メカニカルハンドルワイヤー塩付き修理
中央発條のメカニカル式ハンドルワイヤー塩付き固着及び作動が重い場合の整備の仕方。
後日、さらに細かい手順の追加写真を掲載予定。
2003/12/24


写真のボートはヤマハFR17Vで搭載船外機はヤマハ50DETOL。
まず、船外機とメカハンケーブル(メカニカルハンドル式ケーブル)を繋いでいる
ステアリングリンクロッドを取り外します。

ここの取り付けナットは通常のミリ工具の場合、あまり使用しない
15mmを使用しています。インチ工具の場合は9/16のサイズとなります。

左側のケーブルを固定しているネジをモンキーレンチ等を使って完全に緩めます。
次にナット側へ引き抜く訳ですが、この場合ハンドルを左に一杯切って
ワイヤーを縮めた方が抜き易くなります。
また、固着などで引き抜けない場合とか途中までワイヤー内部の芯だけ抜けて来て
しまう場合はナットの反対側のワーヤー先端をワイヤーの先端が潰れないように
ハンマー等で叩いて打ち抜いて下さい。
強く叩きすぎるとリンクロッドの入る穴が潰れたり、先端が広がって船外機側の
パイプ径より広くなってパイプを通らなくなってしまうので注意して下さい。
穴が潰れないように穴にリンクロッドを差し込んだ状態で
途中まで叩くのが無難です。

左手で持っているのは、船外機の中を通っているワイヤーと同じ物を
ワイヤーのナット付け根で切断した物です。


この部品は、これからの説明用にワイヤーの先端部分の取り付けナット箇所で
切断した物です。ハンドルを左に一杯切った場合、船外機のパイプの中では、
ほぼこの状態となっています。


ハンドルを左に切り、ワイヤーが一番縮んだ状態。




ワイヤーを右に切り始め、ワイヤーを伸ばし始めた状態。
ハンドルが重いとか回らない原因の多くは、右のステンレスシャフトと船外機の
このシャフトの通る穴の中との関係が多く、船外機側のパイプが錆びてシャフトの
動きが悪くなるのが原因です。この場合、船外機側のパイプを
棒状のワイヤーブラシとか棒ヤスリ等を使用して錆を取れば大抵なおります。
ただし、ハンドルそのものとエンジンの舵に原因が無いのが前提となります。
組付け時には組み付け時には船外機側のパイプ内部にはグリスを
塗って錆止めと潤滑をして下さい。




さらに引き抜くとこのようになります。
写真中央の細いワイヤーの右側先端は右のステンレスパイプと
繋がっており、反対側はステアリングボックス(ハンドルのギヤボックス)
の内部に接続されています。

右のステンレスパイプの内部とその中を通る左側の鉄製シャフトとが
鉄製シャフトの錆付等が原因で固着したり動きが重くなったりする場合もあります。
この場合は鉄製シャフトの表面をペーパーやヤスリで錆を落として下さい。
また、ここで鉄製のシャフトが抜けない場合は、ステンレスシャフトの外側全体を
酸素などで赤くなる寸前まで温めて錆を焼くと同時にステンレスシャフト側を
膨張する事により抜けやすくなります。ただしあぶり方によっては
ステンレスシャフトが熱で変形して曲がってしまい、船外機側のパイプの中を
通らなくなってしまうので注意が必要です。
尚、ステンレスシャフトを温めても抜けない場合は、
芯であるワイヤーと鉄製シャフトの内側とで固着してある場合があるので
かなり強く温める必要がありますが、ステンレスシャフトの変形する
可能性はかなり高くなるので、ワイヤーの交換をお勧め致します。

尚、組み立て時には各部防錆と潤滑のためにグリスを塗布して下さい。
また、錆が再発する可能性が高いので、上記の方法で修理しても
防錆処理が上手く行われていなかったりすると1年以内に再度ハンドルが重くなる
可能性はあります。船外機内部とその中を通るステンレスシャフトとが原因でなく、
ハンドル側にも問題が無い場合はステアリングワイヤーを新品に交換した方が無難です。


下の棒の左側のワイヤーは上のパイプの中を通り、上のパイプは
下のパイプの中を通っています。したがって上のパイプの中と外を下の
パイプが通ってる事になります。(1枚前の写真参考)
ワイヤーの反対側ははハンドル側のギヤボックに入っており、
ハンドルの回転方向を上の写真の下側のステンレスのロッド(パイプ)に
往復運動に変換して伝えています。

ごく稀にこのワイヤーが切れて操船不能になる事があります。
ハンドルを回しても舵が切れない場合で、リンクロッドも外れていない場合は、
このワイヤー部分が切れたかハンドルギヤボックス内部で
損傷があり、ハンドルの回転力をワイヤーに伝えられないか、
もしくはハンドルを固定しているキー等が破損してハンドルそんものが
空回りしてしまう場合などが考えられます。