゴマダラチョウの幼虫も少ないが見つかる。
 ときには蛹も見つかる。 写真の中央、エノキの葉にぶら下がっているのが、アカボシゴマダラの蛹。 上の写真の幼虫とは場所が離れているので別の個体である。
2014/9/19 RICOH GX200で撮影
 羽化直前のアカボシゴマダラの蛹
 上の写真の蛹を家に持ち帰り、羽化の瞬間を観察することにした。
 持ち帰って6日目の夜、蛹の色が変わり、翌朝にでも羽化しそうな気配に気が付いた。 そこで、記録としてこの写真を撮っておいたのだ。 夜19時45分ごろのことである。
 結果的には、この約1時間半後に羽化することになる。

2014/9/24 PENTAX K-5・DFAマクロ50mmF2.8で撮影
 上の写真を撮ったときは、羽化は翌朝以降と勝手に予想していた。 21時過ぎに蛹を見たときにも変化はなく、蛹を置いてある部屋でパソコンを操作しながら、 知人と電話で話を始めた。 そして、21時半ごろ電話を終えて蛹に目をやったら、なんと羽化していた。 ほんの10分程度目を離した隙に羽化したのである。 慌てて撮ったのがこの写真で、羽化直後のアカボシゴマダラが、蛹の抜け殻にしがみついている。
 自然状態で夜間に羽化することがあるのかどうかわからないが、 部屋が明るかったので、昼と間違えたのかもしれない。 まさか夜中に羽化するとは予想していなかったので、羽化の瞬間を撮影しそこなってしまった。

2014/9/24 PENTAX K-5・DFAマクロ50mmF2.8で撮影
 この写真を載せたのは、11月13日という遅い時期の撮影だからである。 たぶん、これが蚕糸の森公園で見かけた2014年最後のアカボシゴマダラ成虫になるだろう。
 8月からこの公園で、アカボシゴマダラの観察をしていて感じたのは、生命力の旺盛なことである。 幼虫はエノキの葉を探せば簡単に見つかるほど多いし、11月中旬になってもまだ成虫の姿が見られるのだから。
 写真の個体は、羽化不全だったようで、右前翅が縮れている。

2014/11/13 RICOH GX200で撮影


2) ヒメジャノメ  蚕糸の森公園(東京都杉並区) 2014年8月


 ヒメジャノメ
 小さくて地味な色合いの翅のため、あまり人目につかない。
 このときも、たまたまカメラを持って公園を歩いていたら、 ちらちらと飛び回る姿を見かけたので撮影した。

2014/8/13 PENTAX K-5・DFAマクロ50mmF2.8で撮影 ストロボ使用

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