詰将棋おもちゃ箱 − 記念作品 − 再録・相馬慎一作品展再録・相馬慎一作品展 作品3 |
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相馬慎一個人作品展3 解答発表 お待たせしました。 相馬慎一個人作品展3の解説をします。 いよいよ今回の作品展の佳境に入る。 ![]()
66金、54玉、65金、同玉、69飛、イ68金合、 イ 54玉は72馬、63桂合、64飛、同玉、66龍、65合、63馬、同玉、65龍、72玉、73桂成、81玉、85龍以下 広い初形だが、相馬慎一氏や若島正氏などごく一部の作者に限り、むしろ広くごちゃごちゃした方が、
どんな手順どんな構想が飛び出るのか心躍ってしまうのが私。
かなりおかしいのかも知れない。 同飛、55玉、65飛、同玉で先ほどの局面に1歩を手にした形。 ここで焦って66歩としてしまうと、54玉、72馬、63桂合とされ以下、同馬、同玉、73桂成、54玉、46桂、45玉と進んで打つ手無しだ。 桂合をさせないために一工夫が必要となる。 83馬で合駒請求をするのだ。 ここでも単純に74歩合などとしてしまうと、同馬、同玉、73桂成、65玉、66歩、54玉、55歩以下、少々長めの変化ではあるが詰む。 74の合は前に進む駒は打てないのだ。 即ち、74の合駒は桂と判明する。 この83馬、74桂合の2手。 一見すると桂を打たせただけの手順に見えるが、その効果は先に読んだ66歩、54玉、72馬の局面で明確に表れる。 そう、桂を1枚余計に打たせたことで、玉方の持駒の桂馬が品切れになっているのだ。 なるほど、と思わず感心してしまう。 どうやら筋に入れたようだ。 74桂合が出来ない以上、とりあえず歩合で進めるしかない。
同馬、同玉、73桂成、54玉、55歩以下、イの変化の通り詰む。 1図 さて、ここからが考えどころだ。 確かに駒は余らなかったが、これまでの作品を鑑賞された方ならお分かりのはずである。 こんな何の捻りもない手順が、作意手順の訳がないのだ。 まず確認すべきは72馬に対する63の合駒だ。 何も考えずに歩合としていたが、この作者、この形だ。 不利合駒を考えずに解けたなど、愚かしいにもほどがあるというもの。 とはいえ仮に63に何を合しようが、結局それを55に打って詰むのがすぐにわかる。 例えば63飛合としたと仮定して、1図で55歩が飛に変わったところ(2図)で45歩、55玉、75龍以下簡単。 2図 何も変わりはしない。 これはどうやら、69飛に対する68の合駒が影響してきそうだ。 ここで5手目の局面に戻る。 69飛に68歩合は作意ではなかった。
こちらで不利合駒を考えなければならないようだ。
香合は同飛以下歩合と差異がないので、68銀合を考えよう。 ここで5手目69飛に対する残る合は金のみである。
6手目68金合を読んでいこう。 74桂合以下、66金、72馬、63歩合、同馬、同玉、73桂成、54玉、55歩、44玉、35馬、33玉、24馬、44玉(3図)、45歩、同玉、35馬まで。 3図 これまた変わり映えしない、どころかむしろ早く詰んでしまった。 何かがおかしい。
68に不利合駒しても63に不利合駒しても、結局は同じように詰んでしまうようだ。 ここまでの解説で、私は1,2,3図の3つの図面を掲げた。 この図面、正直なぜわざわざ図面を載せるのかわからない、どう見ても読むまでもなく簡単に詰んでいる、そう思った読者も少なくはないだろう。 実際、その通りである。 しかし、ならば私が適当に図面を載せてきたのかというと、違う。 それではここで、この3つの図面を掲げた理由を明かそう。 まずは1図を見ていただきたい。 55、66の駒は共に歩である。 つまり、45にも55にも攻方の駒は利いていない。 45歩以下詰み。 次に2図。 1図と比べると、55の駒が歩から飛に変わっている。 63の合駒を歩→飛とした結果だ。 55飛の効果で45には攻方の利きが生まれたが、55は相変わらず利き無し。 45歩、55玉以下詰み。 最後に3図を見ていただこう。 1図と比べ、今度は66の駒が歩から金に変わった。 これは68の合駒を歩→金に変更した結果。 本図では66金の効果で55に攻方の利きが生まれた。 が、2図と違い55が歩のままであるため、45の攻方の利きは消えている。 45歩、同玉以下、詰みだ。 つまり、1,2,3図についてまとめると ![]() となる。 4図 これが、本作の構想だ。 6手目68金合、16手目63飛合とした結果、4図は詰まない。 65金、同玉、75飛、54玉、56龍、同桂、55歩、44玉、35馬、33玉、24馬、44玉、45歩、同玉、35馬まで35手詰 構想作や趣向作の収束は、予定調和的であるべきと私は思う。
収束を下手に長くしたり難しくしたりして、メインの構想を越えた後で解答者が苦労してしまっては、折角の構想も冴えなく見えてしまうだろう。 作者「玉の周りをn(2以上)個の不利合の効きで打歩詰に誘致する新構想。 この構想の発想元となったのは実は『無双11番』です。」
初手より83歩成、71玉、72銀、62玉と進んだ局面で、83とが72、72銀が63に利かして打歩詰の形となっている。 相馬氏はこの新構想をこう命名した。 不利合駒を2個以上組み合わせることによって打歩詰に誘致する。 言葉で表現するのは30字もいらぬのに、このご時世にこんなにも新鮮味があり奥が深く、そして面白い構想はそうはない。 ikz26「この構想は、個人的には平成を代表する新構想になると信じる。」 この言葉も強ち間違いとはいえなくなると思う。 それほど素晴らしく、また発展性のある構想だ。 EOG「二種ワンセットの不利合駒は新構想? 支えの駒を不利合駒でというのは見たことある気もするが。」 冬眠蛙「打歩誘致の筋は見えるのですが、桂を使わせるタイミングで悩みました。 65銀〜75飛で龍まで捌く収束はお見事。」 これは6手目68銀としてしまったかな。 変別ですがメインの構想は見抜いたようなので正解扱い。 奥鳥羽生「前半を過ぎて何か変なニオイが漂う?と思ったら、二の矢が継がれていたのだ。 72馬、44玉、35馬、33玉、24馬、44玉、45馬以下。 確かに作意に準ずる変化ですが、減価事項に足り得ないはず。 三輪勝昭「68金・63飛と不利合駒を重ねて66金・55飛・44玉の形で打歩に出来るのですね。
83馬と桂を売り切れにするのも芸が細かい。 そんなこと言わないで…(笑) 僕はこの作品を自分のブログで発表できて、自作でもないのに誇りに思います。 谷口夏輝「2度の打歩詰への誘導作戦が妙。87成桂の配置は16手目の桂合防止策かな? 正解者(敬称略 順不同) ikz26、EOG、奥鳥羽生、冬眠蛙、三輪勝昭、谷口夏輝、國吉進Next No.4… |