木目1

 

龍鋸趣向作品全集 木挽唄集
第五章 同一軌跡式龍ノコ

第4項 駒移動反復型
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本項では、質駒(角か銀)取り系統の龍ノコに対して、玉方は飛合で応じることで質駒取りを回避するため、 龍ノコ〜飛合という繰り返しが現れ、その結果玉方の駒が移動して行くという構造のタイプを集める。 言葉にすると難しそうだが、要するに「図巧1番」の構想を龍ノコで表現したものと言えば判りやすいかも知れない。

玉方の応手によって、龍ノコの目的が入れ替わってしまった、一風変わった作品群ではある。

メイン構造は、ほぼ一パターンに固定されているのだが、移動する駒を変えることで、いくつかの作品が生まれている。 それだけ魅力ある分野なのだろう。

・大塚 播州 「おとぎ詰」 (近将 昭52・2) 手順を並べる

94龍を質にした龍ノコに対し、玉方はその角の効きに飛合をすることで角を守る。その結果、質駒の角だけが移動したことになり、以下、同じ手順を繰り返すことで、角は45まで移動する。本タイプの基本構造はすべてここまでの手順に集約されていると言えよう。本作での移動の目的は、この角を別な手順で入手するというものになっている。

(キズ=最終手で、33竜で駒余り。最終手余詰というには大きいキズか)
・変幻 自斉 「幻想図式」 45番

大塚作とほぼ同じ構造で、特長は余り感じられない。龍ノコの軌跡が二〜三段目であり、龍が簡単に作れてしまうために龍ノコの軌跡が短いのだが、その分規則性は感じられる。龍ノコというより、普通の趣向作といった雰囲気だろうか。移動の目的は、大塚作と同じく、質駒として入手するためである。
 
・黒龍江 「カルマの法則」 (近将 昭54・6) 手順を並べる

龍ノコで取りに行く駒が角でなく馬であるのが最大の特長である。馬であるため龍を取る変化(玉を96へ呼び、41馬とする筋で詰む)が常にあり、作意を成立させるのにかなりの困難が伴っている。その分、龍ノコという雰囲気は薄く、冒頭の片道部分だけは龍ノコと呼べるが(最後の54への馬移動が遠打によっているように)それ以降は龍ノコには分類しにくい。馬を移動させる目的は54への退路封じ(41馬とした時の壁駒とする)である。
・坂東 仁市 「竜王渓」 (詰パラ 平6・9) 手順を並べる

龍ノコを縦にしたことと、質駒を銀にしたことに特長がある(縦龍ノコ故に成立しているとも言えるが・・・)。銀移動の目的は、収束(最終手)での壁駒にするというものである。

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