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(北勢線、内部・八王子線)


 少々焦ってきていた。
 そりゃそうだろう、2ヶ月近くもページの更新をしていないんだから。
 いやあ、本当に忙しかった。煮詰まるというのはこういうことなのか、と改めて痛感させられる日々であった。というのも・・・・・

 ん?違う違う、ページ更新が遅れて焦っていたのは確かだが、そのことは別の機会に書くとして、ここで焦っていたのは、今から20数年前、昭和51年(1976年)当時の私である。

 明延鉱山の一円電車の帰り、急に決めた近鉄ナロー行き。関西線まわりで四日市に行くことにして、大阪駅で四日市駅前の宿に片っ端に電話したのだが、すべて断られていたのである。
 結局、四日市に着いて、もう一度電話してみると「今すぐ来られるなら」ということであった。今から思えば、当日の宿など電話するより、飛びこみで行けば何とかなったはずだ。当時、高校生だった私は、まだそこまで旅慣れてはいなかった。

近鉄北勢線 路線図
地図


近鉄内部・八王子線 路線図
地図


 と、例によって明確な記憶はここまで(^^;)
 以後、あいまいな記憶に基づくので、誤りなどはご容赦を。
 翌朝、前日の雨を引きずった怪しい雲行きの中、近鉄四日市駅まで歩く。近鉄四日市駅は確か高架になっていたように思う。ただ、そんな中で、内部・八王子線の電車たちは、かわいらしい朝顔カプラーをつけて、私鉄日本一の近鉄らしからぬ、軽便鉄道の匂いをぷんぷん放っていた。
 それもそのはず、元をたどれば内部・八王子線は、大正元年(1912年)に開業した軽便鉄道の三重軌道がルーツなのである。
 一方の北勢線も、やはり大正3年(1914年)開業の軽便鉄道、北勢鉄道がルーツである。

 内部・八王子線で、さらに軽便鉄道らしさを感じさせたのは、4両編成の電車の構成である。1M3T、何て言うより機関車が客車を牽引するように、1両の電動車が3両の付随車を引いていたのだ。だから、ちゃんと終点では電動車を付け替えていた・・・
 という印象が強すぎて、すべての編成がそうだったと思い込んでいたが、久しぶりに写真を現像してみると、両端に電動車を付けている編成も多いようだ。もちろん、そのほうが終点で簡単に折り返せるので、はるかに合理的だ。朝のラッシュ時は、電動車の数が足りなくなるので、やむなく1M3Tとしていたのか、そのへんの事情はわからない。

右)1M3Tがゆく(中央の立木はご愛嬌)
下)朝顔カプラー              

朝顔カプラー
1M3Tがゆく

 何はともあれ、近鉄四日市から5.7Kmの内部線の終点である内部駅まで一旦行き、折り返して日永で下車。ここからは八王子線が分岐している。と言っても、八王子線は、1.3Km先のひとつ目の駅、西日野でもう終点だ。何とも中途半端なのは、八王子線という名称どおり、元々は日永〜伊勢八王子間2.9Kmあった路線を、昭和51年(1976年)4月に一部廃止してしまったからだ。
 昭和51年4月と言えば、ちょうど訪れた時期である。それなら、ぎりぎり間に合ったのかというと、実は廃止区間は、前々年の水害で休止され、実質的には既に廃止状態だったのである。
 結局、日永駅周辺で数本の電車を撮り、西日野には行かないまま近鉄四日市に戻ってしまったように記憶している。
阿下喜駅
阿下喜駅

 近鉄四日市からは近鉄名古屋線で、同じ近鉄ナローの北勢線に乗るべく桑名に向かう。北勢線は、桑名駅に隣接する西桑名が始発駅だ。
 総延長は20.5Km(現在の営業キロは20.4Km)と内部・八王子線の計7.0Kmよりはるかに長い。電車のカプラーも自動連結器になっていて、近代化も進んでいるようだった。ただ、電動車が2〜3両の付随車を引いているのは同じであった。
 時間もなくなってきたので、北勢線は途中下車もせず、終点阿下喜まで往復しただけになってしまった。おかげで沿線の風景の記憶は、ほとんど残っていない。
 西桑名に戻って、車庫の写真を少し撮らせてもらって、早々に引き上げる。日はまだ高いのだが、急な予定変更で新幹線に乗る金もない。急がないと、東京まで鈍行で帰れないという情けない事情なのであった。

 その後、近鉄ナローへは、『秋の旅行 南紀の旅』で触れたように、4年後に再訪した。
 でも、『軽便鉄道の匂いがぷんぷん』というイメージは消えていたのでがっかりして、また早々に引き上げてしまったのである。
 そして今、改めて当時を思い起こしながら原稿を書いていると、軽便鉄道らしさへのこだわりより、なつかしさのほうが勝ってしまい、すべて新型車両になっている近鉄ナローであっても、もう一度行ってみたいな、なんて思ったりしている。

 【2000年6月記】


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『M』はMotorの頭文字で電動車。
『T』はTrailerの頭文字で付随車。
数字はそれぞれの両数を示す。
朝顔カプラーは、連結に人手が必要であるが、自動連結器は付き合わせれば自動的に連結する。

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