オーバーヒートブザーの鳴る原因について
2003/12/13


オーバーヒートの警告装置が働き、オーバーヒートのブザーが鳴ったり、
中速以上で失火(ムラ打ち)する原因の一つにシリンダーヘッド周辺の塩付きがあります。
このページではそれを中心に取り上げています。
ウォーターポンプに問題が無く、特に詰まりもないような場合で、30分以上とかの
長時間乗った時に警告装置が働く場合の原因の大半は、この多少の塩や水垢が
原因です。特に40馬力以上の船外機でシリンダーヘッドの上にさらにシリンダーヘッドカバー
があるタイプによく起る症状です。

写真はエンジン(クランクシリンダ)後方(点火プラグ側)から見た
シリンダヘッド分解写真です。
左:サーモスタットカバー 中央:シリンダーヘッドカバー  右:シリンダーヘッド
シリンダーヘッドカバーの一番上に取り付いてるのがサーモスタット
その下のスプリングの奥にあるのがプレッシャーバルブ






この写真中央のシリンダーヘッドカバー内面、右側のシリンダーヘッド内側、
1枚前の写真右側のシリンダーヘッド上面それぞれの冷却水通路、
及び写真は無いのですがシリンダーヘッドの合い面であるクランクシリンダー側の
冷却水通路等に多少の塩の塊とか粉吹き及び水垢が付着する事により
警告装置が働く場合があります。大抵30分以上走行して働く場合は、
これが原因の場合の他はインペラの羽根が少しだけ破損していたり、
インペラそのものに損傷は無いけれど回転方向に羽根の曲がりクセが強く
付いてる場合が考えられます。

こんな程度の塩とか水垢の付着が原因では無いのではと思う時も
過去にありましたが、ここを丁寧に掃除する事によって直ったケースは多々あります。
この程度なら清掃しても直らないのではと思っても意外と直るものです。


ヘッドカバーの上側から半分取り外してあるのがサーモスタット。
サーモスタットの役割はエンジンの冷却温度を極力一定に保つ役割をしており、
エンジン温度がある一定まで上がるまではサーモスタットの弁を閉じ、水の流れを
一部ストップし、冷却水温度を高めます。サーモスタットは温度により
弁が開く構造となっており、水温が上昇しサーモスタットの温度が65度前後
(機種により開く温度は違います)になると弁は開き一部遮断していた通路を開放します。
開放後は低速などの走行でエンジン温度が下がり水温も下がると、再び弁を閉じ
エンジン温度を上げます。この繰り返しでエンジンが丁度良い温度になるようにしています。
サーモスタットの点検はサーモスタットが開く温度より少し上の温度の温水に浸す等して
弁が規定量開き、温水から取り出し温度が下がった時に弁が閉じれば正常です。

サーモスタットの下のバルブはプレッシャーバルブで水圧が上がり、
水圧がバルブを押さえているスプリングの力より強くなるとバルブを開いて
圧力を逃がしています。このバルブは低馬力には私の知っている限りでは
付いていません。また、一部のエンジンにも付いていない場合があります。
バルブが付いている場所は115馬力とか200馬力などのV4・V6エンジンでは
シリンダーヘッド近辺でなく、左右のシリンダーヘッドに挟まれたエキゾーストマニホルド
の下側に付いています。黒いホースが付いており、この場合サーモスタットはここでなく
シリンダーヘッド上面に付いています。




写真中央の8ミリボルト数十本で取り付けてある
部品がエキゾーストマニホールドカバーで
この内側奥はシリンダーから排出された排気が通り、
その上側を排気を冷やす為の冷却水が流れています。
エンジン始動直後はサーモスタットが開くまではサーモスタットカバーと
このエキゾーストマニホールドは温度が徐々に上昇し、何とか指先で
触るのが我慢できる温度まで上がります。サーモスタットが開くと
触っても極端に熱く感じない温度まで両方ともなります。
この両方が高速走行後もそんなに温度が上がらない場合は
サーモスタットが故障して弁が開きっぱなしか取り外してある可能性が高いです。
オーバークール(過冷却)になってしまう為、燃焼効率が悪くなり
低速時にプラグが未燃焼ガスの多発でかぶりやすくなったり、その影響で
止まり易くなったりします。
逆にいつまでも熱く、手で触るに耐えれない温度まで上がる場合は
冷却水不足か通路の詰まり、サーモスタットが開かない等の原因が考えられます。

サーモスタットが開くまではアッパーケーシングから排気共に排出される冷却水は
手で触れないほど高温になりますが、サーモスタットが開くと
サーモスタットカバー・エキゾーストマニホールドカバーと同様に
手で触れるまで温度は下がります。サーモスタットは開いたり閉じたりの
繰り返しをしますので水温は上がったり下がったりするのが正常です。