愛はあっても栄養価ゼロ






お粥









「ラーイートぉ!!」

来たか
いや、正確に言うならば来てしまった。と言うべきか

ライトニングはそんな事を思いながらも自室にあるベッドから身体を起こし部屋を出る事にする。
するとそこには恐らく彼女を探しているであろうファングの姿があった。リビングやキッチン、机の下などくまなく見ている
。 いくらなんでも机の下にはいない
一人冷ややかな目で彼女を見ていればそれに気がついたのかファングはライトニングの目の前まで迫り両手に持っている白いビニール袋を差し出す。

「見舞いに来てやったぜ」

その言葉を聞いてかは知らないが咳が出てしまう。
我ながら弱いなと思うライトニング
だがファングは軽い咳だけで動揺する始末である。

熱は無いか?喉は痛いか?そう訊きながらも迫ってくるのは何なのだろうかとついつい眉間に皺を寄せてしまうライトニングは大丈夫だと一言言ってやるのだが当然彼女の異常な心配性は納得する事は無くライトニングは自室へ追いやり自分はキッチンへと行ってしまう。

事の発端は私が風邪で寝込んだ所為である。
しかしそれを知るのは妹であるセラだけ
何故彼女がそれを何処で知ったのかは知らないが厄介な事になった
。 あの時袋の中身をちらりと見たのだが、とんでもなくやばそうな食材が入っていた様な気がする。
風邪を引いたら定番といえばお粥だがとても危ないものを作りそうで正直怖い
もしちゃんとしたお粥が出てきたとしても塩分は高そうである。

突然悪寒がライトニングを襲う。

何を作るか心配でライトニングは足早にキッチンへ向かう
が、途中で引き返したのであった。

彼女の表情からみるみる血の気が薄れていく

キッチンの扉を少し開けた瞬間どうやらとてもやばそうなものをファングがお粥らしき黒くぶすぶすと煙を上げるものに入れているのを見てしまった様だ

もはやお粥では無い何かに更にやばそうなものを入れたのだ
きっと、死ぬ
もしかしたらあのがなちゅう(ネオチュー)を倒す方がまだマシである。

この時初めて自分は何かを食べて死ぬのだと覚悟するライトニングであった。



「ライトー、私特製のパルス印のお粥作ってやったぞ」

誰も頼んでいないのだが
一人そう思いながらもファングが作ったそのお粥の原形では無いお粥を見て気持ち悪くなる。

明らかにヤバイ
何か知らないが黒い煙を出してしかもぐつぐつと音を立てて、挙句の果てにはそれの中へ入れたスプーンが溶ける始末だ
それを見ているにも関わらずそれ専用のスプーンを何処からか出したファングがそれを掬い私の口まで運ぼうとする。

「ほら、あーん」

「あーん、じゃない!!お前っ、これを食べろと言うのか」

マジマジとそれを見た後ファングは苦笑いする。

「見た目は悪いけど大丈夫だ、本家の味はオチューのピーとか、トンベリのピーとか入っているけどこれには入ってねぇから」

「なんだそのピーは、本家はおかしいんじゃないか!?」

「いやでもよ…これ食べれば絶対治るんだよ意外と」

「…」


でもライトニングは見てしまったのだ
彼女がこのお粥の原形では無いお粥の中に、ラフレシアを丸々一匹入れた事を
確かその後には…思い出したくもない

抵抗すればする程、ファングはどうにかしても食べさせようとする。
看病してくれようとする彼女の気持ちは分かる
それだけは受け取っておくが絶対にそれを食べてはいけないと脳が危険信号を出している。

攻防戦をしている時であった

「あ、お姉ちゃん。それにファングさんまで」

「セ、セラ」

助かった
妹の登場にファングは一旦ライトニングから身を引くとセラに挨拶をする。するとその後ろからスノウが姿を現す。

「体調どう?今お粥作るから」

目の前でそんな会話をしているにも関わらずファングは何も言わないで黙っている。

「ちょっとスノウ借りるな」

「あ、はい」

セラが部屋を出る瞬間口を開くファング
にこりとしながら短く答えたセラはキッチンへと向かいスノウとすれ違いになる。

「ちょっと目瞑って口開けろスノウ」

「お、おう」

訳の分からないスノウはファングに言われた通り目を瞑り口を控えめに開ける。
そして有ろう事かファングは今までライトニングに食べさせようとしたあのお粥を取り出し、スノウの口の中へ無理矢理入れてしまったのだ。

勿論スノウは抵抗するがおぞましいであろう味に元気と力を取られ床に倒れてしまう。

食べさせられなくて良かったと安心するライトニングだが手足を痙攣させる倒れたスノウを見て自分もこうなっていたのだろうかと思い鳥肌が立つ
一方ファングといえば

倒れたスノウを見て怪訝な表情を浮かべている。

「何でスノウの奴倒れてんだ?」

それはお前の作ったお粥の所為だ!!
そう叫びたかったライトニングだが言葉は咳によって防がれてしまう。



その後スノウはといえば
五日間寝込んでしまったという話である。



――――――

もしもファングさんが料理が出来ない人だったら
と、考えてたらこんなネタが出来てしまった。

我が家のスノウは何かと酷い目にあってばっかりです。
ごめんねスノウ←



2010.3.15





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