これが始まり






事研











『校内事件解決研究部』
またの名を事研と言う。
この物語は普通の大学で起きるしょうもない出来事を趣味であり依頼を受けそれを解決していく学生達の物語である。



「じけん?」

「そ、事研。校内事件解決研究部」

友人から渡されたペラペラな紙を見て首を傾げる新入生の紗枝騨二兎。
それは新入生に向けて渡される言うならば勧誘チラシの様なものである。
二兎も上級生から何枚から貰ったのだがどのチラシにはオーバー過ぎるアピールが書かれているにも関わらず、渡されたチラシには『校内事件解決研究部』と殴り書きがされているだけで他に何も書かれていない。
早い話しが何処でその研究部が活動してるかさえ分からないというものだった。

「…書く意味なくね?」

「ホントだよねー、唯一分かるのは名前だけ。活動内容も場所も書かれていない。気にならない?」

全然、寧ろ怪しい。

「ま、それは二兎にあげる。俺は違うサークル回ってるから」

そう言って去る友人の後ろ姿は何処か楽しそうであった。
放課後特にやる事も無い為そのまま家に帰ろうと思い廊下を歩く。
すれ違う学生の手には皆チラシを持っていた。
静かになりつつある廊下で一人の生徒と目が合った、というか合わされた感じ

軽くウェーブの掛かったセミロングの女性、口に加えていた細い棒がパキッと音を立てる。
それがポッキーだと気付いた時だった
黙ったままセミロングの生徒は食べかけのポッキーで俺が持っていたペラペラの紙を差した。

「何でウチのチラシ持ってんの?」

怒っているかの様に低い声
しかし怒られる理由も此方には無い筈なのだから困る。
表情が変わっていない事から恐らくセミロングの生徒にとって普通なのだろう。
それより気になったのは

「あの…もしかしてこの部員ですか?」

先程ウチのチラシと言った事がどうにも気になり、だが尋ねただけなのに眉間に皺を寄せたセミロングの生徒。もしかしたら違うのかもしれない、慌てて謝罪しようと口を開こうとしたが止めた。
生徒がトランシーバーを取り出したからだ。
何故、そんなものを持っているのだろう

「チラシを持っている生徒を確認。…あぁ、多分新入生だ。」

やり取りが終わり再び目が此方へ向く。
何か言われるかと思ったが黙ったまま俺を、睨んでいた。
勿論理由なんて分からない

「あの…」

声を掛け様としたが突然頭を何かで思いっきり打たれ俺は意識を失ってしまう。

バッドを持ち笑みを浮かべた生徒は目の前で倒れている二兎を見て満足げだ

「粗いやり方だな」

パキッと音を立てポッキーが割れる。

「新入生が居たら拉致るのは当たり前だろ?」

「拉致か、自ら事件を作ってどうする」

セミロングの生徒は呆れてしまったようで笑みを浮かべている生徒の横を通り過ぎる。

「あ、集合場所は何時もの場所な」

返事をするかの様にポッキーが割れる音がした気がする。

さて、そう言った生徒は二兎を担ぐとそのまま何処かへと歩き出す。
途中物音がし振り向くが何もなかった様に歩みを進める事にした。






2010.4.17





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