愛情一杯のお弁当。それを何時か






おかずはキミの愛情









太陽が沈みかけているのが視界の中に映る。それをぼんやりと眺めていれば次第に教室の中は静まり返り気が付いた時には教室には自分以外の生徒はいなくなっていた。
何故こんな時間まで居残りをしているかと誰かに問われれば「好き好んでいるだけ」と答える。けど本心は彼を待っている、そんな感じである。

窓の外を眺めればグラウンドで外部活が練習をしている。その一角の陸上部に彼の姿はあった。
後輩に指導しコーチに指導されストレッチやらで出しの練習など急がしそうに見える。
自分は部活なんて面倒なものには入っておらず何時も彼を待つばかり、借り家に帰ったところでどうせ彼も帰って来るのだからと最近では一緒に帰る事にしている。
「ライトニングがマネージャーしてくれるといいのにな」そんな彼の言葉をふと思い出す。
マネージャー、それもいいかもしれないなと小さく笑う。しかも彼は自分専用と言い出す訳で、お弁当を作ってくれたりタオルやスポーツドリンクを渡してくれたりと妄想めいた言葉を吐く。今の自分では考えられない事だがそう彼が言ったのはきっと、そうしてくれたらいいのにという思いでもあるのだろう。
そういう柄でもないし、とか言い訳をするのだがそれも悪くないなと思い始める自分もいる。

もし、自分が彼専用のマネージャーになると言い出したらどんな反応を見せてくれるのだろうか。

「ライトニング!!」
人目なんて気にせず私の姿を見つけた彼が遠くから手を振ってきた事に苦笑しながら手を振り返せば部員であろう生徒が何やら彼にちょっかいしてくるのが見えた。それに彼が止めろなど苦笑している事から彼女がどうとか言われたのだろう。

「下駄箱で待っててくれ」そういい残し彼はその生徒と共に練習へと戻って行く。
今日は終わるの早いな、そう呟きながら用意していた鞄を手に持ち静かに教室を出る事にした。

私が下駄箱に足を運んだ時には既に彼の姿はあった。

「お疲れ様。」
声をかければ何処か嬉しそうに振り向く。下駄箱からローファーを取り出し足にフィットさせれば静かに此方へと差し出される手。彼を見ればじっと此方を見るだけで私はそれに応じ彼の手に自分の手を絡ませた。
恥ずかしいのは昔だけ、今ではどうって事ない。

「さっきチャラ男に奴にからかわれた。」
「うん、見てた。」
「彼女さんとラブラブだねって、だからライトニングの分も込めて一発軽くどついでおいたから」
本当はそう言われて嬉しいくせに、とは敢えて言わないが。
微かに頬が緩んでいるのはその所為かもしれない。

「なぁノクト」
「ん?」
「もし私がマネージャーになるって言ったら、どうする?」
その言葉を聞き彼は立ち止まり驚いた様子で私を見た。本当に?とでも言っているかの様に。
しかし彼が口にした言葉は私の予想とは違うものであった。

「駄目だ、絶対に駄目。」
焦った様な、驚いた様な、忙しく表情が変わる彼。

「でも前そんな事言ってたよな?」
「まぁそうだけど…」
ぶつぶつと目を逸らしながら彼は珍しく眉を下げていた。
言ってみた此方としては少し残念である。彼が喜んでくれるのならと思ったのだが、もうそんな気は無い様である。

「だってな…マネージャーになったら…」未だに一人でぶつぶつ言っている彼の言葉に耳を立ててみればなんとなくではあるが彼が駄目と言う理由が分かったような気がした。

「…誰が部活のマネージャーになるって言った?」
「ライトニングだろ…?」
そんなつもりで言ったのではなかったが、そう伝わってしまったのは自分の言の足りなさだと知り改めて言い直す事にする。

「私はノクトだけのマネージャーって言ったつもりだったのだが」
「それなら仕方ない、諦めるか」そう付け足しかれの横をスタスタと通り過ぎる。さすがにこう言えば伝わるだろう、そして急に腕を後ろから引かれ何事かと思い振り向けば唇に触れる柔らかい感触に一瞬にして思考が停止した。
しかもまだ学校の中で、あぁ最悪だ、彼は本当に場所というものを考えてくれない。
腕は背中に回され身動きも出来ずしばらくされるがままになっていたがこれ以上は困ると判断し、彼の肩を軽く叩けば名残惜しそうに彼は離れると微笑する。

「…気は済んだか?」
「あまりにもライトニングが嬉しい事言うから、つい」
「っ…。ノクトがやってもいいと言うのなら私はマネージャーに…」
顔に熱が集中するのが分かり咄嗟に顔を背ける。
「料理に自信なんて無いし、けどノクトの為に頑張ってみようと思う。」
伝える事が出来たのはそのくらいだっただろうか、後の言葉は全て彼によって塞がれてしまう。

「ありがとう、ライトニング」
「…」
「これで部活中も一緒にいられるな」
「…あぁ」
手を繋ぎまた歩き出す。未だに彼の顔を見られないのは恥ずかしいだけ、それを知ってか知らずか彼はそれに触れず何やら楽しそうである。

「…明日土曜だが部活は」
「ん?午後まであるけど」
「なら、お弁当…おかずは何がいい?」
そこでやっと彼の顔を見る事が出来る。
何にしようかなと考え始める彼は私を見て言った。

「ライトニングの愛情がたっぷりなら何でもいいかな」
とりあえず一気に顔が熱くなったのは言うまでもない。
彼は平気でそんな事を言う、いい加減に慣れない自分も自分であるが一生慣れないと思う。

「…今から予定は?」
「無いけど」
「じゃぁスーパー行って二人でおかずを選ぼう」
「ライトニングがそれでいいなら」
急遽進路を変えてスーパーへと歩き出す。
おかずを何にしようか本気で考えている姿に彼が嬉しそうに笑ったのに彼女が気が付く事はなかった。



――――――

学生時代のパロというか何と言うか。
ウチの王子は運動部活で陸上部でも入っててもらっている感じでライトさんがそれを待っているみたいな。

自分専用のマネージャー=一緒にいたいだけ。
な、公式を持っている王子。好きだからこそ彼女と一緒にいたい的なノリで



2010.5.12





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