詰将棋おもちゃ箱記念作品再録・相馬慎一作品展

再録・相馬慎一作品展 作品4

記念作品
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相馬慎一個人作品展4 解答発表

大変お待たせしました。相馬慎一個人作品展4の解説を行います。

前回の解説させていただいた作品3、中々に反響があったようで何より。 この3を鑑賞して、中には「もしかしたら4は」と思われた方もおられたのではないか。 解答者にも、3を解いた時に予感めいたものを感じた方がおられた。
その通り。
この4は3の格上げ、グレードアップバージョンだ。 それも、手数を極端に増やさずに、密度だけを高めている。 なかなか、こうもうまくいくものではない。
さて、それでは解説していこうと思う。 幻想を、その眼で見るべし。

再録・相馬慎一作品展 作品4

  75飛、65銀合、同飛、同玉、66銀、54玉、
  63銀不成、同玉、96角、85香合、同角、54玉、
  55香、44玉、26角、35銀合、同角、同玉、
  36銀打、44玉、33銀不成、同金、45銀、同玉、
  63角成、44玉、54馬、35玉、37龍、同成桂、
  36歩、同成桂、同馬、44玉、54馬、35玉、
  47桂 迄37手詰

 35金合は同角、同玉、36銀、同玉、26金、45玉、63角成以下

初形、持駒、作者名、全てが「左から飛を打て」と物語っている。 最早ここまでくると「どうすれば合駒が出るか」と考えてしまうかもしれない。 54玉に63銀生〜45角を用意するために、75飛が限定打となる。 それではこの深い深い海に潜っていこう。
当然ながら、ここでの合駒は判断のしようがない。 「そんな訳がない」と、この記事の読者のほぼ全員が心の中で叫んでいても、それでもとりあえずはここの合駒を歩としよう。 うん、そんな訳がないのだが。

同飛、同玉、66歩で55玉には75龍、64玉は邪魔な桂が消えた効果で63銀成〜41角、54玉、74龍以下簡単。 54玉が正しい逃げ場だ。 63銀生、同玉で今度は41角も54玉と戻られどうしようもない。 左下にポツンと置かれた87金を狙い、96角と打てば54玉には87角がある。 さあ、次は86への合駒だ。あり得ない、あり得ないのだが、歩合で進めるしかない。

54玉、55歩で45玉は63角成以下、同玉も75龍以下なので44玉。 ここでいきなり33銀生と歩を取ってしまうと同玉、24銀、34玉、35歩、44玉で届かない。 恐る恐る、26角と上がる。 ついに、3度目の合駒だ。 もうヤケクソで歩合をするしかない。 ヤケクソで歩合、というのもおかしな話だが。

同角、同玉、36歩、44玉。これで33銀生に同玉は24銀、34玉、35歩以下詰みなので同金しかなく、漸く合駒に左右されない純粋な歩を取ることができる。 つまり、この33歩を取って打つ局面こそ、本作のキーポイントとなる。

33銀生、同金。 ここだ。

A図

45歩に対し、
1) 同玉は63角成以下
2) 53玉は73龍以下
3) 55玉は75龍以下
いずれも簡単な詰み。 つまり、この局面で歩が打てては詰んでしまう、ということだ。

もうここまできたら、3を鑑賞された方なら察しがついたはずである。
今まで出した合駒は全て歩だった。 その結果、45,53,そして55までもが、玉の逃げ場になってしまっている。
この合駒、今度は3枚で、楽しいマジックをお見せしようではないか。
少々くどいかもしれないが、以下の図、表をご覧頂きたい。
ダブルの次は、トリプルだ。

Z図


65の歩合は銀合へ、85の歩合は香合へ、35の歩合は銀合へ。
グループ不利合、今度は3種類での実現。 これはもうほとんど妄想のセカイだ。

以下、45銀と軽く捨てて63角成〜54馬、35玉に37龍、同成桂と龍まで捌ける。 後は36歩から桂を手に入れての収束だ。 まるで無理が感じられない。 スムーズにもほどがあるというもの。

銀先銀歩+香先香歩+銀先銀歩。
常人には仮に構想が浮かんだとしても、盤上で表現することは相当に困難なことだ。 それを作者は(実際はそうでないのだろうが、ついそう思ってしまうほど)あっさりと、わずか37手、わずか9×9の盤上に表現した。

作者「2つで出来ることは3つでも、というわけで試したのが本作です。 条件をこなすのが精一杯で、繋ぎの部分に駒取りが入ったりと満足の行く出来とはなりませんでした。」

その「条件」がどれだけ大変なことなのかは、詰将棋作家であれば誰でも想像がつくことと思う。
それをこなした上でこの手数、このまとめで仕上げた作者の腕には、ほとほと感服するしかないだろう。

3は2種類、4は3種類のグループ不利合という構想だった。 果たしてこの作者、次は何を魅せてくれるのか、今から楽しみでしょうがない。

EOG「こちらは三種ワンセット。ほとんど妄想の世界。」

その通り。

奥鳥羽生「多重連係不利合打歩詰誘致とでも呼ぼうか?さすがに三重は初?
まず歩合で詰上げるが作意でないことは明白、変化を含め打歩局面を色々探索。
解くというより作るという実感で、何とかたどりついた三駒連係打歩詰の構図。
相馬慎一の冠を配さず、ただ詰む将棋ですと見せられれば、仕掛けに気付くか?
現代では多産化?された不利合も、まだまだ面白いものができるという実証局。」

一体、この妄想の海はどこまで続くものなのだろうか。

冬眠蛙「ひとつの打歩詰形に誘導するために3回の不利合駒は初めてでしょう。 ここまで来ると、解けた自分もどこかオカシイのではないかと思えます(笑)。」

恐らく、2回でも3が一号局と思うが、3回では違う構図での後続局が出来るかどうかすらわからない。

ikz26「決定版と相馬氏が太鼓判を押すような作品が他に発表されれば別だが、 そうでない限り私は今期の看寿賞には4を推したいと思っている。」

異議なし。 ただ、3と4でどちらが上とするかは、人によりそうだ。

三輪勝昭「連作の流れから不利合駒の三重奏かなと思うのと、まさかと思うのと。
それが分かっていても難しい。 相馬さんなら普通か否、易しいのかも。」

谷口夏輝「2手目の銀合、10手目の香合、そして16手目の銀合、これで打歩詰誘導作戦は完了、さてと。
総ての変化を読み切るのは大変、ああ草臥れた。」

解くのも大変だが、創るのは恐らくその何十倍も難しい。

正解者(敬称略 順不同)

  ikz26、EOG、奥鳥羽生、冬眠蛙、三輪勝昭、谷口夏輝、國吉進

最後、5の解説は年内に行います。 お楽しみに。