男木島洞窟探検調査に参加してみて

工学部信頼性情報システム工学科一年 齋藤靖


 5月9日(土)その日は、天が我々の探検を祝福しているかのように晴れ渡っていた。男木島に向かうフェリーの中で我々探検隊は島に到着してからの作業手順を確認しあった。みんな冒険への期待に胸をときめかせながらも、マスコミ取材陣も同行ということで何か使命のようなものを感じて緊張気味であった
少し船体が揺れたと思ったらフェリーはいつしか男木島港に着岸していた。島に降り立つや否や地元観光協会の方々の手厚い歓迎を受けた。我々探検隊は港の岸壁でおいて装置の公開を兼ねたリハーサル実験を行った。これから登るコミ山は海抜213mの山であり、山頂で装置が壊れていることに気づいても直す手段がないからである。装置が壊れていないのを確認し、いよいよジイの穴に向かうこととなった。 ジイの穴に向かう道は思っていたよりも険しかった。我々の実験道具はそれ程重くなかったのでよかったが、TV局の人たちは重い機材を持っていたためかなり苦労しているように思われた。穴に向かう途中の少しひらけた場所で休憩を取ったが、そこから見渡せる光景に我々は唖然とした。そこには瀬戸内海が青い輝きを発しながら広がっていたのだ。この光景を目の当たりにしたときに、私には岡本先生の考えどおりジイの穴は要塞で日夜この瀬戸内海を見張っていたのではないのかと思えた。このすばらしい光景を見た後我々は、再びジイの穴を目指して歩き出した。
休憩場所から5分ほどでジイの穴に到着した。まず数人が穴に入り中の状態を確認した後で、実験器材を穴の中に入れた。穴の中は冷気と湿気で満ちており長袖を要するほどひんやりとしていた。おびただしい数の落岩によって半ば塞がった入り口から4−5m下って入ると、そこにはかなり広い空間があり、そこから横の方に問題の池に通じる横道があった。この横道に入る通路の天井はかなり低く何人もが頭をぶつけていたようだ(私もその中の一人である)。そして15mも進むと池にたどり着いた。池の水に触ってみると驚くべき冷たさであった。この時、岡本先生が前回ここを訪れたときよりも水位が上がっていることに気づき我々は期待を大きくした。我々探検隊は、手はず通りに装置を組み立ていよいよ装置をセットすることとなった。冷たい水の中に岡本先生が入り水位検知器のスタンドを立てる作業をしている最中に誰もが予想もしていなかった事が起こった。なんと池の水位がみるみるうちに下がっていくのだ。これには岡本先生を始めその場に居合わせたTV局や観光協会の人たちや探検隊のメンバーも驚いた。みな興奮気味になり早くも実験は成功したようなものと、探検隊のメンバーは喜んだ。
装置のセットが無事終了し、洞窟前で昼食をとっているとき地元の人が33番まである男木島 郷土唱歌を披露してくれた。昼食後、我々はもう一度穴に入りセットの確認をして下山する事となった。
後日岡本先生がレコーダーを回収してきて実験が失敗した事を知らされたが、池の水位が変化した事は事実であり岡本先生と我々探検隊は、今回の失敗にひるむことなく、実験システムを改良して再度男木島のジイの穴に挑戦する事を心に誓った。
こうして私にとって初めての探検隊の活動は終わった訳だが、「探検」というものに「科学技術」を取り入れた岡本先生との探検はとても面白く今後の活動にもぜひ参加したいと思っている。