2つ以上の振動子が相互に作用を及ぼしながら振動するとき,
という。この場合,1つの振動子の運動は他の振動子の運動に影響を与え,逆にその振動子自身も他の振動子の影響を受ける。機械の振動,2つの音叉の共鳴など卑近な例をはじめとして,原子や分子といったミクロの世界にもこうした例はきわめて多い。
もっとも単純なモデルとして,2振子がばねに結ばれている例を考えよう。2つの振子P,Qはばね定数
の2本のばねと,ばね定数の
の1本のばねに結ばれ,
のばねは他端が固定され,
のばねはP,Q間に結ばれているとする。P,Qの質量はともに
とする。
いまP,Qの平衡点からの変位が
,
であるとき,それぞれの運動方程式は,
個の振動子からなる連成振動ではその運動方程式は
個の連立線形常微分方程式となり,その解は一般に
個の単振動の合成として表される。その単振動を
,またその振動数を基準振動数という。この場合は振動子2個ゆえ,2個の基準振動の合成となる。その基準振動数を求めるために,上記の運動方程式を以下のように書き直してみる。(この方法は、高校生にも理解できるようにしたもので、一般的ではありません。一般的な方法は、他を参照して下さい。)
,および
より,
ここで,
,
とおくと,
,
式は以下のようになり,これより2つの基準角振動数
,
が求められる。
したがって,
,
,
,
を初期条件より定まる積分定数として,
とおくと,
以上が、P、Qの時間変化を表す式である。定数部分は、初期条件によっていろいろ変わってくる。
たとえば一例として,
において
,
とすると,
下の図1,図2は上記(10),(11)の場合で,
である場合の
と
の時間変化を表している。これより分かるように,
の振幅が最大の時刻と
の振幅が最大となる時刻が交互になっていることが分かる。Pの振幅が減少するにつれてQの振幅が増大し,逆にQの振幅が減少するときPの振幅が増大していく。つまりPとQの間で振動エネルギーのやり取りが行われているわけです。これはPとQの固有振動数(この場合はP,Qの質量と両サイドのばねのばね定数で決まる)が等しいために起きる現象で,P,Qの固有振動数が異なる場合にはこのようなことは起きません。このことは先のシミュレーションでQの質量を1以外の値にしたとき,振幅の変化はきわめて起きにくいことから確認できるはずです。これが共振という現象です。
なお,もし
の振動しか起きていないとすれば,
,
で
とおくと
となり,PとQは常に同じ向きに同じ運動をすることになる。つまり,
の振動
は下図3のような振動を表すことを意味する。また同様に,
の振動しか起きていないとすれば,
,
で
とおくと
となり,PとQは常に逆向きの運動をすることになる。つまり,
の振動
は下図4のような振動を表すことを意味する。
この場合のP,Qのような2振子の運動は,一般に下図3,4のような
として表されることが知られている。