音の高さは音波の振動数で,また音の強さは音波の振幅,したがって音波のエネルギーで決まります。
これに対し音色は音の3要素の中でも最も微妙な属性であり,たとえば『ド』の音でもピアノの「ド」の音とバイオリンの「ド」の音では明らかに音の質が違います。この音の質が音色です。
音色は心理的な要素も無視できませんが,物理的な要因としてはその音に含まれる倍音に左右されます。
次の「音1」から「音3」の部分クリックしてみて下さい。
音量調節:
どうでしょうか。どの音も大体同じ高さの音として聞こえると思われますが,音色はかなり違って聞こえるはずです。
これらの音波の波形は図1~図3のようになります。
一般に楽器から出る音波には,各音階に対応した振動数のほかに,その振動数の2倍,3倍,4倍・・・といった整数倍の振動数が必ず含まれています。各音階に対応した振動数の音を基本音といい,基本音の整数倍の振動数の音を倍音といいます。音の高低は基本音の振動数がいくらであるかによって決まります。
上述の例では,基本音の振動数はいずれも f = 300Hz ですから,「音1」も「音2」も「音3」も同じ高さの音として聞こえたわけです。
しかし倍音がどのように混じるかによって,音の感じがかなり違ってきます。どのような倍音がどのような割合で混じってくるかは楽器によって様々で,これが楽器による音色の違いを生じる物理的理由です。
ではなぜ基本音の振動数の音が聞こえ、倍音の振動数の音は聞こえないのでしょうか?
一般に倍音が加わると、その波形には基本音の振動に細かい振動が加算され短い周期の振動が現れます(上図2,図3)。このために,基本音の一周期内において,これらの細かい振動の山・谷の時間間隔もまたその大きさも,見かけ上不規則に表れます。図2,図3ではこの様子が非常にはっきり見て取れます。
これに対し,基本音の振動は最もはっきりした、確実な周期性があります。この「最も確実な周期性を持つ振動」の音が,我々人間に最も強い心理的刺激を与えるようで,これが基本音の振動数の音が音の高さとして認識される理由です。
この傾向は、基本音の振幅よりも倍音の振幅の方が大きい場合にもかなりよくあてはまります。
次の「音4」と「音5」は同じ振動数の合成音ですが,「音5」の方は倍音の振幅が大きい例です。
なお,「音1」,「音6」はそれぞれ300Hz,600Hz の純音です。
音量調節:
「音5」のグラフが下の図4です。グラフはかなり600Hz のものに近くなりますが,音の高さは振動数が600Hz の「音6」とは明らかに異なり,むしろ基本音が300Hz の音にきわめて近いように思われるのですが,みなさんにはどのように聞こえますか?・・・。なお図2は,前述の図2と同じグラフで,300Hz と600Hz の音の振幅比が1:1のものです。