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岩手開発鉄道
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 翌月、再び岩手開発鉄道を訪ねた。釜石鉱山の軌道めぐりで、半ば強引に上有住へ向かったと書いたが、実は雨でろくに撮影できなかった岩手開発鉄道の再訪も兼ねていたのだ。
 その甲斐あって、気持ちよく晴れ渡った朝、前回、締めくくりの場所とした赤崎〜盛間の盛川べりからスタート。
 また鴨たちが飛び立つのを期待したのだが、みな岸辺の草の陰でお休み中。
遡上する鮭
遡上する鮭。長旅のせいか、尾ひれが痛んでいるようだ。
 盛川は、流れがそんなに速いわけでもないのに、あちこちで水しぶきがあがっていて、なんだろう石でも沈んでいるのかな、と目を凝らすと魚だ。よく見ると、あまたの大柄な魚が泳いでいるではないか。
 それでようやく気づく、鮭の遡上だ!!
 初めて見る鮭の遡上に、最初のうちこそ単純に興奮していたものの、長い旅の終わりが近づいた鮭たちが、体中傷つきながらも最後の力を振り絞って泳ぐ姿に、胸が熱くなるのであった。
 「鉄」としては、その鮭の姿と列車を絡ませたい、そう思うのは必然で、何本かトライしたうちの1枚が下の写真。水面下の黒っぽい鮭の姿を捉えるのは、なかなか難しい。

鉱石列車と遡上する鮭

 
 川では、鴨に代わって、ウミネコやユリカモメが羽を休めている。はるか上空に目をやれば、高圧線にシラサギの群れ。いずれも列車と絡めるのは難しそうなので、その姿だけカメラに収める。
 このところ野鳥づいていて、写真に撮る機会が多くなった。本格的にバードウォッチングを始めようかな。

ウミネコとユリカモメ シラサギの群れ

 盛川の岸辺や土手の上では、青いジャージを着た7〜8名の若人たちが鮭を観察している。おそらく水産関係の学生だろうと、ちょっと声をかけてみた。
 案の定、北里大学の学生だそうで、思わず「(相模原のキャンパスから)ずいぶん遠くから来たんだね」と言うと、それほどでも、という反応。後で調べてみたら、北里大学には三陸キャンパスもあるそうで、たぶんそちらの学生なのだろう。
「それで、やっぱり鮭の生態の研究なのかな?」
「実は、今日は、すぐそこの採卵場で実習なんです」
 と、土手のすぐ裏手の施設を指差す。その施設には気づいていて、その形から、なんでこんなところに廃水処理場があるんだ、と怪訝に思っていたもので、とんだ見当違いなのであった。
「ここで鮭を獲るの?」
「いえ、もう少し下流に網があって、そこで獲っているんです」
「でも、ずいぶんたくさん遡上してきているよね」
「どうしてもすり抜けてくる鮭がいるようですね」
「ということは、今年は鮭が多いんだね」
「そうかも知れません」
 彼が毎年観察しているわけではないのだから、断言できないのはもっともである。
 鮭たちが、どこまで遡上するのかも興味はあったが、その学生もわからないとのこと。

 学生たちと別れ、採卵場を横目に下流側へ歩く。ふと採卵場に石碑が建っていることに気づき、鮭を祭ってあるのかなと表に回ってみると、やはりそこには『鮭供養塔』と刻まれていた。
 そのまま歩いて線路の下流側へまわり、赤崎に向かう鉱石列車を定番のアングルで撮って、ここでの撮影を終える。

盛川を渡る鉱石列車


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