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島原鉄道2010
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 島原外港から再びフェリーで戻り、その日は大牟田泊。
 翌朝は、熊本へ向かう予定であったが、テレビの3時間ごとの天気予報で「晴れ」マークが並んでいるのを見て、気が変わった。前日の雨で思うように撮影のできなかった島原鉄道のリベンジを決意。再び長洲港から多比良港行きのフェリーに乗船したのであった。
 フェリーでは、韓国人の団体客と乗り合わせ、昨日とは違って、なんともにぎやか。その中でも、船尾にたむろした中年女性客数人が、気持ち良さそうに合唱しているのが印象的であった。
 一方で、天候は昨日と同じで、「晴れ」との予報に反して、どんより曇っている。なんとなく嫌な予感がする。

 多比良港で、荷物を預けたかったのだが、コインロッカーはないとのこと。しかたなくフェリーの乗船券発券所の方に頼んでみると、「どうぞどうぞ」と快諾してもらい、身軽になって多比良町駅へ。
 荷物を預けるとき、傘はいらないと一旦置きかけるが、やはり嫌な予感がよぎって、念のため持っていく。
 多比良町から普通列車に乗って大正駅で下車し、古部へ向けて歩く。途中海沿いに走るあたりで、まずは上り列を撮ることにする。
 列車を待っていると、乾いていた路面のアスファルトに黒い染みがぽつぽつとできたかと思ったら、一気に真っ黒に。そう、突然本降りの雨になってしまった。
 結果的に傘を持ってきて正解であったが、天気予報は何だったのか、「晴れマークを返してくれ!」と天に向かって叫びたい気分であった。

上り206列車


下り205列車
 先の上り列車は、古部の次の吾妻駅で下り列車と交換する。その下り列車を上の写真中央に見える踏切で撮る。あまり時間がないので小走りだ。

 雨の中、移動するのも億劫になり、次の上下列車もほぼ同じ場所で撮ることにして、しばし道路沿いの大きな木の下で雨宿り。
 すると、通りがかった軽トラックが目の前で停まって、いかにも人懐っこそうな老人が笑顔をのぞかせる。
「鉄道の撮影ですか?」
「そうなんですよ。ちょっと会社をさぼってね」
「そりゃよかとです」
 ほんの立ち話程度の会話であったが、ほのぼのとした気分になる。
 そしてやってきた上り列車は、海ではなく線路端の花を手前に置いたアングルで。

上り116列車


下り117列車
 その上り列車は、古部駅で下り列車と交換するので、いよいよ移動の余裕はなく、同じ花をアングルを変えて撮ってみた。

 引き上げる時間が迫ってきたので、ぼちぼち古部駅に向かい、多比良町駅に舞い戻る。
 多比良町着が13時59分で、フェリー出航が14時15分、ちょっとタイトだけど、なんとか間に合うなどと、高をくくっていた。
 時間もないのに、途中のコンビニで、缶コーヒーやジュースなどを数本買い込んで、ばたばたとフェリーの発券所へ走る。コンビニで買ったものは、ささやかながら荷物を預かってもらったお礼のつもりだったのだ。
「コインロッカー代がわりです」と発券所でコンビニの袋を置き、荷物を受け取る。
「そんなことをしてもらわなくても・・・」と発券所の係員が返そうとするが、急に気づいたように、
「えっ15分のフェリーにお乗りですか?」
「そうです」時計を見れば出航まで、3分を切っている。
 もう缶コーヒーを押し合いしている場合ではない、「では、ありがたくいただきますので、お急ぎください」と見送られて、乗り場にまた走る。
 自動販売機(発券所はあくまで車用で、一般乗船客用は別にあるのだ)でちょっと手間取り、出航時刻ちょうどにフェリーに飛び乗る。まさに駆け込み乗船であった。

 余談ながら、予定より大幅に遅れて熊本に着いたころには、強い日差しが照りつけてきた。街中では、女性が雨傘ではなく、日傘をさしている。そんな光景を、狐につままれたような気分で眺めるのであった。

【2010年5月現地、同年11月記】
2003〜2004年の訪問記は、こちらへ。

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