90Aインペラ交換法
2003/12/24内容追加


水圧を利用したスピードメーターへ水圧を送るためのホースを
ホースクリップ(インシュロック)を片側だけ切断し、ホースを接続箇所で取り外します。
プライヤー(上側の挟んでる銀色の工具)とラジオペンチ(下側の赤い柄の工具)
の間にあるのがインシュロックで、ラジオペンチの下側のホースには
インシュロックを取り外した跡がついています。
ホースを左右に回し、ホースと接続部品との隙間にラジオペンチを
差し込みながらホースを引き抜くと取り外し易いです。


上側のホースの下に付いてるのは両方のホースの接続部品でプラスチックで出来ています。
ちなみにホース右側に見えるデコボコしたシャフトがクラッチシャフトで、
本来はデコボコしていないのが正常です。


プラスチックで出来ている黒色のメクラ蓋(左手に持っています)を
トリムタブ(兼・防食亜鉛=アノード)を止めているボルトを緩めます。
工具にはソケットとの差し込み角が9.5sqのラチェットレンチが便利です。
ソケットは12mmを使用します。差し込み角12.7sqのソケットでは
ボルト穴に入りません。6.35sqでも使えますが
ボルトが緩みにくい時は強度的に問題が出てきます。


トリムタブを取り外すとロワーケーシング(又はロワーケース)を
取り付けてある5本のボルトの内の1本がこの中にありますので
同じく12mmのソケットを使用して取り外して下さい。



このボルトを使用しています。
ここのボルトは塩分の強い海上係留船で数年以上一度も分解せずに
使用しているエンジンの場合、塩が固着して緩まない場合があります。
ネジ部よりネジ部の下の方の径が細いので
この細い間に塩が溜まると、トリムタブは取れてもネジが取れない
場合が時々あります。これは固形化した塩がネジ部下で邪魔をして
ボルトのネジ部が引っかかり抜けなくなるからです。
軽度の場合は下から叩けば取れるのですが無理に叩くと叩いた事でネジ部の頭が
潰れて広くなり余計に抜け難くなります。当店の場合は酸素などで
周りを暖め塩を焦がして取るようにしていますが、かなり時間がかかる場合が多いです。
このやり方の場合、エンジン表面を焼くので塗装は剥がれます。
また、暖め過ぎるとアルミが解けてしまう場合もあります。


ロワーケーシング取り付けボルト5本の内、残りの4本は写真の位置に左右2本づつあります。
このボルトの場合は差し込み角12ミリでなく14ミリのメガネレンチを使用します。
一部肉厚の厚いメガネレンチではロワーケースに工具が当たり使用出来ない場合があります。
その場合は工具を削るかKTCとかの有名工具メーカーのメガネレントを使用して貰えれば、
大抵使用出来ます。


ボルトを全て取り外してもロワーケースが取れない場合は
ロワーケースに傷が付かないようにプラスチック製ハンマーで叩くか
写真のようにボロ切れや木切れを当てて鉄製ハンマーで叩いて下さい。
この時、急に脱落すると危険ですので写真のようにボルトを1本か2本少しネジ込んで
外れた時に途中で止まるようにして下さい。ちなみに位置合わせのため合い面には
2箇所ノックピンがあります。
途中から抜けにくい場合は、大抵2個のドライバーとかを使用して、こじたりすれば外れます。


左のホースはスピードメーターへ水圧を送る為のホースです。
その右の黄色い小さ目の部品は下の写真左側の切り込みの中に入る部品で
クラッチレバーの振れ止めの役目をしています。
中央の黄色い部品がウォーターポンプ(冷却水ポンプ)です。
ポンプで吸い上げた水は、ポンプ右上の黒い部品の穴の中から
下の写真の右側のウォーターパイプを通ってエンジンに供給されます。
ウォーターパイプはこの部分に差し込まれています。
さらに右の黒く汚れた部分はエンジンの排気と冷却水が通り、
共にプロペラ中心から排出されます。


