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京阪電気鉄道


 1997年(平成9年)10月11日の土曜日、私は家族を連れて京都にいた。そのころ近代美術館で開催されていた展覧会(海外の有名な美術館の展示だったはずだが思い出せない)に出かけたのであった。途中、三条通で見かけた京津線は、丸っこいスタイルの80形がいつもどおり併用軌道を走っていて、やたら多い鉄ちゃんの姿に「さすが3連休だ」なんて脳天気なことを考えていた。
 そう、その日がまさに京津線三条〜御陵間の併用軌道最後の日であり、翌日には新規開業した京都市営地下鉄東西線に取って代わられたのであった。と同時に80形も廃車となり、新型の800系に置きかえられてしまった。言い訳がましいが、しばらく鉄ちゃんから離れていた私は、恥ずかしながらそのことを後日知った。
 恥ずかしついでに言えば、今回『がんばれ!路面電車』を書くまで、京津線を『けいしんせん』と読むとは知らず、『きょうつせん』なんて呼んでいたのである。
 そんな京津線であるが、神戸に住む私にとって、それほど縁遠い鉄道ではない。神戸(三ノ宮)から京都までJRの運賃が1050円、対する阪急が600円。必然的に京都へは阪急で向かい、終点の河原町から鴨川を渡れば京阪電車はすぐだ。そのまま琵琶湖まで足を延ばそうと思ったら、やはりJRでなく京津線で向かうことになる。途中、東山の急勾配を走る姿は印象的で、そのうちにちゃんと記録に残そうと思いながら、今や二度とその姿を見ることはできなくなってしまった。

上栄町にて800系
カーブでフランジの軋む音を防ぐため、
レール沿いのスプリンクラーから霧を
吹きかける。写真では少しわかりにくい
が、右下の線路から湯気のようなものが
上っている。上栄町にて。
 いやいや、この項は『思い出話』のコーナーではない。切替え後の現在の姿に話を戻そう。
 『けいしんせん』と正しく読めるようになって現地へ行ったのは、昨年(2000年)のゴールデンウィーク。このときばかりは運賃よりも時間を優先して、神戸から一気にJRの新快速で山科まで行き、京津線に乗り換えたのであった。
 初めて目にした800系は、これまで濃淡の緑色で塗り分けられていた京阪電車とは打って変わって、青と白を基調にした明るい色調で、いかにも新車らしくて好ましい。
 早速、京阪山科から浜大津行きに乗りこむ。車内は休日の早朝ということもあって、乗客はまばらであった。
 山科からは逢坂山を越える上り勾配が続く。廃止された三条〜御陵間の東山越えには及ばないにしても、なかなかの急勾配だ。800系はフランジを軋ませながらも、ぐいぐいと上っていく。

信号待ちする800系
自動車と並んで仲良く信号待ち。
こんな大きな電車に待たれたら、
歩行者のほうが渡りにくい?
 京津線は、上栄町〜浜大津間に併用軌道が600mほど残されている。これを見るため上栄町で下車し、浜大津まで歩いてみる。
 上栄町を発車した電車は、ぐいっとカーブを切って併用軌道に入る。それも大型の800系4連が身体をくねらせて道路に進入するのだから、鉄ちゃんの私が見ても軽いショックを覚える。ましてや素人?の人が初めて見たら、その驚きは想像にかたくない。

「あおいけいはんでんしゃは?」
 浜大津へ向かって歩いていると、父親に手を引かれた3〜4歳くらいの男の子の声が耳に入った。休みの父親にねだって電車を見にきたのだろうか、小さな子供の目にも『青い京阪電車』は新鮮に映るのだろう。
「青い電車はね、本数が少ないからね」と父親は答えている。
 休日は京津線の本数が少ないことは本にも書いたが、この会話で初めて気づいたのであった。
 そのときは意外に感じて、念のため浜大津駅の時刻表を見てみると、確かに休日は、15分ヘッドの石山坂本線に比べて、20分ヘッドと本数が少ない。

600形
浜大津駅に進入する石山坂本線の600形
 浜大津からは、石山坂本線の三井寺までの併用軌道を歩く。こちらは京津線に比べると道路の幅が狭い。うっかり路地から飛び出したら、車どころか電車にぶつかってしまいそうだ。併用軌道だから、そもそも踏切りはないのだが、電車が近づくと『電車がきます』と表示される電光掲示板が備えられる箇所もあった。
 三井寺から坂本へ行き、とんぼ返りで石山寺へ。正直言って、浜大津〜三井寺間の併用軌道を除けば、路面電車らしさはない。そもそも、併用軌道区間には、京津線も含めて電停はないので、他の路面電車の本では除外して紹介されていないケースも多い。
 ということで、石山坂本線は省略(^^;
 いやホント、また言い訳だが、駆け足でまわったせいで、本に書いたこと以上のことを思い出せなくて申し訳ない。
 でも、そんな私が言うのもおこがましいが、京津線の併用軌道のシーンは、なかなかいい刺激になった。もし、ご覧になっていなければ、一度、立ち寄ってみてはいかがだろうか。

【2000年5月現地、2001年2月記】




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