2013年に出会った蝶
 最近は、長期間家を空けるのが難しいため、蝶の撮影は自宅から短時間で往復できる近場が多くなっている。 そんなわけで、珍しい蝶に出会える機会は少ないが、筆者の印象に残った写真を順次紹介する。
1) コムラサキ 石神井公園(東京都練馬区) 2013/5/16
 石神井公園は、筆者の家から近い(地下鉄とバスを乗り継いで30〜40分)わりに自然が豊かだ。 この日は昼間に時間の余裕があったので、数年ぶりにカメラを持って出かけてみた。
 池の周りを歩き始めたら、コムラサキが地面で吸汁している場面に出会い、びっくりした。 筆者の記憶では、コムラサキのいる場所というのは、大都会ではなく北海道や中部地方などの自然が豊かな地域である。 しかし、帰宅して調べてみると、関東の平地にも広く分布していて、都内の大きな公園ではそれほど珍しい蝶ではないようだ。 石神井公園内では、水辺に点在するヤナギ類が食樹になっているらしい。

コムラサキ♂

2013/5/16 PENTAX K-5・DFAマクロ100mmF2.8で撮影

コムラサキ♂
上と同じ個体。
吸汁に夢中になっているようで近づいても逃げなかった。
この角度からは翅の青紫色が消えて見えない。
見る角度によって青紫色の輝き具合が変わるのは、いわゆる構造色のためだ。

2013/5/16 PENTAX K-5・DFAマクロ100mmF2.8で撮影


2) ムラサキシジミの産卵 高尾山 2013/6/22

ムラサキシジミ♀の産卵の瞬間
この日(2013/6/22)、6号路から高尾山に登り、下りは1号路経由で 金毘羅台歩道を歩いた。
金毘羅台から下り始めてすぐに、シジミチョウが眼の前を横切り、止まった。 ムラサキシジミがアラカシの芽に産卵を始めたのである。 すぐに、カメラを取り出して撮影したのが、ここで紹介する写真である。 レンズは標準ズームレンズが付いていたので、そのままで撮った。 マクロレンズだったら、もっと近寄って撮影できたのにと思う。

2013/6/22 PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影

ムラサキシジミ♀が産卵を終えた直後
アラカシの芽の基部に白い卵が見える。

2013/6/22 PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影

ムラサキシジミ♀
上の写真2枚と同一個体。 産卵を終えると近くの葉に移動して休んでいた。
青紫色の翅表を見たかったが、翅を開いてくれず、飛び去ってしまった。

2013/6/22 PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影


3) アオスジアゲハ 東京都杉並区 2013/8/28
 とにかく今年(2013年)の夏は暑かった。 そのせいで、7月と8月は、あまり出歩かなかった。 天気予報で熱中症への注意情報が連日出されたことに多少影響された面はあるが、あまりの暑さに外出するのが億劫 だったというのが本音である。
 かといって家の中にいるだけでは退屈するので、庭に来るアオスジアゲハの撮影を試みた。 2階のベランダから遠くない場所に、つる性の雑草ヤブガラシが木にまとわりついていて、この花にアゲハチョウが好んでやってくる。 ナミアゲハが多いが、その次にアオスジアゲハも多い。 部屋の中からときどき外を見て、アオスジアゲハがやってきたら、ガラス戸を開けて望遠ズームレンズをつけたカメラを向ける という安直なやり方である。
 楽をしての撮影なので、花に止まっているときの姿をとらえるだけならそれほど難しくない。 そこで、少し難易度の高い飛翔中の姿も狙うことにした。 結果として、飛翔中のまあまあの出来の写真が数枚撮れたので、それらを中心に紹介する。
 今回アオスジアゲハを撮ろうと思ったのは、アオスジアゲハが筆者の好きなグラフィウム(Graphium)族の蝶であるのと、 過去にまともにアオスジアゲハの写真を撮っていないことに思い当ったからだ。
 この蝶は、その名前の通り鮮やかな青い筋が特徴の南方系の蝶である。 関東にはグラフィウムの仲間はアオスジアゲハしか生息していないが、東京の街中でも目にする機会は多いし、 我が家にも頻繁にやってくる。 庭に幼虫の食草であるクスノキ科の木はないけれど、街路樹や近くの公園にはクスノキやタブノキがあるので、 アオスジアゲハにとって生活しやすい環境なのだろう。
 下で紹介した写真は、すべてCANON 5D Mark U・EF70-300mm F4-5.6L IS USMを使って撮影した。

飛翔するアオスジアゲハ
前翅がとがったスマートな体型は、いかにも速く飛びそうな感じを与える。 実際、敏捷に飛ぶので、飛んでいる個体を採集するとなると、採集者は飛ぶ方向や速度を瞬時に予測して、 素早くネットを振らなければならない。
最近の筆者はもっぱら写真撮影だけだが、以前、東南アジアの森の中で、同じグラフィウムの仲間のコモンタイマイなどを 追いかけたときの光景は、印象が強かったせいか今も記憶に残っている。

2013/8/24 撮影
飛翔するアオスジアゲハ

2013/8/26 撮影
飛翔するアオスジアゲハ

2013/8/24 撮影
ヤブガラシの花で吸蜜するアオスジアゲハ
上の写真と同じ個体
この個体には、前翅先端近くに小さな過剰紋が見える。

2013/8/24 撮影

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