左側のシャフトはシフトロッド(クラッチシャフト)で左右に回転してクラッチを切り替えています。
中央下から上に向かってるシャフトはドライブシャフトでエンジンからの回転を
ロワーケース下側にあるギヤケース内のプロペラシャフトに伝えています。
この先端とエンジンはスプライン(縦溝)で嵌め合っています。
右側のパイプはウォーターパイプで冷却水ポンプから汲み上げた水は
このパイプを通り、エンジンの中へと行きます。
インペラが破損した場合、時々このパイプの中で破片が詰まる場合があります。
破片が取れない場合、エンジンブロックを取り外してこのパイプの中を清掃する必要があります。


左に見えるシャフトがクラッチシャフトで、その上下の溝に2枚上の写真で説明しました
クラッチの振れ止め部分が入ります。

中央のウォーターパイプは新品時、表面は金色に光りつるつるしていますが、
上の写真では塩分が固着しデコボコしています。
この状態でロワーケースを組み付けるとパイプとウォーターポンプ
接続面に隙間が出来て冷却水が逃げたりエアーを吸って十分な冷却水が
エンジンに行かなくなる可能性があります。
その為、組み立て時にはこのチューブをポンプに差し込まれる部分より少し多めに
ペーパー等で削って綺麗にして下さい。

右側の丸い穴はマフラーからの排気と冷却水が排出され、
プロペラ中心から外へ排出されます。



写真中央のスプライン(溝)の切ってある棒がクラッチで
左右に回転させることにより前進・中立・後進を切り替えています。
低馬力の船外機では回転でなく違う機構の上下運動で切り替えています。
30馬力ウォーターポンプ交換にその方式は掲載されています。


ウォーターポンプを分解したところです。
海で使用のエンジンではポンプ取り付けボルトは海水に浸かる時間が
長いため、塩で固着して分解困難な場合が多々あります。
ここのボルトを含め、ロワーケース取り付けボルトなど、
ロワーケースを定期的に分解してボルトにグリスを塗って固着を
予防した方が無難です。3年〜5年に一度は行いたいものです。

インペラ上のインサートカートリッジ(ステンレス製のカップ)や
下側のアウタープレートカートリッジ(ステンレス製の板)のインペラが
当たる部分が減ってる場合はカートリッジを交換する必要があります。

アウタープレートカートリッジの下側に破損したインペラの破片とか
塩の塊があるといけないので、出来ればアウタープレートカートリッジを
取り外して点検して下さい。分解はインペラとインペラを取り外すと現れるインペラ
空回り防止用のインペラキーを取り外し、アウタープレートカートリッジを
マイナスドライバー等をプレートの下に差し込んだりして
取り外して下さい。ただし無理に行うとプレートが変形したり
下側の部品を傷めてしまいます。尚、ガスケットにより引っ付いている
場合が多いので多少力を入れないと取れない場合があります。
ガスケット類は出来れば全て新品に交換して下さい。
尚、インペラキーは、叩いたりこじたりしないと取れない場合が有り、
簡単に取り外し出来ない場合が多いです。

ポンプ右上のウォーターチューブの入る部分で、ステンレスビスが2本付いた
部品のすぐ下の円筒形のゴムの部品がウォーターチューブとポンプとの
接続部分のシールを行っています。この部品(ダンパ、ウォーターシール)も交換して下さい。


インペラが抜けない場合はインペラの上側のシャフトをペーパー等で
綺麗にした後、少し油を塗ってすべりを良くしてから
マイナスドライバー等で下からこじて上に持ち上げて下さい。
ドライブシャフトを回しながら、色んな箇所でこじて均等に持ち上げて下さい。

写真では上から来てるクラッチシャフトが写ってますが、
実際にはロワーケースを取り外すと、このシャフトは相手側に
残ります。今回は接続が分かるように取り外したシャフトを上に沿えてあります。

組み立て時、クラッチ接続はエンジン側のクラッチをニュートラルにし、
ロワーケース側のクラッチシャフトを回転させ、プロペラシャフトが
左右どちらにスムーズに回転するニュートラル位置に合わせてから組み付けます。




クラッチはエンジン側とロワー側とではこの写真のようにスプラインに差し込んであるだけです。
このスプラインの嵌め合い位置が一山でも違うと正常なクラッチ操作が出来ません。
また、ロワーケース組み立て時は、クラッチのスプラインと下の写真に出てくるドライブシャフトの
スプラインとの2箇所をエンジン側とロワーケース側で合わせなければならないので
合わせに手間取る場合があります。

