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はじめに/赤川鉄橋


鉄道を撮る

 2ヶ月に1冊のペースで出版していたコスミック出版の「鉄道を撮る」という一連のムック。
 かの駄菓子さんと一緒に、ほぼ毎号、写真と原稿を掲載していたが、残念ながら昨年(2013年)5月1日発行の第18巻をもって休刊。当初は月刊誌を目指しながら、それも夢と潰えてしまった。ただ、2ヶ月ごとだったからこそ、私も何とか続けられたわけで、月刊になっていたら、とてもついていけなかったことだろう。
 駄菓子さんと組んだのは、「ぶらっと撮り鉄」というシリーズ。毎回テーマを決めて、首都圏と関西圏を対比するという企画であった。もちろん駄菓子さんが首都圏担当で、関西圏が私という分担だ。「ぶらっと撮り鉄」という題名自体も気に入って、休刊まで都合15回の連載となったのである。
 もっとも実体は、「ぶらっと」という語感とはほど遠く、毎回、締め切りに追われるように撮影に出かけては、ぎりぎりに原稿を入れるというパターンの連続であった。でも、このところローカル私鉄の撮り鉄に偏っていたので、「ぶらっと撮り鉄」で、JRや大手私鉄を撮りに行く機会を与えられて、本当によかったと思っている。

 城東貨物線の淀川橋梁、通称赤川鉄橋も、そのひとつ。複線用の橋梁の片側が単線の貨物線で、空いた片側が人道橋に供されていることで有名な橋だ。いつか撮りに行こうと思いながら、なかなか腰があがらなかったのだが、「ぶらっと撮り鉄」で背中を押してもらったことになる。
 何度か通ったものの、そのときの写真は、ほとんど「鉄道を撮る」に掲載してしまった。そもそも現地をご存じの方はおわかりだと思うが、トラス橋で列車と人道橋を合わせて撮ろうとしたら、自ずとアングルは限られてしまうのだ。その中で、唯一、未発表と言えるのが、下の写真。
 ちょうど通りがかったおばちゃんが、EF81の機関士に手を振っている。わかりにくいが、実は機関士もちゃんと手を挙げて応えているのである。タイミングは完璧だったのだが、いかんせん機関士の姿がはっきり見えない。手を振るおばちゃんが持っているのは、折りたたみの傘。かように天候も優れず、発色もいまいち。
 ということで、「鉄道を撮る」への掲載は見送ったのであった。


赤川鉄橋shadowshadow


 そんな赤川鉄橋も、複線化工事のため、昨年10月末で人道橋は閉鎖されてしまった。
 複線化は当初からの計画とはいえ、人道橋がなくなってしまったのはやはりさみしい。通行する人も多かったのに代替の橋はつくられず、淀川を渡るには1キロくらい遠回りをしなくてはいけないそうだ。
 非日常というか、ちょっとイレギュラーな光景がまたひとつ姿を消してしまった。

 「こぼれ話」の初っ端から別れ話になってしまったが、「鉄道を撮る」休刊と合わせ、惜別の念を込めて取り上げた次第。
 これから数回にわたり「鉄道を撮る」にまつわる事柄を「こぼれ話」として記していくつもりだ。
 それにしても「よもやま話」に「こぼれ話」というネーミングのセンスに自分でも呆れてしまうが、それは、いつものこととお許しを。

【2014年9月記】

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