木目1

奥薗幸雄作品紹介  岡村孝雄
猪子智氏版「奥薗幸雄作品集」より
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奥薗幸雄氏の作品といえば、最長手数作品として君臨していた(873手)『新扇詰』や難解な裸玉(11玉・飛角角桂桂)を除けば、 一般の詰将棋ファンには「古今趣向詰将棋名作選」(詰将棋研究会)に掲載された数作が伝わっている程度かもしれません。 ということで、猪子智氏がまとめられ、コピーで配布された「奥薗幸雄作品集」(昭和55年完成とある)から、何作か紹介させていただきます。


第60番
  「詰将棋パラダイス」昭和31年9月、福田土野氏紹介
猪子智氏:紛れ多い。22飛打が個性。

短編作品の中から、最短手数にして代表作を一つ。 初手に繋ぎ桂を入れておくことにより、4手目の変化で馬が守備駒から質駒に変わります。 22にわざわざもう一枚利かせてからの焦点の飛車捨てや、33桂打と13桂生の対照性。 43にいた馬を翻弄する捨駒の組み合わせが味わい深く、現代でも十分に通用する7手詰でしょう。
第46番
  「風車」昭和29年7月
※猪子智氏のコメントは無し。

初形曲詰“王”(のちに余詰が発見された)は有名ですが、奥薗氏にはあぶり出し曲詰の作例もあります。 右側の駒は動きようがないものの、52龍から73馬の連続捨駒は豪快。 なお、手順前後すると73馬を同金と取られ、64に利いてくるために詰みません。 発表図は95馬配置で、今回調べたところ3手目77馬以下や64銀以下(こちらの筋でも、いずれ77馬と引く) の余詰がありましたが、“95角”で修正が可能です。
第27番
  「詰将棋パラダイス」昭和30年2月
猪子智氏:巧妙な反復趣向。

「風車」昭和29年2月号の修正図(第43番の玉方54銀→玉方41金)と思われます。 吊るし桂や桂香両王手の詰めを見せながら、23に打った駒を22や12に何度も捨てていきます。 手順趣向“の香りのする”作例としては、他にも第41番(「詰棋界」昭和27年2月、31銀〜22銀成のリフレイン) などがあり、ひょっとすると作者の好みの一つだったのかもしれません。
第51番
  「詰棋界」昭和27年9月
猪子智氏:飛角図式の名品、収束も気持ち良。

攻方は角二枚、玉方は飛車二枚、上下対称に配置されている美しい飛角図式。 守備の飛車に働きかけて一マスずつ動かしていく序盤から、62飛の以遠打から馬を捨てる収束まで、緩み無い手順。 (16手目の合駒非限定はともかく)6手目24銀合がおそらく同手数変化なのが惜しいですが、よくぞ成立したもの。 手順を並べてみると変化もかなり読まされ、作者の力の一端を見る思いがします。
第26番
  「詰将棋パラダイス」昭和26年11月
猪子智氏:主題は裸玉の研究より派生的に完成した氏独特の作品。 攻方55歩がなければ完全な中途無仕掛だが、13手目41角に対して42玉で不詰となる。 参考までに本手順41手目より有名な岡田秋葭の裸玉図と同一手順である。

「21玉・飛角金金」は裸玉だと不詰なので駒を置いて改作せざるを得ませんが、 岡田秋葭「21玉・飛飛金歩」の筋に繋げた辺り、奥薗氏らしいと言えるかもしれません。 猪子氏の解説のように、「奥薗幸雄作品集」には裸玉研究から生まれたと見られる作品がいくつかあり、その中から一作挙げてみました。
ところで、第22番((「詰将棋パラダイス」昭和28年5月))の無仕掛図式について
猪子智氏:旧パラ廃刊のため詰手順発表なし。 しかし作者より旧パラ28年6月号読者サロンに「本作は早詰です。修正図を示します。」として、第33番を掲げています。
“第33番”とは、氏の裸玉作品“11玉・飛角角桂桂”。 早詰順がどこなのか確認できないのですが、読みを煮詰めていった結果がこの難解な裸玉の発見につながったのでしょう。
第18番
  「詰将棋パラダイス」昭和26年9月
猪子智氏:重厚、第一回看寿賞短編佳作。

最後に、「おもちゃ箱」掲示板に風みどりさんが紹介してくださっていた作品を挙げておきます。 重厚というかちょっと大模様ですが、攻駒が自然に配された実戦型。 猪子氏の“重厚”は、2筋の合駒の変化の厚みでしょうか。 飛銀や入手した角桂香を繰って、最後まできれいに、心地よくさばけます。

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柿木義一さんの Kifu for Java を使わせていただいています
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