この写真のエンジン側から来ているクラッチシャフトですが、錆びて部分的に細くなっています。
この状態で使用しているとクラッチシャフトが捻れてきてクラッチの入る位置が変わってしまい、
前進に入れてもニュートラルになるとか、逆に後進に入れてニュートラルになるというような
事になってしまい、最後には捻じ切れてしまうので、クラッチ操作不能となります。
確認してこの写真のように細くなっていれば早期に交換が必要です。
交換にはエンジンブロック(クランクシリンダ)を降ろす必要が有ります。




ドライブシャフトの先端です。
スプラインの下側はエンジンクランクケース下側のオイルシールと接触する為、
傷などを付けないようにして下さい。組み立て時はこの箇所にもグリスまたはオイルを塗布して下さい。
機種により写真のようにくびれてなく、太さが一緒のもあります。




左は新品のインペラ、右は今回交換したインペラで羽が3枚破損しています。

写真では分かり難いかも知れませんが左写真の新品のインペラ中心上側に
キー溝があります。このキー溝が見える方を下にして組み付けます。
右の古いインペラは左と逆の面を向いており、中を覗けばキー溝は見えるのですが
真上からは見えません。この向きを写真のように上にして組み付けます。
インペラの回転方向は一部例外を除き大半のエンジンが右回転です。
ポンプカバー組み付け時にはエンジン回転方向である右回転に
プロペラシャフトを回しながら組み付けて下さい。
尚、初期潤滑の為、組付け時には必ずインペラとインペラの接触する部分の
プレート等にはグリスを塗布して下さい。

インペラの材質はゴムですので、水の無い状態でエンジンを回すと
数十秒でゴムが溶けて破損してしまいます。




今回交換したクラッチシャフトです。
特に写真一番上の部分が細くなっています。
この部分はロワー分解時にスピードメーターのホースを外した位置と
ほぼ同じです。その位置から覗いて点検すると良いでしょう。




エンジンブロック(クランクシリンダ)をアッパーケーシングから取り外ずし、
エンジン下から撮影しました。中央右側にドライブシャフトが入ります。
中央左側の黒く長方形になってる箇所が排気ポートで、その中でアルミ色で見えるのが
ピストンです。中央下の指で指してる穴がウォーターポンプから
ウォーターチューブを通って上がってきた冷却水のエンジンブロック入り口です。




前の写真のエンジンブロックと合い面になるアッパーケーシング側です。
中央下側がウォーターポンプからの冷却水通路。
その右上の長方形が排気ポートで、ここから先はマフラーとなります。




前の写真の冷却水通路の拡大。
丸い穴にはウォーターチューブと繋がっています。
その穴のゴムの破片が今回修理したエンジンのインペラの破片です。
破片は、この箇所と先程の丸い穴の途中であるウォーターチューブの中央付近、
それとウォーターポンプ内部の3箇所に各1個づつあり、前部発見できました。




本題とは外れますが参考までに、ロワーケーシングからの
ドライブシャフトが差し込まれるクランク下側にあるオイルシールハウジングを
取り外した写真です。クランクシャフト穴の内部には写真では
分かり難いかも知れませんがスプライン(溝)が切ってあります。




一番上のオイルシールを外し、その下のオイルシールはそのまま残した写真です。
下のオイルシールが痛んでたため下側オイルシール周辺は汚れています。
この2枚のオイルシールのうち上側のオイルシールが浮き上がったり傷むと低速でムラ打ちしたり
長期間使用しなかった場合、海水がオイルシール間に溜まり、
その塩分が固形化してドライブシャフトが回らなくなったりする場合もごく稀に起ります。
40馬力(特に40H)では、上側のオイルシールが浮き上がるのが時々あり、
少し浮き上がてるだけで、低速不調となり、アイドリング時にムラ打ちばかりしてました。
この40馬力(40H)で低速時にムラ打ちをする場合、キャブをO/Hしても直らない場合は
大抵ここのオイルシールが浮き上がっており交換すると直ります

上側のオイルシール内側にはクランクの下側が接触し、下側のオイルシールには
ドライブシャフト先端のスプライン下側のスプラインの切ってない箇所が接触しています
オイルシールハウジング右下にある穴は、その右下外側にある細いパイプに繋がっており、
クランク下側(上側オイルシールの上)に溜まった未燃焼ガス等をクランクケース内部に
戻す為の通路です。