それは私と同じ桜色






春色チェリーブロッサム









季節が冬から春に移り変わり暖かくなってきた。窓の外では元気よく小鳥達がさえずり小さな子供達が大勢で遊んでいる姿も多く見るようになった。春休みという事もあり外へ出かける人で道が溢れている。そんな光景を部屋の中で見ながら私は一つ溜息を付く。理由というものは無いのだが、強いて上げるならば突然会社から休暇を頂いた事。とでも言おうか。社員には珍しく今まで休暇をとったことが無いのは私だけの様で、あの温厚な社長から電話が来たときには正直焦った。アモダ社長は何時もの様に笑い休暇をくれた。休みを貰えるのは嬉しい事なのだが一体何をすればいいのだろう、そう思ってしまう自分がいるのだ。

「仕事命の人間は休みの過し方を知らないって言うよな」ふと前に誰かにそう言われたのを思い出す。あれは絶対私を指しているのだと改めて思った。別に仕事命という訳でも無いのだが、休みに何をすればいいか分からないのだ。なら仕事に行っている方がやる事があって助かるし時間も潰せる。
これと言って趣味も無い訳だから暇なのだ。セラの所に行こうかと思ったがせっかくのアイツとの二人きりを邪魔する訳にもいかない。テレビを眺めても特に面白い番組がある訳でもない。
ふと時計に目を向ければお昼になっている事に気がつく。まだそんな時間か、窓から離れてキッチンに向かい冷蔵庫を開ける。中は殆ど空に近く、買い物に行くのを忘れていたという事が頭を痛くさせる。外に出て買出しに行こう、鞄を持ち携帯電話を探せば着信が入っている事が目に入る。確認してみればディスプレイには彼の名前が出る。どうしたのだろう、そんな疑問を浮かべながら電話をしてみる。

『あ、ライトニング?』

「どうした電話なんかして」

『いや昼休みかなって思ってさ、一緒にお昼なんてどう?』

「あぁ、構わないが」

『じゃ、いつもの所で待ってるから』そう言い終わると向こうから電話を切られる。少しは暇を潰す事が出来そうである。相手を待たしてはいけないと思い急いで部屋を出る事にした。
此処からいつもの場所へは20分と掛かる。会社からだと5分足らずだ、やはり急いだ方がいいと思い普段使わないバスを利用する事にした。バス亭には丁度停車しておりこれなら待たせずに住むだろう。
バスに揺られ5分足らずで目的地の直ぐ近くに降りることが出来た。いつもの場所に向かえば腕時計を見詰めている彼の姿が映る。私が彼の名前を呼べば気がついた様で片手を上げて微笑した。

「…待ったか?」

「何時も通り。じゃ、行こうか」

片手を差し出す彼に動きが止まる。彼が片手を差し出す時は手を繋ごうというサインである。此方としては、恥ずかしい。控えめに手を差し出せばがっちり掴まれてしまい嬉しそう笑みを浮べる彼の姿が見える。…これは恥ずかしいものではない、そう言い聞かせ彼に付いて行く様に歩き出す。時折彼が何かを話しているのだが全く耳に入って来なかった。
彼に案内されてやって来たお店は都会には珍しい和を取り入れたお店である。外は日本という異国の家の造りで珍しい木や花が出迎えてくれる。中に入れば綺麗な女性が出てきた。確か着物というやつだろう、それが凄く似合っている。中は賑わっていてさすがに席が空いていないと思ったのだがどうやら中だけではないらしい。「ごゆっくり」女性のそんな声が聞こえた気がする。店の奥にあるテラスへと案内された私はその景色に声が出なかった。庭園というもの池があり桃色の花を咲かせた木々が沢山ありとても綺麗である。

「綺麗だな」

後から来た彼がそう言う。あぁ、本当に綺麗だ。あまりの光景に見惚れてしまう、初めてだからなのかもしれないが。

「これは、何ていう木なんだ?」

「桜。っていうらしい」

先に席に座る彼がそう言い私も席に着く事にする。彼が説明する限りではこの木は日本にしか無くこのお店の店長が此方に持って来たらしい。未だにそれに見惚れている私に彼がクスリと笑う。

「ライトニングに見せたかったんだ。」

「私に?」

「ライトニングの髪と一緒」

そう言われ始めて気づかされる。

「…ありがとう」

なんだか嬉しくなってしまう、彼も忙しいというのに私の事を考えてくれているなんて。
たまには彼と過す。なんて事を考えた方が良さそうである。自分だけ幸せな気持ちではずるい気がして今度は彼を驚かせてやろう、そんな事を考えてしまう。きっと彼は喜んでくれるだろうか。今から楽しみで仕方ない。
メニューを見せてくる彼に嘘でも驚いてほしいと思いつつ指でメニューに書かれた文字を辿る私であった。



―――――――
久々でしかも不完全燃焼(泣)
どうしてもライトさんでやりたかった桜ネタ

なんか、普通に東京に住んでいるのが考えられなくて別の国に住んでるって事にした訳で
いや、なんか普通に考えられなかった←
だってヴァニラやファングが東京に住んでると一緒ですよ(オイ

現代設定でもこれぐらいかな…とかなんとか
さすがに日本って感じじゃないんです個人的には

2010.3.30





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