本物の愛ならば、二人でそれを乗り越えよう






ブラッディーマリー








煩い、もう私に付き纏うな


そう彼女の口から出た突き放された言葉
何故彼女がこんな事を言うのか理解出来なかった
正確には理解したくなかった、のが正しいだろう
自分は彼女に何かしてしまったのだろうか
昨日までは一緒に側に居てくれて
彼女には珍しい笑みまで見せてくれたというのに

彼女に問えど返ってくる言葉は全て俺を突き放す様に冷たい言葉
背を向ける彼女の姿は何処か寂しげで、肩が小さく震えていた

様子がおかしいという事は直ぐに分かった
そっと彼女に近づき肩に手を軽く乗せれば驚いた様に此方を向いた
彼女の表情に俺は言葉が出なかった
悔しそうに唇を噛み、流れ出す涙を必死に我慢する彼女の姿に

俺は何も言わないまま彼女を優しく抱きしめた
最初彼女は抵抗したがそれは少しづつ無くなり、彼女は泣いた

「私は、悔しい…。セラを人質として取られ何も出来ない自分が無力で…」

「話してくれるか」

黙ったまま彼女は俺に身を委ねた
そして収まりきらない感情を吐き出すかの様に口を開く

「上官の誘いで私は見合いを断りきれなかった…。勿論お前が居ると相手に言ったが、奴は自分と結婚しなければセラに手を出すと言った」

冗談だと思っていたが、この間セラが事故に遭った
セラには怪我は無かったが一緒にいたスノウが庇い今意識不明の状態
そしてその事故を起こしたのが

「…その見合い相手か」

頷く彼女

なんて奴なのだろうか

「もう私はセラが悲しむ姿など見たくないんだ。ましてや自分が原因を作ったかと思うと…」

胸が、痛い

彼女の性格は分かっている
誰よりも妹思いで大切にしている
この世で唯一の宝物の様に

しかし彼女は自分でそれを傷つけたと思っている
精神的にはかなり傷ついているだろう

だからなのかもしれない
あんな言葉を言ったのは

これは脅しよりやばいレベルなのだろう
それに気づく事が出来なかった自分も自分だ
どれ程彼女が傷ついて自分を責めているのか

「だからノクト」

「…なんで言ってくれなかったんだ」

彼女の気持ちも分かる
巻き込みたくないとか言う筈だ
でもせめて理由ぐらいは聞きたかった

「…すまない」

「ライトニングにとって俺は、頼りない?」

目を見開く彼女は纏まらない言葉を口にする
そんな事などない
そう言いたいのだろうが言葉が上手く言えない様だ

「俺が、何とかする。絶対に…」

絶対に、許すわけにはいかない
彼女の妹を傷つけ
最愛の人まで傷つけた奴を



生かす訳にはいかない



心の中に生まれてくる感情
それが憎悪と気づいたのは


その男を殺す後であった



ライトニングから奴の居る場所を聞き彼女と別れた後
俺は真っ先にその男が居るという場所に行き



その後は覚えていない
気がつけば目の前には倒れた男
手には血が付着した刃物

あぁ、やってしまったのか

こんな事をしても彼女が喜ぶ筈などないのに
自分で彼女から離れた、そう言ってもおかしくないだろう





数日後
見合い相手が謎の死を遂げた事を知った私はふと彼の携帯へ連絡を入れる
しかし何度かけても彼は出ない

そして悟る
もしかしたら、と

彼が行きそうな場所を手当たり次第探したが結局見つからなかった
すっかり周りは暗くなり今日は諦めようか
そんな事を思っていた時だった

「ライトニング」

彼の声だった
目の前には悲しげな表情を浮かべている彼の姿があった

「ノクトどうしてなんだ」

あれは、お前がやった事なのか

私の言葉に黙ったまま目を伏せる彼に現実を受け止めようとしない自分がいた

「もう、会えないな」

口を開きあの時と同じ様に優しく私を包み込む彼

どうすればいいか分からなかった
彼は人間を一人殺してしまった
万が一、彼の証拠になるものがあればきっと彼は牢行きだ
罪を認めてほしいがその原因を作ってしまったのは紛れも無い私である

全ての原因は、私なんだ

「すまないノクト…」

謝罪の言葉しか出ない

「ライトニングは何も悪くない。悪いのはあの男と、感情を抑えきれなかった俺だ」

結果的には一生会えない道を選んでしまった
死ぬ事より辛い道を

彼から離れる事など考えた事など無い
どう彼が何を言おうと私の心は決まっていた

「私も、お前と逃げる。」

「…ライトニング」

止めても無駄だ

困った様に見詰めて来る彼

「俺、犯罪者だけど」

「それでもいい、私はお前と居たいんだ」

溜息を吐くと彼は何時もと同じ表情になり小さく微笑む

「愛している。絶対に守ってみせる」

「あぁ、私もだ」



そして二人は闇夜へと消えてしまう

今あの二人が何処にいるかなど


誰も知らない







―――――――
色々とゴメンナサイ
少し自重します。

いや、こんなのも有りかなーとか
愛に勝るものは無いとこの二人が証明してくれそうだな…とか


二人で夜逃げ
きっと何処かで幸せに暮らしていると信じます私は(笑)


2010.3.10





ブラウザを閉じてお戻りください