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余韻

 しつこくCoccoの話は続く。
 映画を観た翌日、注文していた『Cocco Inspired movies』のDVDが届いた。昨年の東日本大震災の救援企画として発売されたもので、作品自体は映画『KOTOKO』より前のはずだ。それもあって、この原稿を書き終えるまでは観ないことにした。観てしまうと、『KOTOKO』の印象と混濁して、原稿の収拾がつかなくなりそうに思えたのだ。
 届いたDVDには、Cocco直筆というトレードマークが同封されていた。『Cocco』の綴りを同心円に重ねていったものだが、よく見ると、いちばん外側の円が微妙にずれて、最後はちょっと強引に閉じてある。

coccoマーク


 それを見て、映画のワンシーンを思い出してしまった。
 不動産屋に勤める琴子が、広告の活字を目立たせるため、手作業でアンダーラインを引くシーンだ・・・言葉では何のことかわかりくいなあ、例えば「日当り良好」という謳い文句を、手書きのアンダーラインで強調した広告を見たことがあるだろう。それである。
 調子がいいときの琴子は、さっとアンダーラインを引けるのに、不安定になると、時間もかかって、線もよれよれになってしまう。

 このトレードマークを書いたときのCoccoは、どんな様子だったのだろう。
 不安定だったというより、何枚も書き続けて、疲れていたのかも知れない。
 「あら、ちょっとずれちゃったわ、まあいいか」とつぶやくCoccoの姿を思い描く。
 ピークアウトしたはずが、まだCoccoにどっぶり浸かっている。



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